ティベルクの使者は末王子の技師と愛を紡ぐ

天霧 ロウ

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誘起2*

 引かれた天蓋から差し込むランプの灯りに思わず顔を上げれば、ヴィルスと目が合った。その瞬間、さっきまでまどろんでいた理性が一気に覚醒した。
 いくら欲求不満だったとは言え、はしたないことをしてしまったことに気づき、全身が羞恥でこれでもかと火照ってくる。

「ぁ、ちが。これは」

 言い逃れない出来ない状況にも関わらず、ケイブラムはそれらしい理由を茹だった頭で必死に探す。
 ヴィルスは手に持っていたランプをベッドサイドテーブルに置くと、靴を脱ぎ捨てて黙ってベッドに上がってくる。
 そして、必死に言い訳を考えているケイブラムの秘部からディルドを引き抜いた。

「~~~~ッ!」

 強烈な刺激にシーツを強く握りしめ、小麦色の喉をのけぞらしながら声にならない嬌声を上げてしまう。
 その間にヴィルスはすべて脱ぎ捨てて素肌になるなり、ケイブラムを押し倒した。汗ばんだ太腿を抱えると、すっかり猛った高ぶりを一気に沈めた。

「ァ、ああぁ――ッ! だめっ、そんな…、激しっ」

 きゅうっと足の指先を丸め、ディルドを味わっていた最奥はだらしなく開ききっていた。
 薄暗い中、とろけた瞳でヴィルスを見れば凛々しい眉をこれでもかと寄せ、口はきつく引き結ばれている。責め立てるような荒々しい腰使いはなによりも雄弁だ。
 ケイブラムはなにかあったのかと聞きたくても、久しぶりにヴィルスとセックスしている幸福感に思考がまとまらなかった。

「ヴィルス、キスっ、キスしたいっ」

 はふはふと荒い息遣いをしながら舌を出してキスをねだれば、熱を孕んだ厚い唇と重なる。
 べちゃべちゃと派手な水音が響き、その音がよりいっそうやらしいことをしているとケイブラムの脳に刻み込まれる。

「ん、んむ…、ぁ。はふ……」

 自然とシーツから手が離れ、ヴィルスの太い首に腕を回す。
 お互いの唾液が混じり合った唾液をこくこくと飲みながら、誘われるがままにヴィルスの舌に舌を絡める。そうすれば、荒々しい腰使いは少しずつ落ち着いていく。
 それどころか先ほどの行為を謝るかのようにリズミカルに優しく突いてくる。

「ぁ……、んぅっ、ふ…、ぅ」

 じゅっと強く舌を吸われて唇が離れると、ケイブラムの太腿から手を離し、代わりに力いっぱい抱きしめてくる。

「乱暴にして悪い。つらくなかったか」
「ン…、へいきだ……」

 心地よい重さと鼻孔に流れてくるヴィルスの匂いに、最奥がヴィルスの先端に吸い付いてしまう。ヴィルスはかすかに声を漏らすと、ケイブラムのしっとり汗ばんだ髪に鼻先をうずめてくる。

「すげー、いい匂い。そんなに俺とセックスしたかったのかよ」
「ぁ、それは……」

 今になって自分がやったことを自覚すれば、ケイブラムは顔がこれでもかと熱くなるのを感じた。
 じわりと涙が浮かび、ケイブラムはそっと目を伏せた。
 ヴィルスはケイブラムのまつげについている涙を器用に吸うと、目蓋に唇を押し当ててきた。

「別に責めてるんじゃない。つーか、セックスしたいならしたいって言えよ」
「しかし……」

 ヴィルスと両思いになってから、ますますセックスになれることがケイブラムは恐ろしくてしょうがなかった。
 黙り込んだケイブラムにヴィルスは優しい声で続けた。

「しかし、なに?」
「………怖いんだ」
「怖い? なにが?」

 ヴィルスの問いかけにケイブラムは視線をさまよわせた後、ずっと胸の底にこびりついた思いを吐き出した。

「この体は私が思っているよりもずっと快楽に貪欲で……。お前は前、言っていただろ? 私はほかのものと違う、と」
「ああ、言ったな」

 ヴィルスは優しくケイブラムの体を愛撫しながら、汗ばんでいる額に唇をあててくる。その温もりにケイブラムはとろりと顔がほころぶのを感じた。

「お前が好きだとわかってから私の心身は依存症と言ってもいいぐらいつねにお前を求めている」

 頼りないランプの灯りしかないベッドの上でも、ヴィルスの空色の瞳はまっすぐにケイブラムを見つめていた。ケイブラムもその瞳を見つめ返せば、ケイブラムが最も嫌いな弱い自分が映っていた。

