天啓の雲

古寂湧水 こじゃくゆうすい

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ダライラマの要請で40億円の仏像を作る。

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まず使用しての使い心地や値決めをどのようにするか、アドバイスをいただければと思います。]遠州、[これはまた面白いですね。天然ものですので造形だけの作為で、本体そのものの材質は天から授けられたものです。作家の個性に振り回されずに、天の作意をそのまま感じ取ることができるお茶碗ですので、楽焼とは真逆のものです。私はとても気に入っていますよ。]

王様、[まあ、自分で使ってみると同時に茶会などでも使用して、みんなの感想を聞いてくれるかな。][はい、そのようにさせていただきますが、私も石の茶器は初めてなのでとても興味を持っています。[これは面白いですね。銘石をこんなに薄く作れるのは王様しかいないですよ。上限が500万かそれ以下の350万円くらいが妥当だと思いますがいかがでしょうか。]

すず、[私はこれは名物クラスだと思います。練り上げのように幾層にもなっていて、大理石のような白いものもねじれて入っています。]
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[これは数千万の価値がありますよ、安くしないで5,000万円クラスに設定すべきです]志野、[お茶のプロの遠州さんの意見がとても重要だと思います。販売をする前に使用した人の意見をいろいろ聞いて参考にすべきです。]王様、[そうだね、そのようにします。]

王宮前のバードサンクチュアリーの大型水槽の前である。[親分、金魚型のダルマって面白いですよ。][そうだジョー。ランチュウダルマに出目金ダルマがいいジョー。]
[なんで達磨さんのダルマが、金魚のダルマになっちゃうのよ、そんなの作っちゃったら、あなた達のお父さんやおかあさんが、売れなくてたいへんでしょ。]夏見の売り場の応接コーナーにチベット僧が2人来ている。いずれも品があり、頭もよさそうである。

[私が責任者のサンリンポチェと申します。こちらは部下のサスケです。[ほう、サンリンポチェとはチベットではとても大きな名前ですよ。]
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[いえいえ、サンはお香のことでリンポチェが専門家という意味です。][ははは、そうですか、私達はダライラマ法王の側近ですが法王の命令でお邪魔しました。法王はご存じの通り高齢で身体もかなり弱ってきました。そこで最後の仕事は2つありまして、1つ目は次期後継者の選定ですが、これは世界中から高僧を集めて意見を聞き、どうするかそのうちに決まると思います。

そしてもう1つはジョカン(大昭寺)の本尊ジョウォリンポチェ(釈迦牟尼)像と同じものを作ってほしいということです。それと先日京都の寺に青銅製の観世音菩薩を収めたと思いますが、それと同じクラスのものを16体造ってほしいとのことです。

なんでも法王がおっしゃるにはダラムサラにも仏師はいるが、あなた様は抜きんでていて通常では考えられない境地におられるとのこと。予算はすべてで30億円です。たぶん6倍の費用が普通にかかるがなんとかお願いして来いということなんです。]
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サスケ、[法王様の依頼でしたら何とかしたいのですが、これはいかんせん無茶な仕事ですよ。お釈迦様を造るだけでもそれ以上かかります。それに同じような本尊なんて世界中に他に、誰も造れる人なんていないでしょう。]

[無茶は充分にわかっています。でも何とかお願いします。]王様もため息をついて考えあぐねていたが[ゴン太にユリはどう思う。]ワンワンワン。[そうか、ちょっとスタッフと打ち合わせをしますので、お茶でも飲んでお待ちください。]いつものスタッフが集まっている。

王様、[30億でかなりの難題だが、ダライラマの依頼です。みんなの意見を言ってください。]遠州、[たしかに仕事の割に金にならなくて難しい依頼です。ですが私らの仏教の本尊は観世音菩薩ですし、ゴン太も化身です。それを見込んでのことですので、損得の考えも必要ですが、もう一歩別の考えも必要だと思います。ここはやるべきです。]ワンワンワン。
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志野、[仏像の依頼とともに、王様にチベットの後事をお願いするという意味合いもあると思います。仏像よりこちらの方が強いように見受けられます。]ワンワンワン。[なるほどな。]すず、[超能力で造ると言ってもこれは大仕事で犬2匹の気を借りてもやっとできる感じです。よほどの覚悟が必要ですよ。][ワンちゃん達協力してくれるかな。]ワンワンワン。

