龍神様のお食事処。 

月の涙白き花弁。

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十一 氷の涙に凍る街。

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氷の涙に凍る街。




これは、とある街にある小さな神社に祀られている龍神様とお友達のお話。ここには龍之介と太郎という神様が住んでいる。二人は仙人や精霊や動物、人間の子供、もちろん神様たちが気軽に遊びに来られるようにお食事処を始めてみた。そんな小さな神社のたくさんのお話。



今夜はまたよく冷え込むと思い入り口にタバコを吸いに出た龍之介は、冷えている原因を景色に見つけた。
あたり一面がふわりふわりと柔らかな真綿に包まれたような雪景色。
そして、その景色の真ん中に小さな男の子がちょこんと座っていた。
真っ白な顔にはつぶらな黒い瞳、黒い綿入れの着物の上にござ帽子をかぶり、ござぐつをぽんと投げ出して上を向いていた。
龍之介は咥えたタバコに火をつけるのも忘れて走り寄るとひょいと抱き上げ洞穴の中に連れていった。
「おやおや、お前さんどこから来たんじゃ?ここらじゃ見かけん顔じゃな。おっかちゃんはどこにおる?一人できたんじゃあるまいな?」
そう言うと、温かいお茶を出してやった。
ところが、その坊が湯呑みを持つとお茶はみるみる冷えていき氷になりかけている。
「おっかちゃんと二人できたの。お
っかちゃん、山神様に挨拶しにいくからここらで遊んでおいでって。でも帰ってこないの。おっかちゃん、どこぉ。」
そこまでいうと坊は氷の涙をころりころりと落としながらうわーんと泣き出した。
坊が泣き出すと洞穴の中は突然に冷え始めた。
「うーむ。これではいくらわしらでも凍えてしまうのぉ。奥に一部屋作ろうかの。」
太郎はそう言うと、八掛を取り出し奥に向かって気を放った。


さて、その頃。
雲の上では、一人の精霊が大慌てをしていた。雪の精霊である雪声(せつな)だ。今年生まれた薄雪(うすゆき)がどこかに行ってしまったのだ。あの子はよく泣くのに。泣いたら地上が凍りついてしまう。早く探さなくては。
雪声は空の上からでは埒があかないと思い、雲の上には毎年生まれる子供たちを置いて手分けして探してくれるように頼むと地上に降り立って探すことにした。
雪声が地上に降り、子供たちが雪雲の上を走り回っているとこの辺りは混乱したように雪が暴れて、吹雪くはずのない地域なのに前も後ろも分からないほどになってしまった。

学校では、たくみとこうきが窓の外を恐る恐る見ながら、
「今日は全校生徒が学校で泊まるんやって。家に帰るわけには行かへんって。外が雪の壁みたいやもんな。精霊さんが怒ってるんかな?こんな雪見たことないよなぁ。」
とヒソヒソ話し合っていた。
そこに陽菜(ひな)がやってきた。
「先生が窓の近くには言ったらあかんって。カーテン閉めんと寒さが部屋に入ってくるんやって。私らどうなるんやろう。ご飯もあんまりないんやって。怖いよぉ」
陽菜はそう言うと、たくみとこうきの手を握り、しくしく泣き出してしまった。
「どうもないって。きっと明日までには止むよ。もしかやまんかってもお父さんやお母さんが助けに来てくれるからな。ストーブのそばに行こうな。僕らもクラスのみんなもいるやんか。だから泣くのやめよう?な?」
そう言って背中をさすりながらストーブのそばに車座に座っているみんなの元に戻ると、たくみは自分が着てきた上着を、こうきはマフラーを陽菜に巻いてあげた。それを見て他の女子に上着をかけてあげる男子も現れ、また体の弱い子をストーブの近くにしたり、先生が図書館から持ってきてくれた本をみんなで朗読会のように読んだりして気を紛らわせることに集中することにした。

