龍神様のお食事処。 

月の涙白き花弁。

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四十二 過去の記憶と刻の交差点。

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これは、とある街にある小さな神社に祀られている龍神様のお話。ここには龍之介と太郎という神様が住んでいる。二人は仙人や精霊や人間の子供、もちろん神様たちが気軽に遊びに来られるようにお食事処を始めてみた。そんな小さな神社のたくさんの、おはなし。



雲が、分厚く空を覆っている。秋雨は今夜にもこの辺りの木々を濡らして、また一色彩りを添えるのだろう。
龍之介は入り口に置いた床几の灰皿に灰を落とすとプカリと煙を浮かべた。
そろそろ夕刻だ。子供達も今日は来るまい。学校もなかなかに忙しくなっているようだ。だんだんに寂しくなるのぉ。
そう思っていると、石ころを蹴飛ばしながら坊が覗き込むような仕草で
「こんにちは。龍之介さんたくみとこうき、今日も来てない?」
と声をかけた。



こうきは、どんよりとした分厚い雲を睨むように眺めていた。
たくみの考えていることが、最近まるで分からない。
自分も塾のコマ数が増えてなかなか龍之介さんの所に行けないのは悪いのだけれど、一人で行けばいいじゃないか。僕は龍之介さんの話が聞きたい時には一人でも行ってるのに。
なんであんなに怒るんだろう。
塾に遅刻してしまう、そう思い歩き始めたが歩みはいつもよりもずっと重く遅かった。


たくみは、こうきに声を荒げたことを後悔していた。こうきは学者さんになりたいと言っていた。植物や山やこの星のことを総合的に考えられる人になりたいと。
なのに、自分はまだ未来のことなんて考えられない。お父さんの大工の仕事をつぐんだと思っていたし、それは悪いことじゃないはずなのになんでこんなにも罪悪感に苛まれるのかどうしても解らなかった。
明日、謝らなくちゃな。そして龍之介さんと太郎さんの声を聞きに行かなきゃ。



坊は龍之介の隣で床几に腰掛け足をブラブラさせていた。さっき出してもらったみたらし団子と麦茶は坊の口に入るのを今か今かと待っている。
けれど坊はたくみとこうきの姿を探して、境内の向こう側の景色にばかり目を凝らしていた。
「坊よ、今日は二人は来んと思うぞ。団子をお食べ。焼きたてが冷めてしもうたよ。」


そろそろ暗くなりはじめた松の木陰から、不意に小太りの男が出てきた。片手に一升の酒徳利、もう片手には秋刀魚のひと夜干しとみりん干しを包んだ蓮の葉の包みを持っている。
「おお!冬の神よ、どうしたんじゃ?旨そうな物を持っとるの。」
「いやな、雪の季節になる前に龍之介さんと太郎さんと三人で呑もう思たんや。坊もおるやないか。みりん干し食べるか?旨いんやぞぉ。龍之介さん、みりん干しこのまま蓮の葉ぁに乗っけて炙ってんか。香りがな、また堪らんのやわ。」
龍之介は冬の神と坊を奥の座敷に座らせると酒盛りの準備を始めた。
焼きなすと生麩の味噌田楽、イワナの卵の醤油漬けはおろし和えにした。
そして小松菜と油揚げの煮びたしとむかごご飯。
秋刀魚のひと夜干しとみりん干しも炙って皿に盛った。