[よし、やろう。分身して全員出動でいいかな。][賛成です。]全員一致である。[それでは依頼に応じます。明日10:00にここに来てください。瞬間移動でダラムサラの公邸に行きます。]

[ありがとうございます。どのくらいの工期ですか。][3日~10日ぐらいです。][口をポカンと開けて、ほんとうにそれでできるのですか。][年の瀬で忙しいので、早く作って早く帰ります。ハッハッハ。][わかりました。そのように伝えます。]ここはインド北部のダラムサラにある法王公邸である。王様は10年前に個人旅行で訪れて以来である。
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[いや~、よくきたな。オーダーを受けてくれて礼を言う。本来、私が行ってお願いしなければいけない立場だけれども、この通り体調があまり良く無くてな。][すみません、ちょっと教えてほしいのですが本尊のジョウォリンポチェを超能力で投影してもぼやけています。この前の焼失で事故にあいましたか。][事故にあったようだが、固く口留めされていて詳細はわからない。困ったものだ。]

[それでは法王が亡命された、1957年のお姿を再現してみます。]そうかすまないな。それからその犬は噂通りにたいへんなものだな。本来私が座布団を譲らなければならないのだが、この通りなものでご容赦を願いたい。]ワンワンワン。

[法王も観世音菩薩の化身とされていますが。][ふぉっ・ふぉっ・ふぉ、私の場合は形だけだよ中身がない、本物はこの犬だよ。][この犬は観世音菩薩の化身ということは承知をしているのですが、こちらのユリはなんの仏様の化身でしょうか、教えてくれないのです。]
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[それは~。][ワン。][教えてはだめだと言っているが、そのうちにわかるだろうよ。話は替わるがパドマサンババが復活していると聞いているが。][その通りですが、小さなお寺に住んでいます。サンババも同じく座布団を譲りましたよ。][なるほどな。オム マニ ペ メ フム。]と言ってお題目を唱えた。

3日後にお釈迦様と16体の青銅製の観世音菩薩の仏像が完成した。8名の高僧が来て出来上がりを詳細にチェックしている。一様に釈迦牟尼のジョカン寺の本尊の出来栄えに驚いている。亡命してきたときのお姿そのものであるからだ。

法王、[実はここだけの話だけども、亡命するときにジョカンの観音堂の観世音菩薩像を持ち出してな、あそこにあるものは偽物だったのだが、それも今回の火事でどうなったことやら。それでは決済をしますので経理の方に行ってください。終わったらモモ(チベット餃子)にトゥクパ(ほうとうのような湯面)を食べていきなさい。私はここで失礼するよ。]    
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全員、[ありがとうございました。]法王[今後ともよろしくお願いしますよ。それと皆様の前途を期待しています。]寒さもやっとやわらぎ、桜の季節がやってきた。子供3人組は門前病院の院長が飼っているランチュウと東錦の池にやってきている。それぞれ卵が孵化して幼魚に成長しているので見に来たのである。

[親分、そろそろ選別ですね。]振り分けられた不良品をもらうことになっているのである。[たくさんもらって飼えば死んでも残っているジョー。][親分、僕たちも勉強しましたんで、こんどはヘマをしませんよ。][そうだジョー。うまく行くジョー。]ダイとウメが首をひねっている。

[ほんとうに大丈夫なの。][間違いないですよ、僕たち自信があります。][大丈夫だジョー。][ちゃんと気を付けることをノートに書いて、その通りやるのよ。][がってん承知だジョー。]2回目の京都料飲組合の展示販売会依頼である。今回も会期は3日間でホールの使用料は無料になっている。
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[京都にまた行くことになりました。人気の京焼大御所の仁清・乾山・潁川・仁阿弥・木米に保全の普及品を厚めに用意してください。それといつもの魯山人に古伊万里の普及品も多めにお願いします。遠州さんは遠州七窯と国焼の手頃な骨董とお茶碗の普及品をお願いします。

