君から届く声を、僕は守りたい

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「君の歩幅はピッタリ50cmなんだ。……でも、たまたまなんじゃないの?」
「まぁたそんな屁理屈いうんだね!これでも役者の卵だよ。ここと違って舞台の大きさは決まってるからそれに合わせた動きもちゃんと練習してる。そのおかげでこれも身に付いたんだから」

誇らしげに威張る彼女だったが、波が打ち寄せてきて靴を濡らす。


「冷たっ!!」
「どうやら神様が怒ったみたいだ、今のは天罰だよ」
「神様を信じないくせにこういう時は言うんだ。矛盾してない??」
「今のは願ったわけじゃない。君が僕に対して悪口を言ったから懲らしめてやろうという神様のお叱りさ」
「むかつく!!」

急に走り出し向かって来るので逃げる形で僕も走った。
いつの間にか追いかけっこが始まっており、声を出しながらお互い走った。
まるでドラマのワンシーンを再現しているかのように笑い、そして必死に。

「ま……まって。終わり。……終わりー!」

彼女の疲れ切った声が響き渡るとようやく追いかけっこは終了した。

「ガリ勉くんに負けた……」

膝に両手をつきうなだれつつ息をする彼女からはぽたりぽたりと汗が落ち、砂浜に無数の跡を作っていく。
僕もようやく終わった安堵感から砂浜にへたり込むと、息苦しい呼吸を整えつつ汗を拭った。

「なんで走るのさ。いま夏だよ?一歩間違えば命の危険も……」
「青春、でしょ!!」

うなだれた顔を持ち上げると満面の笑みを浮かべてくる。
そこには捕まえ切れなかった事への悔しさは微塵も感じられないほど眩しかった。



夕陽もだいぶ傾き、辺りはすっかり夜の顔へと変わっていき、空には月が上がり始めてくる。
帰るにはいいタイミングだと思い、声をかけると少し寂しげな表情を見せてきた。
久しぶりに会ったということもあるのだろうが、このままずっとここにいる訳にもいかず『休むのも仕事の一つだ』と告げると重い腰を上げ立ち上がった。

「今日はありがとう。練習は出来なかったけど顔を見れて良かった。じゃあね!」

改札を抜けるとすぐに立ち止まり、こちらに手を振り別れを告げてくる。
だけど、周りの目を気にする事なくずっと振り続けている。
目立つから早く行って欲しいと願うがちっとも止める様子がない。……そうか、僕が何も合図をしないからか。
ようやく気付き軽く手を上げると、ピタリと止まり笑顔を送ってくると、構内へと進んでいった。

電車に乗り込もうとした瞬間、後ろから乗るのを見ていたんじゃないかと思う程のジャストタイミングでメッセージが届いた。

【乗った?帰り暇だから少し付き合ってくれる?どうせ君の事だからボーッと外でも見て帰るだけだからいいでしょ!】

勝手な事を言ってくるが、その通りだ。
窓の外に広がる暗闇を見つつ、ただ帰るだけでいたから…。

【程々にね】

多少の牽制を入れて送るが、そんな事はお構いなしといった具合に返信を送ってくる。

そこには今日のお礼から始まると、鈍臭い僕を捕まえ切れなかったのは単純に地面が砂浜だったからと理由を言い、アスファルトの上では必ず!と意気込んでいた。
それに今日出来なかった練習をしたいとの事で予定を合わせる事にした。
練習場所は僕の負担にならないようにいつもの公園でいいと配慮する部分もあり、メッセージのやり取りは駅に着くまで続いた。

よくもまぁすぐに返信が出来るものだと感心していたが、それに付き合っている自分にも少し驚いた。
程々と自分が言ったのに、彼女から来るメッセージを苦に思わず返していたから。
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