「どないしたんや、坊。えらい沈んどるやないか?たくみとこうきと喧嘩でもしたんかいな。旨いもん食べたら元気も出るよってたんとお食べ。おっちゃんが話聞いたるで。」
冬の神は坊の頭を撫でながら優しくそう言ってくれた。
坊は、大きな目に涙をいっぱいにためると、
「冬の神様、たくみとこうきはいつも優しくしてくれるよ。だけど、だんだん大きくなっていってるんだ。もうじき会えなくなっちゃうのに、最近なかなか来てくれないんだ。おいら、独りぼっちになっちゃうのかな。おいら、また森で一人で滝だけ見て暮らすのかな。」
瞬きと一緒に大きな涙が坊の頬を流れ落ちた。
たくみとこうきはもう五年生だ。坊は生まれ落ちた時から人で言うところの「五歳児」程度の体格でたくみやこうきが三年生の時に出会ってからまるで成長していないように見える。自分一人置いて行かれたようで淋しさと怖さで心がきゅっと縮こまるようだ。
「何いうてんねや。龍之介さんや太郎さんがおるやないか。わしもおるで。杉の爺さんもまだいてくれるやろ?椒太郎さんかてまだまだ老いぼれとは言われへん。確かに大人ばっかりやけどな。坊はなかなか大きならへんからいつかはたくみとこうきも坊を抜かしてしまう。でも、たくみもこうきも坊のことちゃんと友達と思てるんちゃうか?あの子らが忘れるわけやないやんか。龍之介さんに記憶を預けるだけやろ?心配せんかてちゃんと戻ってきてくれるからな。さぁ、みりん干しでも食べて元気だし。」
冬の神はもらい泣きに鼻を啜ると細い目をもっと細くして、坊の頭をわしゃわしゃと撫でた。
龍之介が坊のために小さな碗に温かな蕎麦を盛り、
「汁物の代わりにお食べ。泣いていては喉がつまるじゃろ?わしらも木々や草花の精霊たちも動物たちも、みなお前の友達じゃ。それともわしらでは物たらぬか?」
と笑顔で渡してくれた。
坊も、頭の端っこでは独りぼっちではないと解っている。でも今まで毎日のように、山で川で転がるように遊んでいたあの二人は誰にも代え難いもので、それは言葉では言い表せないものなのだという思いがどうしても溢れて出てしまう。
「おいら、ちゃんと解ってるんだ。だけどさ、だけどおいらはいつまでこのチビのままなんだろうって思ったら、怖くてさ。あの二人がいてくれたら無敵だって思うのに、一人になったらいつもすごく心細くて。そんなこと仕方ないのに。」
坊は鼻を啜ってため息をつくとそばを啜り始めた。いつもよりも勢いがなくて、二、三本ずつしか口に入らない。
坊は蕎麦をなんとか食べ終えると、冬の神様の膝を枕にうつらうつらと眠りに落ちた。


キラキラと青い光が差し込む、そこはあの青い防水シートを張って作った秘密基地の中だった。
たくみとこうきと坊の三人はケロケロとカエル隊員ごっこをしていた。
降り注ぐ陽射しがまるで水玉のようだね、なんて話していると、にわかに空が暗くなりポツリポツリと雨音がして、それは急激に轟音に変わった。
この杜は龍之介さんの力で護られている。
だけど、街はどうなんだろう。
たくみの家はたくさんの付喪神と龍之介さんや精霊たちに護られている。こうきの家ももちろん龍之介さんや精霊たちに護られているし、何より「マンション」という高い建物の上の方の階だから水が来ても大丈夫。
そう思っていてもとても怖くて三人は抱き合って、何もないことを祈るしかなかった。
一時間ほどで雨は上がり、さっきまでの真っ黒な雲が嘘のように空が明るくなり始めた。
たくみとこうきは「家に帰る!」と一言残して自転車で帰ってしまった。
後には坊が一人きりで、青い光の中傾き始めた陽射しが照らす街を眺めるばかりだ。
また、独りぼっちになっちゃった。そう思うと涙が止まらなくて二人の名前を声に出して呼んでしまった。

「どないしたんや!」
冬の神様の隣に布団を敷いてもらって眠っていたのだ。
さっきのは夢だった。
それでも、坊の涙は止まらなくて冬の神様にかきついて声をあげて泣いてしまった。
あの情景が、あの去ってゆく二人の後ろ姿が、まるで本物みたいで胸の奥が痛い。一年と半年後もっと痛い気持ちで二人の背中を、振り向いてくれなくなったたくみとこうきを送り出す事が怖くて怖くて涙が止まらなかった。
「怖い夢でもみたんか?わしの布団にお入り。わしらがそばにおるよってたくさん泣いたらええねんで。心配せんでも、そばにおるからな。」
冬の神様はぎゅっと抱きしめて頭を撫でてくれた。少し冷たい、でも温かな体温と、大きな手のひらの優しい感触で坊はまた眠りに落ちた。


