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第7話 神月は輝き
誕生 ガルビースト
しおりを挟む第二研究所の入口にて各々の武器を構える四人。イルザはドアノブに手を掛けゆっくりと、扉を押す。
その中はエントランスホールとなっており、天窓などから光が差し込んでいる。
「静かだな・・・」
静まり返ったエントランスホールにグレンの声が小さく響いた。
「油断は禁物よ」
武器を構えたまま奥へと進み、正面奥に扉を見つけた。
「あの扉です。まずはあそこから・・・」
その瞬間、エントランスホールに咆哮が響いた。咆哮の主は二階へと続く階段の踊り場から飛び降りた。
「そう簡単には通してくれないわな」
「予想の範囲内よ、とっとと倒すわよ!」
青黒いオーラを纏わせた魔獣ガルム。しかし、様子が少しおかしかった。
「一旦下がれ! なんか様子が変だ」
ガルムの変化にいち早く気がついたグレンは三人に叫ぶ。
ガルムはその場で唸り声をあげ続け、青黒いオーラが周囲を螺旋状に渦巻いていく。やがてオーラは全身を包み、球体状になった。
「いったい何が起きてるの⁉」
予想外の展開に緊張が走る。
「悠長に待ってられねぇ、今のうちに倒すぞ!」
グレンは短剣型の“妖精の輝剣”を青黒い球体に向け、投擲した。
だが、虚しくも貫くことは無く、弾き返された。
「くっ・・!」
青黒い球体は徐々に硬質化していく。
「真空斬!」
イルザの“妖精の輝剣”に魔力を注ぎ込み大きく空を斬る。青白く輝く刃から繰り出される衝撃波は球体に直撃した。
衝撃によってほこりが舞い、球体が姿を隠す。
「・・・まだだ! 構えろ!」
姿を現した球体には全体にヒビが入っていた。そのヒビに青黒い光が奔り、ガラスが砕けるように飛び散った。
その中から現れたのは、体長が三メートル程に巨大化し、四足歩行だった骨格が二足歩行型へと変貌した、巨獣だった。
その巨獣は、正面に向かって大きくしゃくり上げるように咆哮を繰り出した。巨獣にとってはただの遠吠えだったが、その咆哮は空気を圧縮、振動させ衝撃波を生み出した。
その衝撃波は地面を抉り、壁や天井を容易く貫いた。
「ノーモーションで“音響咆哮”かよ!」
運よくイルザ達は攻撃に巻き込まれなかったが、抉られた地面を境目にイルザとスミレ、グレンとエルザに分断された。
「ガルビーストです! 弱点は心臓です!」
スミレは過去に一度、ガルビースト従えて任務を行ったことがある。力のない魔族なら一瞬で片付けてしまうほどの破壊力を持っている。
「それって、弱点っていうのかしらね」
引きつった笑みを見せるイルザ。
肝心の心臓部は簡単に届かない高さにある。そしてガルビーストには隙が無い、戦闘に特化した改造魔獣であった。
(本気・・・なのですね)
魔獣ガルビーストを放ったということは、ブランも本気で殺しにきている証だった。スミレは変わらぬ覚悟を胸に、誰よりも早く攻撃を仕掛けるべく“極光の月弓”の弦を引いた。
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