真っ白だった俺を色付けた君は儚い

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勇気

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カチャカチャ…と小さな音立てながらパスタをスプーンの上に丸めていく。

(こんな話聞いたら食いづれぇだろ……)

俺は食べる事がなかなか出来なかった。

「浩二さん、……食べてください」

スプーンの上に作ったミニパスタを手に俺を見てくる。

「……食べた後、まだ話してもいいか?」

俺の提案に、小野さんはまた無言で頷いた。
それを見て俺はケースからナイフとフォークを取り出しようやく食べ始めた。


談笑しながら食べるのが普通だと思う。
だけど、俺達はBGMが流れる店内で無言でパスタを食べていき、あっという間に食べ終えた。

カチャ……とナイフとフォークを置くと、小野さんはまた虚な目をしだす。

(どう話すのが正解なんだ…)

暗い影を落とす目の前に座る小野さんに俺は必死に頭を巡らせ、正解となる言葉を探した。
コレだ、と思った言葉もなかなか脳から口へと命令がいかず、また考え直す。
これを繰り返した。

「……ありがとうございます、浩二さん」
「えっ」
「色々考えているんですよね?……でも、私は大丈夫です」
「どう見ても大丈夫じゃないだろ。この紙、親には見せたのか?」

また無言で首を振る。

「正直に見せて見たらどうなんだ?」
「……絶対怒ります。それに見せたらもう会えないかもしれません」
「何故?」
「もっと監視され、家から出るのは学校と塾しか認めないと思います……」
「マジでおかしいだろ!まだ結果なんて先だろ?それにこの紙、一つしか書かれてねぇ。違う学校も受けたらいいだけじゃ」

また首を振る。

「両親はこの学校しか認めてくれません。この学校以外行くならお金は出さないと言われているので……」
「おいおい。まじであんたの親、イカれてるぞ」
「……」
「す、すまねぇ」
「いえ、……私、少し疲れました」

話した事で張り詰めていた緊張が解けたのか、小野さんの目は一気に真っ赤に染まり、今すぐにでも涙が落ちそうだった。

そんな姿を見て俺は無力だった。
俺に学歴など無い。
だって俺は高校を中退し、最終学歴なんて中卒だ。
そんな人間が医者を目指す人間の相談を解決出来るはずは無かった。

「今日はありがとうございます。……行きましょうか」

小野さんは俺に差し出した模試結果をバックにしまうと立ちあがろうとした。

「……あんた、今日は時間もう無いのか?」

俯きつつ俺は小野さんに確認を取った。
時刻はもう少しで20時になろうとしていた。


「……気持ちは嬉しいですけど」
「俺が居たいだよ」

俺は顔上げ、真っ直ぐ小野さんの事を見た。
多分捉え方によっては『告白』だと思われかねない。
でも今の俺はこのまま帰したく無かった…。

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