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第22話 6月22日
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「あ!じいちゃんだ!」
「本当だ」
駄菓子屋の店番アルバイト最終日、4人で店に向かえば、店先で子ども達と話しているじいちゃんを見つけ、善人が「じーちゃん!」と声をかける。
「おお、待ってたよ」
「おかえり、じいちゃん」
「世話かけたなぁ」
グリグリ、と善人の頭を撫でるじいちゃんに、善人が照れくさそうな、でも嬉しそうな表情を浮かべる。
「大変だっただろう?すまなかったな」
「大変だったのは、おばあちゃんのほうだよ、じいちゃん。最初の頃、フラフラになってたんだからな?」
店の中に入りながら、善人にそう言われたじいちゃんは、目尻を下げながら、「そうか」と短く答える。
そんな善人のあとを追い、寺岡さんも店に入り、羽白さんも店の中へ一歩足を踏み入れて、ふいに、くる、とまだ店先に立っていた俺に振り返る。
「ん?」
どうかしたのだろうか、と目が合った彼女に短く問いかければ、「入らないの?」と羽白さんが不思議そうな表情をして首を傾げる。
「ああ、うん。入るよ」
そう頷いたものの、ふと、視界の端に映った空が気になり、天を仰ぐ。
「千家くん?」
店内へと進んでいた足を戻して、俺の隣に並んだ羽白さんが、俺と同じように空を見上げて、「わぁ」と小さく感嘆の声をこぼす。
「綺麗な空だったんだね」
「…気づかなかった」
「私も」
確実に夏に向かっている空から視線をおろせば、ちょうど同じように視線をおろした羽白さんと目が合い、ふふ、と羽白さんが笑う。
「…なに?」
じい、とこっちを見ていた羽白さんに、後ろに何かあるのか、と思って振り返るものの、特に何もない。
なんだろう、と羽白さんを見れば、「千家くんの髪がね」と言って笑う。
「キラって、光って見えて、綺麗だったの。男の子に、綺麗って言うのも変だよね」
少し、目を細めるように言った羽白さんの笑ったに、心臓がバクバク、と存在感を主張するような大きな音を立てる。
「なんとなく、見ておきたいな、と思って」
そう言って、もう一度、羽白さんが笑った時、キラ、と何かが光ったような、気がした。
「ごめんなさいねぇ。たいしたお礼も出来なくて」
申し訳なさそうにばあちゃんは言うものの、ばあちゃんが作ってくれたおはぎはスーパーで買って食べるものの数倍は美味しくて、こっちがお礼をしたくなるぐらいだ。
「こんな美味しいおはぎ食べたの初めてかも!」
「オレも」
もぐもぐ、と美味しそうに食べる寺岡さんと善人の様子に、ばあちゃんは嬉しそうに笑い、じいちゃんに至っては「もっと食え」と皿に追加している。
「昔は、ばあさんが作ったおはぎやら、団子を店先で売ってたんだよ」
「そうだったんですか?」
「なかなかに人気あったんだぞ?」
「おじいさんってば、いつの話をしてるんです」
ハッハッ、と楽しそうに話すじいちゃんに、ばあちゃんは「昔の話よ」と照れくさそうに答える。
「やっぱり、おじいちゃんとおばあちゃんって仲いいよね」
こそ、と耳打ちをしてくる羽白さんに、「そうだね」と小さく頷けば、「いいなぁ」と羽白さんがつぶやく。
「私の家、お父さん側もお母さん側も、おじいちゃんとおばあちゃんが早くに亡くなってて、あんまり覚えてないの」
「そうだったんだ?」
「うん。だから、おじいちゃんとおばあちゃんが居たらこんな感じかなって」
ほんの少しだけ寂しそうな表情をしながら、善人たちと話すじいちゃんとばあちゃんを見て、羽白さんが笑う。