さて、朝餉を食べ冬の神様とお茶を飲んでいると二人の精霊が連れ立ってやってきた。一人は黒緑の地にくすんだ赤紫の果実を三つ描いた着流しに深緑の帯を締め煙草入れを脇に刺していて長い髪は纏めもせずにいる。
もう一人は濃き紅色の着物の裾に長細い枝とかんざしの飾り細工のように垂れ下がる細かな花房と葉が裾模様になっていて、左袖に五つ六つの赤い実が深い緑の葉についた柄が描かれている。象牙色と銀の市松模様の帯に深緑色の帯締め、そして山桃の実を模った柘榴石と翡翠の帯留が設えてあった。
「奏吾(そうご)紅(べに)お揃いでどうしたんじゃ?」
龍之介が声をかけると奏吾が大きな甕を見せて
「紅の実の砂糖漬けと砂糖煮をお持ちしました。わしの実ももう時期甘くなるのでそれはその時にお持ちします。」
「山桃と郁子(むべ)の精霊さんだよね?仲良しなんだね。」
坊がそういうと
「私たちはね、鳥居の外に生えていてね。なんというかお隣同士みたいなものなのよ。奏吾さんは神社の垣根に巻きついて居られて、私は鳥居から少し離れたところでもう長年居るのよ。あの鳥居の向こう側のちょっと離れたところには昔から茶店があってね、お参りに来る人たちの休憩所みたいなところなの。今は私が知っているだけで三代目なんだけど、おばあちゃまが少し元気がなくて心配で相談に来たのよ。この砂糖漬けなんかを教えてくれたのがそのおばあちゃまなの。これはお水や炭酸水で薄めて飲むととても美味しいのよ。龍之介さん坊に少し飲ませてさしあげてもよろしいですか?もちろんお供えの後で。」
太郎が白い皿に砂糖煮を少し盛り、砂糖漬けのシロップを白い盃に垂らすと神社の方に持って行った。
「あれはの、お供えじゃよ。自分らに供えるというのも変な話じゃがな、この山々や地の神天の神にも味わってもらわねばの。ま、そのうちにお届けするんじゃかな。ほんの一口舐めるだけでは我慢ならんといつも怒られるでの。はっはっは。」
龍之介はそういい笑いながら小麦粉を水で溶いてほんの少しの塩で味つけたものを米油を敷いたフライパンに薄く伸ばして焼き始めた。
人数分焼くと、皿に乗せて砂糖煮を乗せて四つ折りにして出してくれた。
山桃のジュースはとても甘くて優しい味がした。
皆で話していると遠くからよく聞き慣れた足音が二つ走り込んでくるのが聞こえた。
坊は少し顔を輝かせて入口を食い入るように見つめていた。
「こんにちはー!たくみとこうきです。坊はここにいますか?お母さんのクッキー持って来たねんけど基地にいいひんくて。」
たくみが一息でいい終わるか終わらないかの間に二人にドン!と抱きついて来たのは言わずも知れた、乾いた藁のような森林のような香りの坊であった。
「ごめんな、僕らなかなか来れへんくって。坊に会いたくて今日は自転車ぶっ飛ばして来たねんで。」
たくみが笑顔でいうと、こうきが
「もうほんま、危ないからやめてほしいわ。事故になるからちゃんとしようってば!」
と少し怒っていた。
でも、坊はすごく嬉しくて、嬉しくて嬉しくて涙が溢れた。
三人はぎゅーっと抱きしめあってから「泣かんといてよ」と坊の頭をわしゃわしゃ撫でて、足水をさせてもらってふと二人の精霊に気がついた。
「うわ!ごめんなさい。ご挨拶もせんと。僕はこうき、こっちはたくみくんです。人の子供です。んーと、女の精霊さんは山桃さんやんね、男の精霊さんは木通(あけび)?ちがうな。木通は真ん中から開くし。見たことない実やな。ごめんなさい教えてください。」
こうきは植物学者になりたくてたくさんの本を読んではいるけれどまだまだ知らないものばかりだ。もっとたくさんのことを知りたいし、もっともっと多くの植物について学びたい。
「私は郁子(むべ)の精霊て奏吾という。この子は山桃で正解、紅というんだ。どちらも実が美味しいんだよ。大昔とても偉い人に村人が献上したら美味しいって褒めていただいたんだ。不老長寿の薬になるってもてはやされたのさ。あの頃『甘み』は貴重だったのだろうね。木通は美味いし、食べやすいからみなよく知っているんだろうね。私は見ただけでは食べられるかどうかもわからんから、今はあまり採りに来るものもいなくなってしまったよ。」
「あれ?そのお話なんか聞いたことある。有名な天皇様が『むべなるかな』って言うたから郁子って名前になったんやったっけ?こんなに赤い色やねんね。着物の柄やけど。どんな味なんかな?」
こうきがそう言うと
「え?そんな美味しいの?食べてみたい!」
とたくみと坊が声を揃えてそう言った。
「まだ少し早いから十月まで待ってくれるかな?美味しい実を持ってくるからね。今日は紅の持って来た砂糖漬けと砂糖煮を味わっておくれ。」