薄雪は奥の座敷に薄い布団を敷いてもらい、小さな灯りをつけてもらうとそこで眠りについた。龍之介が寝かしつけている間太郎は薄雪がころころとこぼした涙氷を外に掃き出していた。それはもうたくさんの氷が部屋中に転げ回り、キラキラと部屋の明かりを反射させている。
そして、掃き出して驚いたことには雪は、吹雪というよりももう、壁のように真っ白にあたり一面を染めてしまって音も視界も何もなくなってしまっていた。

「太郎さん、これはなかなか厄介なものを拾ってしもうた。申し訳ない。まずはこの子の母を探さねばなるまい。その上でこの大雪をなんとかせんとな。街が雪で埋もれてしまう。わしは一走り山神と天の神のところに行くゆえあの子を頼んでもよかろうか。一刻を争うゆえ。すまぬが頼んだぞ。」
龍之介は「ふん!」と力を入れると竜の姿になり、山神の元へと急いだ。

山神は、突然の大吹雪に山の動物たちの避難場所を作るのにおおわらわだった。温かな洞穴を開けたり、仙人たちに火を起こさせたり。
そこへ龍之介が小さな氷のような子供が迷子になっておるのじゃが母親と逸れたようなんじゃ、とやってきた。山神はそれどころではないと、動物たちを洞穴に連れてきては暖をとらせていた。
これは、今は聞いても仕方がないともう一度龍に戻り今度は天の神のところに行ってみた。
ここならばそんなに大事も起きてはいまい。そう思い門を潜ると、天の神の屋敷がいつになく騒がしいことに気がついた。
「あ、あのぉ。龍之介でございます。天の神はご在宅か?この上を下への大騒ぎ、一体どうなさったんじゃ?」
そう声をかけると、天の神のお使いの鳩妓が慌ててやってくると、
「龍之介様!大変なのでございます。雪の精霊の雪声のおとんぼの薄雪が一人で遊んでいたところ行方がわからなくなりましてね、雪の精霊は、毎年一人子供ができるのだそうで、雲の上ではその子供たちがまとまりもなく探し回り、雪声は雪声であちこちに飛んでは吹雪を巻き起こして、天の神様は今子供達をまずは集めて落ち着かせようとしておられるのですが、なんともわんぱくと申しますか、わがままと申しますか、とにかくこの御殿でもやりたい放題でして、身の回りをする女官や炊事のものまで皆総出で押さえつけておりますが子供とはなんともよく動き回ります。」
そう言うと天の神様を呼んで参りますと、奥へ走っていってしまった。さて、どうしたものかと思っているとたくみやこうきほどの精霊の子供が後ろを向きながら走り込んできて龍之介の腕の中にぽんとはまって驚いた顔をこちらに向けた。
「ありゃ!捕まった!おいらは牡丹雪。おじちゃんは龍神様?はじめまして!今ここの人たちと鬼ごっこしてるんだ。兄弟みんな集められちまってさ。大きい兄ちゃんや姉ちゃんはいろんなところで雪降らせてるけど、おいらたちはまだ母ちゃんのところで遊んでるんだよ。でも、おとんぼの薄雪がどっかいっちまったんだ。母ちゃん大慌てでさ。おいらたちが暴れたら大吹雪がもっとひどくなるからって、天の神様がおかんむりでさ。地上が雪で埋もれても困らないと思うのに。」
そこまで言うと、くるりと龍之介の腕から抜け出そうとした。牡丹雪はもう抜け出して走りはじめたつもりだったのだが、そこは龍之介の方が上手だ。
「こりゃこりゃ、これ以上暴れられては本当に街が一つ雪で埋もれてしまう。その街はわしの大切な人々が住んでおる。わしを信仰してくれる大切な人々がな。もちろん、この天の神のことも同じように信仰しておるのだよ。そうでなくともわしらは人々を守る責任がある。お前さんたちが、今まで母上に大切にされていたようにの。さて、お前たちの中で一番上の子はどこじゃな?」
牡丹雪は少し膨れっ面になりながらも、大きな声で
「おーい!細雪!龍神様が呼んでらっしゃる。こっちに来いよー。おいら捕まっちまったんだ。次はお前の番だってよー。」
そう言ってほっぺたをいっそう膨らませた。
細雪は色白で頬と唇だけが山茶花の花びらのような紅い色をした可愛らしい女の子で、白い着物に水色の稚児帯を結んでいた。
「こんにちは。龍神様、どうしたの?牡丹雪を放してあげてよ。私たち何にもしてないのにこんなところに閉じ込められてさ。おっかちゃんが帰ってこないってだけなのにさ。だいたいどっかに行っちまった薄雪が悪いんじゃん!おっかちゃんも慌てて探さなくったって街が凍りついたらすぐ分かるのに。」
そう言うとぷっくりと頬を膨らませグーの手で龍之介をトンと叩いた。
その手は、たよりなげで他の子達をまとめるのがやっとなのは見てとれた。
龍之介は細雪を抱き上げると
「わしはな、龍之介というのじゃよ。龍之介さんと呼んでくれればそれでいい。子供たちを集めようの。そのあと、おっかちゃんの話を聞かせてはくれぬかの?薄雪はわしのところにおるんじゃ。朝になったら連れてこようの。さてさて、子供たち!話があるんじゃが、聞いておくれ。集まるんじゃよー。」