「結局、私もほかのものと同じなのだ。快楽を知ったやらしいこの体はお前に依存している」

 ヴィルスが言っていたほかのものとなにも変わらない。その事実がケイブラムはどうしようもなく嫌でしょうがなかった。
 抑えていた弱音を吐き出した途端、ポロポロとまた涙が溢れ出て、耐えきれず嗚咽を漏らしてしまう。
 泣いている姿など見られたくないのに、涙は止まってくれない。
 せめてこれ以上泣き顔を見られないようにとヴィルスの胸に顔を押し当てれば、ヴィルスの無骨な手がぽんぽんとケイブラムの頭を優しく叩いた。

「ほら、俺の言ったとおりだ。やっぱりケイブラムはほかのやつと違う」

 返ってきたヴィルスの低い声は甘さと優しさに満ちていた。
 けれど、ケイブラムにはヴィルスの言っている意味が理解できなかった。

「どこがだ。私も結局お前から与えられる体液に抗えないただの淫乱だ」
「ま、エロいのは間違ってねえよ」

 真っ赤に腫らした目でヴィルスを見上げるケイブラムに、ヴィルスはくんと優しく腰を突き入れた。

「ぁ、ばかっ。人が真剣に話してるのに」
「だからだろ?」

 嬉しそうに言いながらヴィルスはぐりぐりと先端を最奥にこすりつけてくる。その度に最奥がしゃぶりつき、くっきりと筋が浮かぶ逞しい幹を柔肉がきゅうきゅうと締め付けてしまう。
 気分が沈んでいるにも関わらず、素直に反応してしまうはしたなさにケイブラムは顔が熱くてしょうがなかった。

「じゃあ、聞くけどさ。ケイブラムは俺以外とセックスできるか? こんな風に、なっ」

 一転して一気に引き抜かれると、じゅぷじゅぷと音を立てながらヴィルスが奥と最奥の間を何度も扱いてくる。

「ぅ、んぅっ! ぁ、ふ…ッ、くぅ!」

 不意に与えられた強烈な刺激にケイブラムはヴィルスの背中に思わず爪を立ててしまう。だが、ヴィルスはただただ嬉しそうに空色の瞳を細めるだけだ。

「ああっ……、まてっ、ァ、イくっ、ィくッ」

 甘い痺れが細胞の一つ一つまで染み込んでいき、頭が気持ちいいでいっぱいになる。だが、あと少しというところでヴィルスの動きが止まった。
 突然の途切れにケイブラムは眉を寄せ、目を瞬く。

「なん……、で?」
「まだケイブラムの答えを聞いてないからな。きちんと言えたら、イかせてやるよ」

 意地悪げにヴィルスが微笑むと、ケイブラムの唇についばむようなキスを落とす。
 答えなど考えることもないほど決まっている。
 ケイブラムは唇をわずかに噛み締めた後、ヴィルスをまっすぐに見つめて告げた。

「いやだ…、お前以外とっ。したくないッ」

 それは紛れもない本音だった。
 女のように抱かれるのも、男にも関わらず体が孕みたいと泣き叫ぶのもヴィルスだからだ。ヴィルスだからケイブラムも抱かれることに甘んじているのだ。
 ヴィルスはケイブラムの言葉に「ほら、やっぱり違う」とかすかに微笑む。

