真っ白だった俺を色付けた君は儚い

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俺は…

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着いた公園は男の俺ならなんて事ないが、女性一人だったら絶対来るような感じでは無かった。
こんな小さな公園にいようものなら問題が起こっても不思議ではない。
だから、俺は何もないとは思いつつも辺りを警戒した。

「……わりぃな、こんな場所で」
「いえ」
「とりあえず座るか」

俺は入ってすぐの木製のベンチに向かうが、野晒しのベンチは朽ち、さらに今まで降っていた雨のせいで軽く水溜りが出来ていた。

(くそっ……他は……)

「じゃ、じゃあ、あれは」

俺はベンチ以外で座れるとなると、もうブランコしかなくそこに誘った。
座れば足なんか簡単に付く、いや、普通に座るよりも少し足を投げ出して座った方が楽なくらいの高さだ。

ブランコは色の落ちたオレンジ色をしており、やはり雨のせいで濡れていたので俺はパーカーの袖で何度もぬぐった。

「……ありがとうございます」

お礼を言うと二つあるブランコの一つに座り、膝にバックを乗せ、真っ直ぐ前を向いていた。
俺も濡れた片方のブランコを拭い、同じように座ると前を向いた。

お互いの間に一人分の距離があり、夜風が俺らを通り過ぎていく。

(喋れ、俺)

真っ直ぐ向けていた目を横にずらし、俺は話し出した。

「今日は会えて良かった」
「いえ、それは私が言う言葉です……お金、返しますね」
「いいって、それは」

俺は頑なにそれを拒んだ。
受け取ったらもう会えない、そう思ったし、なにより受け取らない方が、それを口実に会う事ができるかもしれないという淡い期待からだった。

「……私、親に見せようと思います」

小野さんの目はバックへと落ちていた。

「そうか……」

残念な気持ちになった俺をよそに、ギシッと音を立て小野さんはブランコ漕ぎ出した。

「……懐かしい。昔はこうやって遊んでいたんですね」

隣で揺れ動く小野さんを俺は見ていた。
雨が止んで出てきた月が、行ったり来たりする長い黒髪を照らし、それがとても綺麗だと思った。

「あぁ。昔はよくやったものだ」

俺も同じ様に少しブランコを漕ぎ始めた。

「……私、本当に会えて良かった」

その言葉に持っていたブランコの銀色のチェーンをギュッと強く両手で握り出した。

(それは、終わりって事だろ……)

俺は足を投げ出し、地面につけると勢いよくブランコを止めた。

「俺は終わりたくねぇ!」

止まったブランコを降り、まだ揺れ動く小野さんの元へと近寄った。

「浩二、さん?」
「終わりたくねぇって言ってるんだよ」

俺は危ないと思いつつもブランコのチェーンを握り、揺れ動くのを止めさせた。
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