龍之介が号令をかけると、今まで屋敷中を駆け回って悪さをしていた雪の精霊達が一斉に集まってきた。
ただ一人牡丹雪だけは面白くなさそうにポテポテと不貞腐れた歩き方で頬を膨らませて後ろの方で睨んできていた。龍之介は牡丹雪には構わず小さな雪の精霊たちに地上の惨状を伝えた。街の人々が大変なことになっていること、子供たちが小学校という、この御殿よりもずーっと寒くて居心地の悪い場所に両親とはぐれてみんなひと固まりになって寒くて心細い夜を過ごしていること。親たちも迎えにゆくことすらできない状態であることをわかりやすく言葉を噛み砕いて説明した。
細雪が
「それって、私たちがこの御殿で暴れ回ってるから地上の雪がすごいことになってるってことなの?龍之介さん、ごめんなさい。おっかちゃんが薄雪ばかり可愛がってて、みんなちょっと羨ましかったんだ。だから、あー、また薄雪だよーって思って。そしたら腹が立っちゃってみんな暴れ放題にしちゃったの。みんなももう暴れないようにしよう。ね?」
そう言って弟や妹たちを集めて一人一人の頭を撫でてやった。
すると、牡丹雪が、
「おいらが悪いんじゃないぞ!薄雪が、おっかちゃんに勝手について行ったんだ!そりゃ、止めなかったけど。。。」
としりすぼみに叫んでぺたんと座り込んでしまった。目には大きな涙の氷の粒がポロポロコロコロと溢れては転げ落ちている。
龍之介は何も言わずにただ牡丹雪の頭を優しく撫でてやり、
「では、薄雪はまずここに連れてこようの。そのあとおっかちゃんを探しに行ってくるからの。待っていておくれ。」
そう言うと、御殿の門を抜けると同時に龍に戻りまずは薄雪を天の神に預け、雪声を探しに雪のなかへとむかった。
雪は、子供達の大暴れが収まったことで小降りになり、雪の空を一飛びして街の中を探し回った。小やみになりかけていた雪が、学校あたりでまだ吹雪いているのを見つけると、そこには立ち尽くし泣いている雪声の姿があった。
「お前さんが雪声じゃな。薄雪や他の子供達が心配しとったぞ。天の神の所に帰ろうぞ。お前さんがそこにおると人の子たちが凍えてしまう。頼むからここから動いてくれまいか?」
龍之介はそう優しく声をかけた。こちらをチラリと見た雪声は、
「人の子達が凍えてもそんなに困ることがありましょうか?私の子供が迷子なのです。この中に紛れているやも知れませぬ。私がここに立っていれば出てきましょうに!」
龍之介はため息をつくと、腹に力を入れ、大きな声で
「落ち着かぬか、雪声!お前が我が子を思うのと同じように、ここにいる子供達の親もまた、自分が変わってやりたいと思うほどに心配しておるのだぞ!目を覚さぬか!精霊ともあろうものが!!」
と一喝した。
あたりに壁のように積もっていた雪が一瞬にして舞い上がり、粉雪となって風に吹かれてどこかに行ってしまった。
雪声は一瞬驚いた顔をしたが、龍之介の言葉にハッとしたのか雪を降らせることをやめて周りを見渡した。
学校も校庭も、街も森も山も、あたり一面が真っ白な銀世界に変わり、音も光も吸い込まれていた。
「雪声よ、薄雪はうちにおったんじゃ。すまなんだな。そんなにも探しておったことに気づいてやれなんだ。薄雪は、太郎さんが天の神のところに連れて行っておるじゃろう。子供達のが大暴れをして、街が大混乱になったのじゃ。お前の降らす雪だけでこんな猛吹雪にはならぬからの。よいか、子供達にも暴れぬように教えてやらねばならぬ。そうでなければまたいつこのような吹雪に見舞われるやも知れぬからの。」
「龍之介様。私、天の神にお願いをしに参りましたの。私は毎年一人子をなすのですが、そろそろ三年か五年に一度でも雪は足りると思うのです。私の子供たちはいろいろなところに旅立ち一人立ちをしております。これからは二回り目になることでしょう。私が疲れ果てれば、次にはまた子供たちの中から精霊となり雪を守るのでしょう。ですが、暴れ回る子供たちを見ながら、新しい子供を産み育てるのは少ししんどうございます。」
雪声は、氷の涙を撒き散らしながら空へと龍之介と共に登っていた。
「ふむ。わしも一緒に頼んでやろう。この街だけでなく、いい具合の雪を降らせるほどの人数の精霊でいいんだからの。」
二人はスルスルと天に登り、神の御殿にたどり着いた。
あちこちから
「おっかちゃん!」
と声が上がる。笑顔の子も泣きべその子もみんなが雪声の元に走ってきた。
天の神は、何も聞かずとも分かっていると笑い「三年」とだけいうと疲れた笑顔と共に奥へと引き上げて行った。子供たちが全員いることを確認すると雪声は何度も頭を下げ天の神の御殿の沢山の使いのものや家のものにお礼と挨拶を告げ、雲の彼方に消えて行った。