私は東京で評判の良かった明朝色絵の琳派風と琳派風の染付にオリジナルの益子乾山を用意します。尚、このオリジナルは絵柄を増やし釉薬もグレードアップしたので価格帯を500~3,500万円にいたします。遠州さんの目利きで朝鮮陶器5,000万円クラスは今まで通りでお願いします。

私も5,000万円クラスを用意するとともに、今回初めて石のお茶碗に食器を展示いたします。京都は銘石が多い大寺が多く昔から親しまれている土地柄ですので期待をしています。意見がありましたらどうぞ。]サスケ、[京都はお寺が多いので、宗教グッズも用意しますか。]
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[お線香の販売高が日本一になり、また宗教関連グッズもよく売れています。でも今回は料飲組合主催で呼ばれていますので、宗教グッズの展示はいたしません。ただ宗教グッズの卸や仏像に仏画などの高額商品の注文は受け付けます。それと無茶な注文を入れてくる場合もあります。その場合は決して嫌な顔をせずに、私に相談をしてください。その時にあまり利益が出なくても、次に繋がるかもしれません。]

前回、ここでの展示会が好評だったのとジョカン寺本尊の釈迦牟尼をダラムサラに復活させたこと、それに初めての石のお茶碗の発表ということで開場の時間前からマスコミが興味津々で詰めかけていた。

明日香陶芸店の展示販売会のアイドルになっている犬2匹にも好評の一客入魂ハチマキを今回も締めさせた。ワンワンワン。予想通りに京焼の潁川・仁阿弥・保全の普及品が好調である。茶道が盛んなのでグループで見に来ているのが特徴的である。
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石の茶碗は今回が初めての展示なので様子を見るために、価格を250万円~5,000万円までの素材が勝負で付けているが、さてどうなることやら。[まあ、珍しいわね。これは人間国宝の松井康成さんの練り上げよりずっとよろしいわよ。][ほんとうですね。本当の天然の色ですのでこれはいいです。普通のものでも3,500万円以上の価値はあると思います。]

[中国の磁州窯で焼かれた骨董の練り上げのものがあるのですが、こちらの方がいいですね。私は3,500万円のものを買います。]と言って、すずに対処をするように指示した。

他に2,500万円のものをグループの友人が1点、同じく仲間の人が3,000万円のもの1点購入された。買われた3人にすかさずにマスコミが殺到して感想を求めている。小堀遠州もさすがという顔をして、苦笑いをしている。自身は今回より御本手茶碗を3,500~5,000万円で出しているのだが、こちらはこちらで期待をしているようだ。
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御本手というのは日本より型のお手本を送り朝鮮で焼かせたものである。なかでも今回、半使茶碗に5,000万円を付けている。半使とは朝鮮使節の役職名であり、彼らの持参した茶碗にこの手があったのでこのように名付けられたのである。

御本手には遠州もかつて絡んでいたので愛着があるのである。やっぱり目の高いお客さんはいるようだ。御本手の彫三島に金海がそれぞれ3,500万円と3,000円で売れた。ひとまずはほっとしたようだ。料亭や割烹の女将や仕事服姿の調理人が買い物籠にまとめて入れている。明日香陶芸店の名前が知られ信用も出てきたようだ。

ゴン太にユリが8歳ぐらいの双子の女の子を母親と一緒に連れてきた。[ママ、このワンちゃんのハチマキおもしろい。][ははは、そうね。2人にあうようなお茶碗を探しているのですが。][はい、いいものがございますよ。この高取焼の普及品はそれぞれ25,000円です。高台裏の印が違うだけで本体は本物と同じです。]
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同じようだが少し釉薬の流れが違う2個を用意した。[まあ、遠州さん直々の見立てですから間違いございませんね。どうあなたたちこれでいいかな。]2人ともコクンと相づちを打った。[さ~て昼食にするか、すずさん縁起のいい天ぷら3匹載せ蕎麦をお願いしますよ。][はい、わかりました。行ってきま~す。]

