僕たちは陽氷を染める

渚乃雫

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閑話 とある日のゴシップ二人組

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「どうも、斉藤です」
「どうも、荒井です」
「誰に言ってんだ?」
「まあまあ、お気になさらずに」
「まあまあ、お気になさらず、ってちょっとは気にしてよ千家せんげ!」
「気にすんな、って言ったのそっちだろ」

 おれ達の挨拶もそこそこに、おもむろに本を開き出したクラスメイトこと、千家せんげ成浩なるひろに慌てて声をかければ、千家が割と本気で迷惑そうな顔をしてこっちを見る。

「ねぇ千家、そんな顔されたらおれ泣いちゃう」
「泣かないだろ」
「ねぇ千家、そんな顔されたら荒井泣いちゃう」
「オレだけかよ!」
「相変わらず息ぴったりだな」

 反応こそは冷たいものの、そう言った千家は、「しょうがないなぁ」という感じの表情で笑う。
 その表情を見て、隣に並ぶ斉藤の顔を見れば、斉藤も多分、おれと同じことを思ったらしい。

「ツンデレだな」
「うん、ツンデレだ」
「いまデレたよな」
「飴と鞭か」
「さっきのが鞭で」
「いまのが鞭」

 うんうん、と頷きながら言ったおれたちに、「誰がだよ」と呆れた顔をする千家は、何だかんだと話に付き合ってくれるから、やっぱり優しい。

「なるの場合はツンデレ、っていうよりは、ツンツンデレ、くらいじゃん?」

 カタン、と椅子の音を鳴らしながら、千家の横の席、羽白はじろさんの椅子に座った照屋てるやが、おれたちと千家を見比べながら笑う。

「めったにデレない」
「レアメタル?」
「それは希少金属だろ」
「珍味?」
「フォアグラ的な」
「誰が世界三大珍味だ」
「どっちかというと絶滅危惧種?」
「絶滅危惧種してねぇよ、っていうか元々俺は一人だよ」

 トントン、と続くおれと斉藤のかけ合いに、びし、と千家が都度ツッコミを入れる。

「なるってツッコミ担当だよね」
「担当なんて持ったつもりは一度もないが」

 はぁ、と照屋の言葉に大きく息を吐き出した千家に、照屋は「ふはっ」と笑い声を吹き出す。

「それにしても、千家って結構面白いよな」
「…はい?」

 そう言った斉藤の言葉に、千家が眉を少し潜めながらこっちを見る。

「なるの場合は面白いっていうか、天然なんだよな」
「あー、分かる!」
「誰が天然だ」

 照屋の言葉に、激しく頷く斉藤に、千家が軽くため息をつきながらツッコミを入れる。

「おれまだ天然なところ見てないなあ」

 なんだかほんの少しだけ疎外感を感じ口を尖らせながら言ったおれに、「そもそも俺は天然じゃない」と千家せんげがまたため息をついて、手元の本を開いた。

「この状況で本読んじゃう時点で、天然だよな」
「しかも割と集中してるから聞こえてないしね、なるってば」
「…なるほど」

 漫画とかであれば、ここで「聞こえてるわ」とか、口元とかで実は聞こえてました、とかそんな展開になるのだろうけれども。

 目の前のクラスメイトは、そんな王道展開は、がっつり無視をしていくらしい。
 そんなに聞こえてないものか?
 ふとそんな疑問が湧いたおれが、ちら、と隣にいる斉藤を見やれば、どうやら斉藤も同じことを考えていたようで。

 そろり、そろり、と足音を立てずに千家の後ろに回った斉藤が、千家にちょっかいを出して本気で切れられることになったのは、このあとすぐの出来事だった。





【閑話 とある日のゴシップ二人組 終】
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