「俺のじいちゃんは、もっと頑固だからなぁ…」
「そうなの?」
「頑固っていうか…変人?」
「ふふ、なにそれ」
「この前なんて、唐突に、裏山の斜面の畑に、自作のケーブルカーを作る、とかいきなり言い出した」
「ふふ、楽しそうなおじいちゃんだね」
「いや、結構やっかいなじいさんだよ?」
これだけじゃなくて、他にも、とじいちゃんの変な逸話をいくつか話していけば、羽白さんは楽しそうに笑いながら相槌をうっている。
ちょっとは、気分晴れたか、と途中、羽白さんをじい、と見れば、「なぁに?」と笑った彼女の笑顔に、一気に頬に熱が集まった俺は、「な、んでもない、です」と思わず口元を隠して、顔をそむけた。
「なぁ、じーちゃん」
「お、善人、なんだ?」
「もうさ、棚の上の方にもの置くと危ないし、今日オレ達でいくつか下に下げていい?」
「んんん、そうだなぁ…」
おはぎを食べていた善人が、じいちゃんに提案したのは、今日ここに来るまでに話をしていたことだ。
杖をついたままでは棚上の物を取るのは危ないし、ばあちゃんが取るのも辛いだろう。
だったら今日、片付けてはどうだろうか。
そう話していた俺たちの意見を、善人がじいちゃんに伝える。
反対されるかも知れない、と話もしていたが、危ないものは危ないし、またじいちゃんが倒れたら、今度はばあちゃんまで倒れてしまう気がする。
そんな俺たちの懸念にじいちゃんが気づいたかどうかは分からないが。
「そうだな」
ばあちゃんをチラリ、と見たあと、じいちゃんは「頼んでいいか」と善人に向かって声をかける。
そのじいちゃんの言葉を受け、善人は「もちろん!」と満面の笑みで頷く。
「んじゃあ、なおさら、腹いっぱい食べろよ!」
「え、お、わあ?」
「おや、まぁ…」
ほれほれ、と元気な声のじいちゃんが、善人の皿におはぎの追加をドン、と載せ、そのおはぎに驚いた善人の声が、店内に響いた。
【6月22日 終】
「本当だ」
駄菓子屋の店番アルバイト最終日、4人で店に向かえば、店先で子ども達と話しているじいちゃんを見つけ、善人が「じーちゃん!」と声をかける。
「おお、待ってたよ」
「おかえり、じいちゃん」
「世話かけたなぁ」
グリグリ、と善人の頭を撫でるじいちゃんに、善人が照れくさそうな、でも嬉しそうな表情を浮かべる。
「大変だっただろう?すまなかったな」
「大変だったのは、おばあちゃんのほうだよ、じいちゃん。最初の頃、フラフラになってたんだからな?」
店の中に入りながら、善人にそう言われたじいちゃんは、目尻を下げながら、「そうか」と短く答える。
そんな善人のあとを追い、寺岡さんも店に入り、羽白さんも店の中へ一歩足を踏み入れて、ふいに、くる、とまだ店先に立っていた俺に振り返る。
「ん?」
どうかしたのだろうか、と目が合った彼女に短く問いかければ、「入らないの?」と羽白さんが不思議そうな表情をして首を傾げる。
「ああ、うん。入るよ」
そう頷いたものの、ふと、視界の端に映った空が気になり、天を仰ぐ。
「千家くん?」
店内へと進んでいた足を戻して、俺の隣に並んだ羽白さんが、俺と同じように空を見上げて、「わぁ」と小さく感嘆の声をこぼす。
「綺麗な空だったんだね」
「…気づかなかった」
「私も」
確実に夏に向かっている空から視線をおろせば、ちょうど同じように視線をおろした羽白さんと目が合い、ふふ、と羽白さんが笑う。
「…なに?」
じい、とこっちを見ていた羽白さんに、後ろに何かあるのか、と思って振り返るものの、特に何もない。
なんだろう、と羽白さんを見れば、「千家くんの髪がね」と言って笑う。
「キラって、光って見えて、綺麗だったの。男の子に、綺麗って言うのも変だよね」
