現実は非モテでも、転生先ではモテモテで求婚されまくりで迷惑です

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この世界には無い存在

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「少し走るぞ」

強く馬の腹を蹴ると徐々にスピードを増していき、駆け足になっていった。
走ると上下する体を振り落とされない様に馬の首を必死に抱き抱えた。

「なんて格好だ」

必死な状態を笑う様に言うクロウさんに少しカチンと来たが、今は言い返さずそのままの格好でいた。

『大丈夫か?』

私を気遣う一言がクロウさんより優しく、馬と人が逆だったら良かったのにと強く思った…。

「見ろ、あれがローツェ国の王宮だ」

私に王宮を見る様に言うが、私にそんな余裕は無かった。
そんな私をクロウさんは引き上げた。

(ち、近い…)

見つめ合ってはいないが私の頭の後ろにクロウさんの顔があり、息をすれば耳にかかるくらい近かった…。

「どうだ、ちゃんと見えるか?」

(くすぐったい…)

思わず頭を軽くお辞儀をし、かかる息から離れようとした。

スンスン…

また嗅いできた…。

「そんなに変な匂いしますか?それなら降りましょうか?」

「違うぞ!嗅いでない!」

全力で否定し、クロウさんは鐙に乗せた足に力を入れ半身程後ろに乗り直した。
彼なりに気を使ったんだろうなと私は瞬時に分かった。

その後は黙り、街を囲う城壁にたどり着いた。

「高っ!」

何mあるんだろうか…首を目一杯上に向けても天辺が見えないくらいだった。

「そうだろう、敵に攻められても登れないくらい高くしろと俺が命令したんだからな!」

自慢げに言うクロウさんだが、敵って何処の?って感じだった。
私達が城壁近くの門で立ち止まっていると門兵と見られる甲冑姿の人が近づいてきた。

「王子!あまり遅くならないでください。今日は何処まで行かれたんですか…」

「どこでもいいだろう、そんな事」

「いやいや、狩りには護衛付けるなと言われるのは分かりますが、せめて場所くらい…」

二人のやり取りを私はただ聞いていたが、門兵に気付かれた。

「なっ!王子、誰ですか、こいつは?…黒髪?」

「珍しいだろ。この世界じゃ絶対に居ないからな、だから連れて来た」

「まさか、中に入れる気ですか?いくら王子とは言え…」

「おい。俺は誰だ?逆らうなら…」

クロウさんは左手で腰の剣を掴み出した。
それを見るや門兵はため息を一つ吐き、私達を門の中の街に入れた。

「おい、とりあえずこれで髪を隠せ」

クロウさんは甲冑の中から一枚の白い布を出し、私に黒髪を隠すように命令した。

軽く街を見渡すと、シルバーやブロンズ、ブラウン、アッシュグレーなど様々な色の髪の人ばかりだった。

先程の会話から分かったようにこの世界には私と同じ髪色は誰もいないそうで、すぐに噂になりそうだ、と思った。

シュルっと布を三角巾の様に巻き、黒髪を隠した。

三角巾を巻いた私を見てクロウさんは言う。

「意外にその格好もいいな…」

「はい?」

「いや、なんでもない…。行くぞ」

少し顔を赤くしたクロウさんは馬を歩かせた。
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