三人がいつもの席につき隣に奏吾と紅も座りさっきの小麦粉の薄焼きに砂糖煮を挟んだものと山桃水を出してもらった。
たくみのクッキーも半分お皿に出してもらった。

「それで、さっきのお話なんですけれどおばあちゃまがもう少し元気でいてくださらないかと思ったんです。
もう時期初めてのひ孫さんが産まれますの。十一月の初旬なんです。お孫さんがどうしてもひいおばあちゃまに会わせたくていらして。今では古民家カフェなどと言われたオシャレなお店ですが、戦前から変わらぬ佇まいで。」



それは、戦争がまだ遠い海の向こう側の話だと思っていた頃、松一は代々受け継いだ茶店を細々続けていた。
食料が配給になるかもしれないと言う噂が真実味を帯び始め、茶店といえど出せるものが薄いお茶と粟餅だけになってきた。粟餅も薄く塩味をつけただけでそれを小さな一口にして三つ皿に乗せて出すのがやっとだ。
茶店の何軒が向こうにこれまた小さな雑貨屋があり、そこにはよく働く娘がいた。名をとらゑといいクルクルとよく動き笑顔がひとしおに愛おしい。松一は密やかな恋心を抱いていた。しかしこの時代恋心で結婚ができるわけではない。百年以上続く茶店とはいえど嫁を迎えるほどの大金持ちというわけでもない。松一は、時々粟餅を買いに来て少しおしゃべりをして帰るとらゑをただ眺めるしかなかった。
そんなある日、またとらゑが粟餅を買いに来た。安田神社にお参りをした帰り道ここでお餅を買って弟と二人で食べるのが楽しみなのだ。
「粟餅おくれやす。ここの粟餅美味しいから弟も喜んでて。いつも楽しみにしてるんです。」
とらゑは松一の「へーい」というちょっとまのぬけた返事と優しい笑顔がとても好きだった。
父さんが戦争に行ってしまって、母さんと二人で雑貨屋をしているけれど近頃はあまり物資も入ってこない。
早く勝って父さんが帰ってくるように毎日お参りを欠かさずにいるが、口に出してはいけないと思い誰にも言ってはいない。松一さんや弟が戦争に行ってしまわないように祈ることしかできない自分が、なんだか哀しく歯痒かった。
「はい、おまち。一個おまけしといたよって。仲ようたべてや。」
松一はニコリと笑い包みを渡しお金を受け取る。
触れるようで触れない指先と心、二人はいつものように手を振って、松一はとらゑの背中を見送った。