学校では、雪が止んだと報告が入り道の除雪が終わり次第順次子供たちを迎えに親がやってくると役場から連絡が入り、一安心と胸を撫で下ろした。
役場の除雪部隊は各学校に向かいまずは除雪で登下校路の確保を始めた。
「ねえ、さっきさ窓の外に龍之介さんと女の人がいいひんかった?あの窓がボン!ってなった時。雪も降ってたのより少ないし。」
あくびをしながらこうきがたくみに耳打ちをした。
「僕もそんな気がした。龍之介さんが雪どかしてくれはったんかな?それなら道も綺麗にしてくれたらいいのに。」
たくみがそういうと、こうきはくすりと笑い
「そんなことしたら、みんなあの雪どこ行ったって大慌てになるやん。これくらい雪残しはったのにはきっと意味があるんやで。」
そう言った。


龍之介はたくみとこうき、そして各学校の子供たちが皆親元に帰りついたことを確認すると、入り口に床几を二つだし、
「太郎さん、雪見酒でもどうじゃな?おでんを作ってみたんじゃ。」
と、いいながら、小さな火鉢におでんの鍋を置いて徳利の酒をぐい呑みに注いで、ちらりちらりと舞う雪を、ただ眺めて酒を一気に流し込んだ。
雪は、今夜の月を隠したけれど銀色の薄灯が当たりを照らしていた。

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