サスケ、[ここのお蕎麦は天ぷらがうまいし、ダシも効いていてつゆがうまい。]すず、[私はどっちかというと、この昆布だしよりカツオだしのほうがいいな。][犬用に尾っぽをやってくれ。]ワンワンワン。

前回の展示会で1億円の礼賓の見込みに南無阿弥陀仏のお題目を入れた老師が、同じように弟子に支えられてヨタヨタ歩きでやってきた。[あ、どうも老師久しぶりです。ようこそいらっしゃいました。][あんたの礼賓で毎日お茶を飲んでいたら、死にぞこないになってしまった。ふぁっ・ふぁっ・ふぁっ。][何かご用件がありそうですね。]
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[この私の友人がじつはとんだトラブルに、巻き込まれてしまって弱っているんじゃよ。][私でできることでしたら、協力しますが。][うん、それを見込んできたんだけど、五日後に落成式予定の本堂に収める仏像5体が、トラック事故で粉々になって壊れてしまって頭を抱えているんじゃよ。そこであなたがダライラマのオーダーで、ジョカン寺の本尊釈迦牟尼と観世音菩薩を16体を、3日で造ったことを思い出してなここに来たんじゃ。]

[明後日までここで展示会ですので、1日で造って次の日に届けるということになりますね。][1体8億で5体で40億のしごとじゃ、仏像の詳細はここに書いてある。あなたならできるだろ、一客入魂のワンちゃんに聞いてみなさい。はっはっはっ。]

少し考えていたが、[どうだゴン太にユリ。]ワンワンワン。[はっはっは、できると言っているぞ。][わかりました5日後にお届けいたします。][持っていく場所と時刻は書類に入っている。よろしく頼むな。]
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青くなっていた老師は活力が出たのか、背筋を伸ばして帰っていった。サスケ、[ひえ~、いろんなことが起こりますね。でも40億ですよ。]サスケ、[大本山仁和寺の住職はさすがに顔が広いですね。総理の御母堂さんのお仲間ですから。]

王様、[そうだな、今回もきちっとやれば次につながる。]すず、[やっぱり天ぷらそばの御利益は大きいですね。毎回いいことが起こりますよ。それからこれは志野さんのお手柄です。というのはジョカン寺の本尊と16体の観世音菩薩をダライラマの依頼で、3日で造ったっていうのはまさしく世界一の仏師といっても間違いありません。これは宣伝になると思って各マスコミに情報を送ったのです。案の定いい宣伝になりました。500億円の青銅製の花器のオーダーもそうですが、大きな商談2つ成功というのはすごいことですよ。]

[そうだなよくやったがみんなのチームワークがいいというのが一番だと思うよ。これからも、協力しあって頼むな。]
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マスコミがまた何かあると思って、王様にいろいろ聞いてきたがもちろん守秘義務があるので言えるわけがない。[さあ、今日はそろそろ終了ですので、準備をしてください。]今日の売り上げはもちろん40億円が入ったので大きいが、食器や茶碗もよく売れた上々の一日であった。

2日目は新聞で石の茶碗が報道されたり、有名どころの普及品食器が料亭などの和風高級店に大人気という記事が出たので、名古屋、大坂に神戸近辺からもその関係者が多数来店した。昨年来た方も多いようだ。

今日は5,000万円のものが出展している中で最高の価格であったが、それの1.8倍の価値を持つものを7,500万円で出した。目利きで資金のある人はこちらを選ぶと思われる。それは天然石のお茶碗でほれぼれとするような景色のものである。まさしく天然の芸術品というもので、色違いの層が見事な文様になっている。
もう一点は奥高麗で、昨年も販売したがそれの1.8倍の総合力を持ったものを7,500万円で提供する。
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これも見る人が見れば納得するだろうという、半分遊び心の設定にした。遠州も栄胡録の茶碗を7,500万円で出してきた。さてどうなることやら。明朝色絵琳派風と琳派模様の染付の食器は京都で初めて展示したが、普及品でなく一点物を探している高級料亭などがよく買われていく。