そんな日々を送っていたが、戦況は芳しくないのか若者たちが健康診断の義務化を受け、健康優良であるとわかると戦地への招集が始まった。
戦況は国内ではすこぶる良いように放送されていて、それでも怪我をして復員してきた人々は、痩せ細り病院も薬などが不足し始め、食べる物が配給制になり松一は店を当分水を無料で出すことしかできなくなると壁に貼った。
お参りに来る人たちがせめて一休みできるようにと表に床几を出し、「水あります」ののぼりを小さく軒に下げた。
その頃松一に縁談話が舞い込んだ。町のまとめ役の人が「雑貨屋のとらゑを」と話を持ち込んできたのだ。松一はこれは神の采配かと心が舞い踊るのを顔に出さぬように必死で堪え「お受けいたします。」と頭を下げた。
まとめ役の人はニヤリと笑うと、
「他の人に取られたら困るやろ、早いことまとめんとと思てとらゑちゃんのお母ちゃん口説いたんやで。お前んとこは由緒もあるよってな。ここがあれば戦争が終わったらまた商売もできるやろいうてな。」
と肩を叩いてくれた。
桜の咲く頃、華やかな事は御法度とされてしまっていたので家族と町のまとめ役夫婦だけの小さな祝言をあげ、二人は夫婦となった。
そして、梅雨がそろそろ終わりを告げる頃松一の所に赤紙が送られてきた。とらゑは千人針をご近所にお願いして歩き腹巻きに仕立てて送り出した。
空に、たくさんの爆撃機が飛び交い街の西側や南側に焼夷弾が落ち、山の向こうが夜の闇を赤々と照らし、街がいくつも焼失し、暑い暑い夏の日戦は終わりを告げた。
復員兵が大勢帰ってくる中、なかなか松一の噂も影も聞こえも見えもせず一年が過ぎた。
とらゑは茶店を開けると「冷たい水あります」とのぼりをあげた。
神社にお参りするような酔狂な人はまだまばらで、水でお金をいただくわけにも行かないと思案していた時に山桃の実が目についた。
皆が積んだり拾ったりして少しでも腹を満たそうとしている中、とらゑはたくさん摘んだ実を水煮にして日持ちがするようにするのはどうかと考えた。夜の間になるべくたくさんの実を摘むと少しの水で焦げ付かぬようにゆっくりと煮詰めてゆく。ほんの少しとろみが出たものを湯煎した瓶に詰めると、それを母や弟に食べてもらった。そして、秋になり今度は郁子の実をたくさん摘むとこれも中を掻き出し水で煮詰めた。その後丁寧に種を漉し取るとなんともいえない甘味が広がる物ができた。これも湯煎した瓶に入れると丁寧に日付を書いてしまった。
配給で手に入る少しの小麦粉を水でゆるめて塩で味を整えて薄く伸ばして焼くと、それに山桃の水煮を添えて、それと水で少しお金を取る事ができる。
ほんの少しのお参りの人の足を止める事ができるようになった頃、少し足を引きずった松一が還ってきた。
痩せ細り、幾度も夢にうなされ、それでも生きて戻ってきてくれた。
とらゑは隠しておいた郁子の水煮を少しずつ食べさせ、松一のためにと着物や山桃の水煮を持って山奥の村々に米を分けてもらいに走った。
一年もすると松一は元気を取り戻しまた店に立ち始めた。
その頃には小麦粉の薄焼きと山桃の水煮がこの辺りで噂になっていた。
とらゑは山桃の種をたくさん蒔くと庭やご近所にも種を分けて歩いては「植えて欲しい」と頭を下げた。
とらゑは三人の子供をもうけた。敗戦を忘れるほどに大人たちは働き、国は少しずつ豊かさを取り戻した。
最初に植えた山桃が実をつける頃、あたりに明るさが戻り人々は山桃を忘れ、もっと美味しい果物を求めるようになった。
それでもとらゑは山桃の砂糖漬けと砂糖煮を作り続け、茶店で振る舞った。シロップを水や炭酸で割って出したり夏はかき氷にしたりして店の名物となった。
松一ととらゑは懸命に働き子供を育て年月は過ぎていった。