「でも、ほかの奴らは違うんだよ。俺以外とも率先してセックスがしたくなる。それこそ、発情した獣みたいにな」

 そう言い切ると、ご褒美と言わんばかりにヴィルスの先端が一気に最奥を押し上げてくる。

「ひっ! ぁ、ひぐっ、んんぅ――ッ」

 待っていた感覚にケイブラムはビクビクと体を大きく震わし、ヴィルスの熱を絞り出すようにぎゅうぎゅうと抱きしめる。
 ヴィルスは心地よさそうに息を漏らすと、ケイブラムの額に額をこすり合わせた。

「だから、言っただろ。あんたは……ケイブラムはほかと違うって。それに好きなやつとセックスしたいのは当たり前の感情だろ」
「……ッ」

 ヴィルスの言葉にケイブラムは目を見開くと、ヴィルスの首に回していた腕にいっそう力がこもり、逞しい腰に足を絡めた。そうすれば、より深くヴィルスと最奥でキスしていることを実感する。

「ヴィルスっ、好きだっ。好きっ。だから奥っ、キスして――っ」
「ああ、俺もケイブラムが好きだ。久しぶりにいっぱいキスしような?」

 ケイブラムのおねだりにヴィルスはこれでもかと顔をほころばせると、勢いよく腰を突き入れた。雫を滲ませている先端が押しつけられれば、途端に最奥がむしゃぶりつく。
 ほかのものとは違うのだと言うことにケイブラムの心は安堵で埋め尽くされていく。そのおかげもあってか、ヴィルスの腰使いに合わせてケイブラムもまた淫らに腰を揺らした。

「ヴィルス……ッ、すきっ。ァ、ん…、早くっ、奥……ッ。さびしいッ」

 中が激しく蠢きヴィルスの高ぶりに下品に絡みつく。その度にヴィルスの汗とケイブラムの汗が混じり合い、お互いの体を濡らした。
 尖りきっているケイブラムの乳首に気づいたヴィルスはひっそりと唇に笑みを浮かべた。

「ケイブラム、ちょっと腕。緩められるか?」
「ん…、わかった……」

 ぎこちなく腕から力を抜けば、すっかり芯を持っている乳首がヴィルスの眼下に広がる。
 ヴィルスは抱きしめていた腕を名残惜しく思いながら解くと、指先できゅうっとケイブラムの乳首を摘み上げた。その瞬間、ケイブラムは小麦色の喉を晒してのけぞった。

「~~~~っ、そんなっ、されたら――ッ」
「されたらどうなるんだ?」

 予想以上の反応にヴィルスは笑みを浮かべながら、硬い指の腹でクニクニと乳首を擦ってくる。
 その度にケイブラムは悲鳴のような嬌声をあげ、とろけきった中はすがるように限界まで高ぶったヴィルスの熱に絡みついた。

「頭っ、変になるっ! ぁ、ぃくッ、イくの、とまんなぃ――っ!」
「……ッ。すげー絡みついてるな。すっかり中はトロふわだし、連続でイくか?」

 興奮と喜悦が混じったヴィルスのかすれた声に、ケイブラムは朦朧とした意識の中、何度も頷いた。
 ケイブラムの素直な反応にヴィルスはふっと笑うと、乳首から指を離した。かわりに、雄の機能を放棄しているケイブラムの中心を優しく上下に扱いた。

「ヒッ、ぐぅっ! ァ、同時だめっ! こわれるっ、ほんとに壊れっ、~~~~ッ!!」

 自分で触ることもめったにないせいか、最奥と中心を同時に刺激される度に、ケイブラムの目の前は白く染まり続けた。
 助けを求めるようにケイブラムが片手を伸ばせば、ヴィルスがしっかりと握り返してくる。そんな些細な行為すら、ケイブラムの心は甘く痺れ、ふにゃりと口元がほころんだ。

「気持ちいィッ……! ヴィルスっ、気持ちいいっ!」

 ケイブラムの中心は潮を吹き出し、お互いの腹をぐっしょりと濡らした。それでもヴィルスは突き上げることも扱く手も止めなかった。
 ふだんは近づきがたさすら感じる怜悧な美貌は嘘のようにとろけきり、鍛え上げてもなお細い体はヴィルスの腕の中で些細な快楽さえ余さず受け止めていた。

