真っ白だった俺を色付けた君は儚い

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傷心

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あれから日は過ぎていき、あっという間に暑い夏を迎えた。
小野さんからの連絡はまったく無い。
俺も本人に向け、邪魔をするつもりはないと宣言しているのですることは無かった。
だけど、やはり心の中はポッカリと穴が空いたような感じになっていた。


「どうした浩二。元気ねぇぞ」
「……そんな事ねぇっす」

バイト終わりの俺は椅子に座り、スマホを触りつつオーナーの言葉に反応していた。
だけど、スマホに向けた目に生気を感じられないらしく、ニヤニヤしながら俺に話してくる。

「ははぁ~ん。お前、フラれたな」

スマホを持っていた右手が少しだけ動いた。

「なんだ、やっぱりか、……無理矢理シようとしただろ?気持ちはわかるぞ、でもやっぱりちゃんとしとくべき所は……」
「してねぇっす!」
「なんだよ、大声なんてあげて」
「……俺はしてない」

スマホをぎゅっと握り込み、それ以上話したく無かったから俺は店を出ようとした。

「待った待った」
「……なんすか、バイト終わったんで帰りてぇんすけど」
「仕事じゃねぇ、ちょっと話だ」
「話……?」

俺は店に戻され、また休憩室に座らされた。

「……寝たいんで、早くして貰えます?」
「わかった、わかった。……お前、免許あるか?」
「免許?……ねぇっす」
「そうか。……本部がうるさくてよ、うちも配達とかやれとか言いやがって。人がいねぇってやんわり断って来たけど、それでもやらんとFCフランチャイズ外すぞって脅してきやがって」
「はぁ。……それで?」
「お前、やる気ねぇか?」
「いやぁ~……夜バイトしてるし、帰ったら寝るんで、取りに行く時間ねぇっすよ」
「……まぁ、そうだが。あっても困らんぞ。それに車運転出来たら色々行けるし。他の連中にも話してみるが、ちょっと考えてみてくれ」
「はぁ」


(免許かぁ……)


街を歩きつつ普段は気にもしなかった車に目を移していた。
白い軽自動車、赤いスポーツカー、はては配達しているワンボックスカー。
確かに免許さえあれば今見ている車は運転できるだろう。
でも取った所で俺は車を買う必要もない。
今でさえ持ってなくても何も困ってないからだ。

「……取ってもペーパーになるだけだろ」

俺は、車から目を外し、家へと向かった。






ベットに寝転がり、スマホを上に上げボンヤリとする。
最近ではいつも見ていた動画も更新がないのか、全く新作を出してこない。
現れる俺へのオススメも全く興味が沸かず、スマホをベットの枕元へと落とす。

(つまらんなぁ……なんか……)

寝て起きてバイトする。
いつもと変わらない日常に少し嫌気が差し始めてきた。

(……勉強してんだろ。どうせ)

枕元に置いたスマホをもう一度持ち上げ、小野さんから来たメールを開いた。
もう三ヶ月位、音沙汰もない。
最後に送ってきたメールは一緒に食べた後のお礼のメールだ。


『今日は本当にありがとうございます。……嬉しかったです』



「なんだよ、嬉しいなら返事をくれよ……」

俺はメールを見ながら文句を言い、しばらくその画面を消さなかった。
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