娘が高校に通い始めた頃友達を誘ってとらゑに料理を習いたいと言い、小さな料理教室が始まった。
最初は高校生が作れるような簡単で可愛らしい料理を教えていたが、山桃の実がなる頃砂糖煮を教えて欲しいと言われ、それ以来季節になるとまずはお参りをしてから鳥居の横の山桃の実を摘ませてもらい砂糖煮を教えるようになった。
そんなある時、濃き紅色の着物のご婦人がやってきて
「私にもその山桃の煮たのを教えてくださいな。私は紅と申します。」
と声をかけてきた。
女子高生たちは色めき立ち華やかなその人とおしゃべりをしながら楽しそうに砂糖煮作りに勤しんだ。
それ以来山桃の実る時期になると紅はやって来て砂糖煮を使ったお菓子作りや砂糖漬けのシロップの使い方なんかを習っては帰っていくのだった。
長女のゆい子が結婚し、店を手伝っていた次女の菜々子もそろそろ結婚するという話が持ち上がっていた。
長男の清一はまだ大学生で、姉たちの事を祝う気持ちはあったが照れ臭くて言葉で伝えられずに鳥居の横の石に腰をかけて姉たちの幸せそうな姿を思い浮かべてなんと言おうか考えていた。
「あら、松一さんのところの坊やじゃありませんか。もう坊やなんて言ってはいけませんね。清一さんどうなさったの?悩み事かしら。」
いつの間に現れたのか、自分の後ろに紅が立っていた。
「こんにちは。上の姉さんは去年結婚したんです。そうしたら次の姉さんも結婚するって言い出して。上の姉さんにもまだおめでとうをちゃんと言えてないのに二人ともお嫁に行くんやなって思ったらなんか変に寂しくて。ちゃんとお祝いせんとあかんのですけどね。照れくさい言うかなんていうんか、恥ずかしゅうて。」
清一はそういうと少しはにかんで笑った。
「お姉様方に何かお菓子を作って差し上げたらいかがかしら。とらゑさんの作るお菓子を習ってみたら?きっと喜ばれるはずよ?」
紅がそういうと
「僕は男ですよ?それに大学にも行ってる。そんな、料理なんて。ましてや菓子作りなんて女子供のする事できるわけないやないですか。」
清一は少し怒ったようにそういうと走っていってしまった。
人と関わり合いになるというのは難しいものだと紅は思い知った。
人の世界ではお料理は女のする事なのか。でも松一さんはお店で餅を作っていた。今はとらゑがしているが松一の餅も評判だった。どういう事なのか、紅には解らなかった。

菜々子が結婚し、清一は大学を卒業して遠くに行ってしまった。
茶店は菜々子が手伝いに来ていた。
ゆい子に子供ができ、菜々子もお腹が大きくなり、気がつくと子供達も大きくなっていった。
紅は相変わらず料理教室にやって来ては料理を習っていた。
ある日とらゑがなんの気なしに
「紅さんて全然かわらはらへんね。いつ見ても綺麗で若々しくて。お着物もいつもその色の物やん?山桃の花と実の染め抜きなんて珍しい柄やし。まるで山桃の木の精霊みたいやね。」
と笑って言った。
紅は困ってしまった。もう現れないほうがいいのだろうか。お料理教室の後のおしゃべりやお茶の時間が楽しくて、人の時間と自分達の時間の流れが違う事をうっかり忘れてしまっていた。
「あ、紅さん。もう来いひんとか言わんといてな。今のは忘れて。教室の人たちも入れ替わってるし誰も紅さんのこと気が付いてないと思う。そやからこれからも遊びに来て欲しい。もしも精霊さんなんやったらいつもお世話になってるお礼をしたいねん。紅さんの山桃いつも大きな実をつけてくれるやろ?私らがあの終戦後の辛い時期を乗り越えられたんは紅さんのおかげやもん。」
とらゑは慌ててそういうと、お茶と山桃の砂糖煮入りの蒸しパンを持ってきた。

