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ゆげのまほう。
しおりを挟む今日は、ゆみちゃんと喧嘩しちゃった。
まもるは幼稚園の帰り道ママと手を繋いでいたけれど、足取りは重かった。
ママに相談しようかな。ゆみちゃんの膝小僧いっぱい血が出てたな。
まだごめんって言えてない。
考えながら歩いていたら涙がこぼれ落ちた。
「まもる?どうしたの泣いてるじゃない。幼稚園でなにかあった?」
ママの問いにまもるは首を横に振った。言えない。どうしよう。
ゆみはママに
「この怪我どうしたの?誰とけんかした?先生に聞きに行こうか?」
と言われて、慌てて首を横に振ると
「違うのママ。自分で転んじゃったの。滑り台が速すぎてね、コロンって。ちょっと泣いたけど大丈夫。」
本当のことを言うと、まもるくんが遊んでいたお砂場に転んだのだ。まもるくんが作っていた大きなお山がぺしゃんこになっちゃった。それでまもるくんが怒って、立ち上がった自分を押したのだ。
転んで擦りむいちゃったのに、血が出てきてまもるくんもビックリして2人で泣いちゃって、先生にも説明できなくて消毒してもらう時、痛いよーって泣いたらまもるくんが手を繋いでくれたけど何も言えなかった。
ゆみはこれを全部ママに説明するのが難しくて何も言えなかった。
お家に帰っておやつに大好きなハートのクッキーとあったかいミルクを出してもらったのに一口齧るとまた涙が出た。
まもるもお家に帰って、ママの作ったホットケーキに蜂蜜をかけてもらっていた。
「ねえママ、きょうね、ゆみちゃんがお山にこけてきたの。僕すごくおっきなお山作ったのに。でもね、意地悪で壊したんじゃないの。砂場の固いとこで滑ったんだと思う。なのに僕、背中押しちゃって。ゆみちゃんお膝からいっぱい血が出たの。消毒すごく痛かったみたいでね、おてて繋いだけどいっぱいしみてね、僕も痛くなっちゃってね。でも、ゆみちゃんが一番痛かったの。明日ね、ごめんなさい言わなきゃね。僕~、ゆみちゃん~の~ことー泣かせちゃったの~。うわぁぁぁぁぁん。」
ほかほかのホットケーキと、ミルクの湯気の向こうでママがにっこり笑った。
「そうね。明日の朝ゆみちゃんに会ったらごめんなさい言おうね。先にお昼寝する?」
まもるはうんと頷くとミルクを飲んでベッドに転がってそのまま夢の中におちていった。
「ゆみちゃーん、お風呂沸いたよー。パパは今日は遅いからママと入ろうね。お膝の絆創膏はお水のしみないやつだから大丈夫よ。痛くないからね。こっちにおいでー。」
服を脱いでお風呂場に入るとほかほかの湯気で魔法の世界みたいだった。夕焼けの光が湯気を薔薇色に染めているみたいで、お母さんが入れてくれた入浴剤もバラの香りがしてまるでお花の妖精になったみたいだ。シャワーで髪を濡らしてシャンプーの泡泡でキューピーさんを作ってもらって、体も綺麗に洗ってもらったらなんだか心もあったかくなってきた。
「あのね、今日まもるくんがお砂場ですごく大きなお山を作ってたの。ものすごく大きくて、近くで見たいなって思ってちょっと走ったら足が引っかかっちゃって、お山の上に転んじゃったの。まもるくん悲しくなって私を押したんだけど、血が出てたから急いで先生呼んできてくれてね、それからずっとおてて繋いでくれてたんだよ。でも、消毒がとっても痛くて先生がごめんねーって言ったけど、まもるくんと2人で泣いちゃったの。でも、泣きすぎてごめんなさいできなかったの。明日の朝ごめんなさいしたら許してくれるかなぁ。」
そこまで言うとゆみはわぁぁぁぁ!っと泣き出してしまった。
晩ご飯はオムライスだった。ママがケチャップで「なかなおり」と書いてハートで囲ってくれた。
「このオムライスに魔法をかけたからね。ほら、なかなおりってかいたでしょ?これを食べたらきっと明日は2人ともまた仲良しよ。だから全部食べようね。」
ママはニコニコ笑顔で温かい麦茶をマグカップに注いでくれた。
魔法のオムライスは元気の味がした気がした。
次の朝、ゆみは待ち合わせの場所にママと一緒に手を繋いで現れた。まもるはゆみちゃんが怒ってないかママの後ろに隠れて覗いてみた。
笑ってる!
「ゆみちゃんおはよう!ゆみちゃんのママおはようございます!ゆみちゃん、昨日はお背中押してごめんね。怪我、まだ痛い?本当にごめんね。ひざっこぞうさんごめんね。」
まもるはゆみの頭と手の甲を何度も撫でて謝った。
ゆみも
「お山壊してごめんね。あのね、まもるくんのお山すごく大きくてかっこよかったから近くで見たかったの。走らなかったらよかった。ごめんね。」
2人はちゃんと謝ることができた後ふふふと笑って手を繋いだ。
「あら、ゆみ。まもるくんのお母さんにおはようのご挨拶は?」
ゆみちゃんのママは苦笑いをして2人を見つめた。
「あ!まもるくんママおはようございます!」
2人の背中を朝の柔らかな陽射しが照らしていた。ホットケーキとお風呂とオムライスの魔法をまぜあわせて。
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