少し、目を細めるように言った羽白さんの笑ったに、心臓がバクバク、と存在感を主張するような大きな音を立てる。
「なんとなく、見ておきたいな、と思って」
そう言って、もう一度、羽白さんが笑った時、キラ、と何かが光ったような、気がした。
「ごめんなさいねぇ。たいしたお礼も出来なくて」
申し訳なさそうにばあちゃんは言うものの、ばあちゃんが作ってくれたおはぎはスーパーで買って食べるものの数倍は美味しくて、こっちがお礼をしたくなるぐらいだ。
「こんな美味しいおはぎ食べたの初めてかも!」
「オレも」
もぐもぐ、と美味しそうに食べる寺岡さんと善人の様子に、ばあちゃんは嬉しそうに笑い、じいちゃんに至っては「もっと食え」と皿に追加している。
「昔は、ばあさんが作ったおはぎやら、団子を店先で売ってたんだよ」
「そうだったんですか?」
「なかなかに人気あったんだぞ?」
「おじいさんってば、いつの話をしてるんです」
ハッハッ、と楽しそうに話すじいちゃんに、ばあちゃんは「昔の話よ」と照れくさそうに答える。
「やっぱり、おじいちゃんとおばあちゃんって仲いいよね」
こそ、と耳打ちをしてくる羽白さんに、「そうだね」と小さく頷けば、「いいなぁ」と羽白さんがつぶやく。
「私の家、お父さん側もお母さん側も、おじいちゃんとおばあちゃんが早くに亡くなってて、あんまり覚えてないの」
「そうだったんだ?」
「うん。だから、おじいちゃんとおばあちゃんが居たらこんな感じかなって」
ほんの少しだけ寂しそうな表情をしながら、善人たちと話すじいちゃんとばあちゃんを見て、羽白さんが笑う。
「俺のじいちゃんは、もっと頑固だからなぁ…」
「そうなの?」
「頑固っていうか…変人?」
「ふふ、なにそれ」
「この前なんて、唐突に、裏山の斜面の畑に、自作のケーブルカーを作る、とかいきなり言い出した」
「ふふ、楽しそうなおじいちゃんだね」
「いや、結構やっかいなじいさんだよ?」
これだけじゃなくて、他にも、とじいちゃんの変な逸話をいくつか話していけば、羽白さんは楽しそうに笑いながら相槌をうっている。
ちょっとは、気分晴れたか、と途中、羽白さんをじい、と見れば、「なぁに?」と笑った彼女の笑顔に、一気に頬に熱が集まった俺は、「な、んでもない、です」と思わず口元を隠して、顔をそむけた。
「なぁ、じーちゃん」
「お、善人、なんだ?」
「もうさ、棚の上の方にもの置くと危ないし、今日オレ達でいくつか下に下げていい?」
「んんん、そうだなぁ…」
おはぎを食べていた善人が、じいちゃんに提案したのは、今日ここに来るまでに話をしていたことだ。
杖をついたままでは棚上の物を取るのは危ないし、ばあちゃんが取るのも辛いだろう。
だったら今日、片付けてはどうだろうか。
そう話していた俺たちの意見を、善人がじいちゃんに伝える。
反対されるかも知れない、と話もしていたが、危ないものは危ないし、またじいちゃんが倒れたら、今度はばあちゃんまで倒れてしまう気がする。
そんな俺たちの懸念にじいちゃんが気づいたかどうかは分からないが。
「そうだな」
ばあちゃんをチラリ、と見たあと、じいちゃんは「頼んでいいか」と善人に向かって声をかける。
そのじいちゃんの言葉を受け、善人は「もちろん!」と満面の笑みで頷く。
「んじゃあ、なおさら、腹いっぱい食べろよ!」
「え、お、わあ?」
「おや、まぁ…」
ほれほれ、と元気な声のじいちゃんが、善人の皿におはぎの追加をドン、と載せ、そのおはぎに驚いた善人の声が、店内に響いた。
【6月22日 終】
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