それ以来紅は山桃の実るころにふらりと現れるだけになった。
そしてまた月日は流れた。

ゆい子と菜々子の子供達が成人し結婚して子をもうけ、清一の子供たちも大学でこちらに戻って来た。
松一ととらゑの周りがまた賑やかになって、紅が赤ちゃんを抱かせてもらったり、とらゑの孫たちに囲まれて話をしたり、人の時とは目まぐるしく流れてしまうのだと改めて実感させられてしまった。
その、紅が抱っこした赤ちゃんがもう時期臨月で紅に会いに来たのだ。
「紅さん、紅さんには魔法の力はあらへんの?大おばあちゃん最近元気ないやん?もうあとちょっとで赤ちゃん産まれるのに。大おばあちゃんに抱っこしてもらいたいねん。私ら誰にも紅さんのこと言うてないやん。もしか魔法が使えるなら、大おばあちゃん元気にできひんやろか。」
紅はまたもや困ってしまった。
「どうしましょう。私にはそんな力はありませんのよ。ただ山桃の木々を見守って、たくさん実るように見回ることしかできませんの。でも、とらゑさんは今までもとても元気でいらしたのだし、きっと大丈夫ですよ。」
そうは言ったものの確約はできない。龍之介ならばもしかしたらなんとかなるのではと、一縷の望みをかけてここへ来たのだ。


「え?とらゑおばあちゃんやそこのお店の人たちは紅さんが精霊さんやってわかってはるの?それやのにいつも仲良くしてくれはるん?その姿のままお料理教室通ってはるの?カフェの人驚かへんの?」
たくみは山桃水をごくりと飲んで大声を出してしまった。
「そうねぇ、最初とらゑさんは不思議がったわよ?『このご時世に綺麗な着物を着て料理を習いたいなんて。』って最初は思ったんですって。それから山桃の実のお料理方法をまず聞きたがった事と着物の柄でもしかしたら物の怪かと思ったそうよ。でも、山桃の砂糖煮、じゃむ?と言ったかしら、それが売れてからとても仲良くなって。『二年に一度でごめんなさいね。』って言ったらね、種をお庭に蒔きましたって。ご近所にもお願いして種を蒔いて実を分けていただいてるんですって。二人はとても働き者で、子供達でも買えるような駄菓子を作ったりゆっくり休めるように茶屋の中に席を設えたりご自分たちで工夫なさってね。奏吾さんの実をも水煮にしたり氷菓子にして出しておられるの。お嬢さんがお二人と息子さんが一人おられて、お三人も何も聞かず私を受け入れてくださったの。そのご家族もね。今では四代続く茶店の皆さんと仲良しなのよ。」
「どうやったら姿の変わらへん紅さんを不思議に思わずにいられはったんやろ。」
こうきはもし自分が精霊を知らないままで紅さんに会い、長い年月そのままに美しい紅さんを見続けていたらとても怖いと思うかもしれない。

「僕らと一緒ちゃう?龍之介さんと太郎さんがずーっと変わらへんくっても、坊がこのままの坊でも、育って大人になってても、僕ら驚かへんやん?きっとそこのおじいちゃんとおばあちゃんは、うちのひいおじいちゃんと違って、還って来られたことでよけいに神様を信じて、精霊さんを信じたんやと思う。還って来られておばあちゃんと子供と孫とひ孫に出会えるって、やっぱり奇跡やと思うねん。それが時間の流れだけやって思う人もいるかも知れへんけど、僕らはここにいること自体奇跡やん?鳥居の向こう側にもほんまはそんな小さな奇跡がたくさんあるん違うかな?」
たくみは坊の手を無意識に繋ぐとそう言って笑った。
たくみの手はとても温かい。昨日の冬の神様の温もりとはまた違う温かさだ。
人は、どんなに頑張って生きてみても百年そこそこだ。坊の生きる時間とは違う流れで生きているから、彼らにはとても長くても自分たちの生きる軸ではほんの瞬きの間なのかもしれない。
それでもこんなにも温かな手を、離したくない。
何度も何度も抱き合って落ち葉を撒き散らしたりじゃぶじゃぶ小川に入ってカエル隊ごっこをしたいけれど、二人はいずれそんなことすることのない大人に成長してしまう。
でも、もしも叶うなら二人の家族や子供や孫に会ってみたい。
僕の命は果てしなく続くけれど、二人は命を繋いで、もしかしたら会いに来てくれるのかな?
坊は心の霧がほんの少しだけ晴れた気がした。