[すずさん、今日は鴨南蛮蕎麦にしてくれるかな。]はいわかりましたが、昨年と同じですね。私も好きなんですよ。]食べ終わって、すこし寛いでいると犬が短く吠えた。重要人物がやってくる知らせである。現れたのは京都で知られている有名な財閥の会長で数寄者である。昨年もたくさん買っていただいた。[どうも会長久しぶりです。]

[いろいろ派手にやっていますな。ロスチャコスにお茶碗一個を2億5千万円ですか。][あれはこちらの値付けが1億5千万円だったのですが、向こうの自分の目利きで1億円を上げて2億5千万円にしたのです。]
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[ははは、ほんとうのお金持ちは遊び心があっていい。ところで石のお茶碗を見せてくれるかな。][はい、これが最高のものです。]

[ほう、これは見事だ。よくこの素材が見つかったな。][天からの贈り物だと思います。][ふ~む、倍の価値はありそうだぞ一つもらっておこうか、それと奥高麗もいいな。あなたのオリジナルの益子乾山もやっと私が買うレベルになってきた。浜田が開発した釉薬に琳派の文様がうまく融合してきた。いい感じになったぞ。

遠州さんのもいいよ、栄胡録の逸品でなかなかこれだけのものはあまりないな。御本半使茶碗は本来本歌に御本が勝てないことになっているが、これはこれでいい感じだな。それでは石のお茶碗7,500万円、奥高麗7,500万円、オリジナル3,500万円×3=10,500万円、栄胡録7,500万円、御本半使茶碗5,000万円で合計3億8千万円+消費税3,800万円=4億1千8百万円。こんなもんでいいかな。][はい、ありがとうございます。]
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秘書がすぐに振り込みを完了した。秘書は四角の革製のキャリーバッグに大事そうにすべて収納した。[おかげさんでいい買い物をしたよ、またよろしくな。][たくさんお買い上げをいただきまして、ありがとうございました。]

サスケ、[よしやった~、王様やりましたよ。すごい売り上げです。][すずさん帰りに天然ウナギでも食べていこうか。どっかにいいとこあるかな。][鴨川沿いに看板だけ見たことがあります。たしか天然鰻と書いてあったと思います。][よ~し、そこに行こう。][え~、生まれて初めてです天然鰻なんて。][俺も食べたことないうまそうだな。][携帯で予約しておきます。]

2日目はみんな大満足で終了して3日目も順調に売り上げを伸ばし2回目の京都料飲組合招待販売会を無事に終了した。次の日は予定通りに仁和寺住職依頼の5体の仏像の製作にかかった。国宝と同じレベルにしたので品質についての苦情はないものと思われる。
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仏像5体を収めるために王様とサスケにすずそれに犬2匹が京都の仁徳寺にやってきた。落成式のために五色幕が張り巡らされ、本堂の中に仏像が並んでいた。担当者がすぐに住職を呼んできた。

[約束を守ってくださり、まことに申し訳ない。して仏像はどこに持ってきましたか。]と不安そうなまなざしで一同を見渡した。[大丈夫です。心配には及びません。]とニヤリと笑った。[それよりもどこに仏像を置きますか。置き場所と種類をおっしゃってください。][ここに千手観音菩薩。]と位置を示した直後にいつの間にか指定した仏像が収まっていた。居並ぶ関係者は唖然として言葉も出ない。[次の仏像の名前と場所を教えてください。]

このようにして5体を無事に届けることができた。出来上がりはもちろん国宝並みであるから出色である。関係者、[ほ~、これほどのものは他にあまりありませんよ。さすがにダライラマ法王が、あまたの仏師の中から選抜しただけあります。]

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