「っく、そろそろ出すぞッ!」
「ァ、こい……ッ。全部、私に――っ」

 お互いの指を絡めている手に力がこもり、ヴィルスの手がケイブラムの中心から手を離れ、代わりに引き締まった腰を掴む。
 それを合図にヴィルスは耐えに耐えていた熱をとろけきった最奥に叩きつけた。勢いよく注がれる熱にケイブラムは目を見開き、短く喘ぎながらガクガクと体を震わす。
 ふーふーと荒れた息を吐きながらヴィルスは濃厚な熱をたっぷり注ぎ終えると、ケイブラムの汗ばんだ髪に顔をうずめた。

「久しぶりだしもう一回やっていいか?」
「受けてやる……、といいたいところだが。さすがに疲れたから無理だ」
「そういやあんたずっとイきっぱなしだったな」

 労るように熱を孕んだヴィルスの厚い唇が額、目蓋、唇、首、肩と押し当てられていく。
 その心地よさを返すようにケイブラムも目についた場所にぎこちなく唇を押し当てれば、ヴィルスの空色の瞳がゆるりと細められた。

「……じゃあさ、もう一回だしてもいいか?」
「出したばかりなのにか?」

 まだ出して数分しか経っていない。
 だが、中に入ってるヴィルスの高ぶりはくっきりと筋が浮かんでいるのがわかるほど柔肉を押し広げている。
 ヴィルスはかすかに腰を揺らすと、甘えるように最奥を押し上げてくる。

「ぁ、おい……」
「しょうがねえだろ。さっきのかなりキた」

 爛々と目を輝かせてなおもねだるヴィルスにケイブラムは形のいい眉を寄せて、深いため息をついた。

「……出すだけだからな」
「ん。さすが年上は貫禄が違うな」

 使い所が違うだろと怒鳴りたかったが、口を開いてできたのはとろけきった甘い嬌声だった。
 中に出されている感覚を実感しながら、ちらりとヴィルスを見ればぎゅうっと胸が甘く締め付けられた。
 ヴィルスに翻弄されているためヴィルスがケイブラムの中に出す顔を見ることはめったにない。
 けれど、今は違う。ヴィルスはきつく目を閉じ、歯を食いしめていた。まさにそれは番に種付けをしている雄の姿そのものだ。

「ぁ……」

 そのことを理解した途端、ケイブラムは胸の鼓動が激しくなり、最奥が下品に吸い付いてしまうのがわかった。だが、自分ではどうしようもできなかった。
 当然、ヴィルスも気づいたのだろう。ゆっくりと目を開くと、ふっと鼻で笑った。

「へえ、俺のイき顔で興奮したのか」
「ぅ、うるさいっ! お前だって、私のイき顔で興奮するくせにっ!!」

 きゅうっとヴィルスの熱を締め付ければ、ヴィルスはうめき声を漏らすと、にやりと笑って仕返しとばかりに突き上げてきた。

「ァっ、バカッ。出すだけって…、い…っ、ただろ」
「先に仕掛けてきたのはそっちだろ」

 ケイブラムが涙目になりながらも目を吊り上げて怒鳴るが、ヴィルスはただただ嬉しそうに微笑むばかりだ。リズミカルに腰を打ち付けるヴィルスにケイブラムも次第に気分が高揚してくる。
 それでも、必死に湧き上がる欲情を理性で抑えこみながら、喘ぎ混じりに言った。

「…っ、だめッ、だ。きょうは、もう、しない……ッ」
「でも、ケイブラムのここはまだしたいって言ってるぞ」

 ぐんっと最奥を突き上げられれば、ケイブラムは声にならない嬌声を上げながら体を大きくのけぞらした。

「~~~~ッ! ァ、ヴィルスッ、ヴィルスッ」

 しつこいヴィルスの刺激にケイブラムの顔はいっそうとろけていく。何度目かの熱を受け入れた頃には、ケイブラムもヴィルスの動きに合わせて自ら腰を揺らすようになっていた。
 その行為のもあってかヴィルスの暴走はいっそう拍車がかかりケイブラムが意識を失うまで止まらなかった。
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