「ねえ紅さん、もしかあと少しの時間を神様にもらうとしたらそれは違うと思うねん。おばあちゃんは病気じゃないねんろ?心が少し寂しくなってはるだけやん?それなら心を元気にしてあげたらいいんじゃない?僕らの知らないおじいちゃんのお話をたくさん聞いたらいいんちゃうかな?子供や孫が聞き飽きた話を、紅さんや奏吾さんとか、僕らとか。僕のひいおじいちゃんも戦争に行きはったねん。戦地で亡くなりはって、おじいちゃんとひいおばあちゃんは大変やったみたい。でもひいおばあちゃんのこと僕知らんしおじいちゃんは子供やったから戦争を覚えてなかったのか話したくなかったのか何も教えてくれへんかったの。だから、そんなお話も聞いてみたい。戦争ってなんで起きるんか僕には全然わからへんけどそれでも何も知らずにいるよりいいと思うねん。それで元気にならはらへんかな?」
たくみはひいおじいちゃんの残した小さなおもちゃの付喪神を送ったことがある。あの時、ひいおじいちゃんの手紙をみんなで読んで何度も泣いた。もう、泣く人を作りたくない。
だからこそ、知りたい。

「たくみさんとこうきさんが聴きに来てくださるの?鳥居のほんそばだから坊も出られますかしら。みんなであのおばあちゃまのお話をたくさん聞いていただきたいわ。そして百歳まで楽しそうに山桃を砂糖煮にしていただきたい。」
紅は奏吾の顔を見たあと龍之介と太郎をまっすぐ見てそう言った。
それは祈りに近い思いだった。


数日後の土曜の午後、奏吾と紅と待ち合わせをして坊は初めて人間のたくさんいる「店」の中に入って行った。たくみとこうきの手を握りしめて少し顔を赤くしている。
「あらあら、紅さん奏吾さん、それにこの子達お二人の子供さんなん?いつの間に?」
とらゑさんはふふふと笑うと子供達に山桃ジュースと山桃ジャムを薄皮に挟んだお菓子を出してくれた。
そして、促されるように松一の話を始めた。
長い長い、温かい物語を。



陽の落ちるのが早くなり辺りには彼岸花が咲いている。
入り口に床几を二つ出すとむかごを炒ったものを小さな器に入れ、落鮎の甘露煮と平茸と厚揚げの煮浸しなどを盆に盛り付け龍之介が外にやって来た。
太郎は珍しく大徳利に酒を満たしてぐい呑みに注ぎタバコの煙をいつまでも目で追っている。
「龍之介さん、人というものはあんなにも急に成長するのですねぇ。坊もそうです。わしらは見守ることしかできぬ。嬉しくくすぐったくもあるが今日は、今日だけは酔いたい気分です。」
そう言い珍しく先にぐい呑みに口をつけた。
濃い藍色の空に星が灯り、タバコの煙はいつのまにかその藍に溶けてしまった。
龍之介もほんの少しの寂しさを酒と一緒に飲み下した。


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感想 3

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みんなの感想(3件)

田中の案山子

いつも思うんやけど、懐かしい風景やなあ。今どきの子供たちにはどんなふうに伝わるのか興味あるなぁ。

解除
田中の案山子

これは二番目に好きな話

解除
田中の案山子

多分このお話が一番好きだと思う

解除

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大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

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