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江戸時代の豪商、紀伊国屋文左衛門に入り込む
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住職は大きくうなずいて、深々と感謝のお辞儀をした。[どうも助けていただいて、ありがとうございました。経理で支払の用意をしてありますので、そちらでお願いいたします。それでは儀式の準備中ですので失礼をします。]と慌ただしく行ってしまった。
[さあ、手続きをして帰りましょうか。すずさん処理が終わったら、みんなへのお土産にお菓子を買っていきましょう。]お寺近くの老舗の店で、多めに買いそろえて持ち帰った。
いつものバードサンクチュアリーの大型水槽の前で、ター坊によっちゃんが前と同じように職人町の乱暴者3人の前で、偉そうに講釈をたれている。ター坊、[飼い方のポイントは4つある。1に水、2に餌、3に病気、あとは愛情である。ボクとよっちゃんはこの事を完璧にやっているから、飼育の難しいランチュウと東錦の幼魚をもう無事に3週間も飼っている。]2人は大きくうなずいて[これから師匠と呼んでもよろしいでしょうか。]
442
[ま~な、そう呼びたいならそれでいいよ。][それでいいジョー。][今日はどうもありがとうございました。][ああ。][ああだジョー。]2人とも得意になってふんぞり返っている。
[あなたたち、金魚の飼育は難しいのよ。明日のこともわからないのに生意気なこと言っちゃっていいの。][親分もぼくたちのこと師匠と呼んだ方がいいですよ。][そうだジョー。]ボコボコ、それぞれにゲンコツがとんできた。[前みたいに全部死んじゃって、死にそうな顔をするかもしれないのよ。]
夏見の明日香陶芸店ビルの3階会議室である。いつもの企画スタッフが参加しているが、北斎30点の浮世絵、広重に写楽が各20点にお栄10点の合計80点の浮世絵とお栄を除いた3人との共同制作の陶器が集まってきた。初めての浮世絵師4人との合同展示会に向けての対策である。花器はネット販売が主なので2階に3分の1ぐらいに詰めておくようにし、空いたところで展示販売をすることにした。
443
期間は3週間で値段は浮世絵が北斎15万円、広重と写楽各13万円、お栄11万円。陶器は北斎の70cm大壺各3億5千万円を7点、大皿を5点各2億5千万円。写楽に広重の70cm大壺2億5千万円各5点、大皿1億7千万円各5点。抹茶茶碗は北斎5千万円5個、写楽に広重は3千5百万円各5個に決まった。
[こんな感じですけど意見をどうぞ。]サスケ、[浮世絵が相場と比べるとずいぶん安価ですが。][その通りだが販売枚数を決めていないので、いくらでも売れる。][なるほど。]すず、[陶器は一点物なので同じく安く感じられます。]サスケ、[浮世絵と同じ色調で一点物。これは人気でそうだよな。]
遠州、[お茶碗はいずれも面白いですよ。][北斎に広重は外国でも人気なので、外国のマスコミにも連絡をしてあります。もしかしたらそちらから来店するかもしれないし、たぶん例の大富豪も見逃さないだろうな。それではみんなで会場作りを手伝ってください。]
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展示会のオープンを明日に控え、内外のマスコミと評論家を呼んで先行閲覧会をこれから催すことになっている。
すず[これは本物の北斎や広重ですので、世界中から関係者が押し寄せてくるんじゃあないんですか。美術館とかコレクターに頼まれた業者とか面白くなりそうです。それに日本趣味の富豪は多いですから。]
サスケ[展示期間が3週間もあるので、焦らずにゆっくりでいいんじゃあないんでしょうか。私の予想ですと陶芸品は2週間以内で勝負はつくと思います。]すず、[国内だけですと厳しい値付けですが、世界に発信していますので充分に完売できると思いますよ。]
はやくも英国大使館員が、うわさを聞きつけて調査にやってきた。女王の依頼ということだが、納得して帰っていった。マスコミ各社の評判も上々である。さて今日はオープン初日である。昨日のマスコミの取材でも北斎と広重などの浮世絵有名作家新作の大量発表ということで興奮状態であったが、広くスペースを割いて情報を載せてくれたので電話での問い合わせが多い。
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卸希望の業者も内外からかなり多く来所されているが、英語は志野とすずが普通に話せるので心強い。某大手自動会社の総務担当3人がお見えになった。本社と支店のあちらこちらに和のテーマで飾るということで、海外を含めて合うようなのを探しに来たと言って熱心に見ている。
[壺3点と大皿3点それに浮世絵を15点買おうと思っているのだけど、稟議決裁を取らないと金が出ないのです。社長命令だから間違いないと思うけども他の人の認めももらいますので、明後日まで取っておいてほしいのですがよろしいでしょうか。]
[それでは請求書を書きますのでお待ちください。入金を確認しましたら、担当者が直接にお持ちいたします。][え、業者ではなくここの担当者が来るの。][高額で壊れ物ですので、直接うかがいます。][それではよろしく。][ありがとうございました。]北斎、広重、写楽の大壺に大皿を各1点ずつに浮世絵を15点で売上合計約14億4千万円になる。
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サスケ、[さすが世界のT社ですね。スケールが違う。][まあ、社長命令だから壊れないだろう。][こういうのやっていたら、普及品が売れなくなっちゃいますね。][それはだめだよ。うちは普及品で儲けさせてもらっている。おろそかにしてはいけないな。][そうですね、気をつけます。]
高級車の運転手付きで華道海の坊の次女が降り立った。最近の婦人雑誌にイケてる女性のようによく出ている。[責任者はいますの。][ど、ど、どちらさんで。[海の坊です。][ど、ど、どうぞ、中にいますんで。]
小政が人物を確認して、すばやく応接コーナーに案内した。[私が責任者のサンリンポチェと申します。][あなたでしたの。よく新聞や雑誌に出ていますね。][恐れ入ります。して何かご用件がおありのようですが。]
[私どもの重代の花器と同じようなのが、ネットで販売されているようなので、確認しに来ました。]
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[弊店はいろいろな参考資料を見たりして、アイデアを組みわせながらデザインを決めているのもございます。たまたま似たのだと思いますよ。][ケチを付けに来たのではなく、よくできているので感心をしているのです。何なら取引しますか、需要は多いですよ。]
[それは天下の海の坊さんですから名誉なことですので、ぜひお願いいたします。][それでは後で担当者を来させますね。実はここに来たのはそれがメインではなく、お皿を買いに来たのです。見せていただけますか。]
[どうぞ、どうぞこちらです。][まあ、素敵ですね。これは一点物ですので価値がありますよ。これとこれとこれ3枚くださいな。][消費税込みで、6億4千9百万円です。]秘書が振り込みを済ませ、荷物を大事そうに持った。[それでは担当を越させますね。]
[どうもありがとうございました。]
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すず[これじゃあすぐに売り切れになっちゃいますよ。][なくなっちゃったら作っちゃおうか、頭にインプットしてあるんで、少しだけ絵柄を変えることはできるさ。]サスケ[それはよく考えた方がいいです。すぐに売れちゃうから、ありがたみもあるんです。]
[それもそうだな。2つ大きいのをやったのでちょっと休憩するわ。食堂でお茶を飲んでくるのでやっててね。][はい、どうぞ。][これで海の坊の花器が絡んでくると忙しくなるね。][そうですね。人員を増やさなければいけなくなります。]
オープンから7日が経過し、北斎や広重の陶芸品は3分の2が売約済みになっている。売れた作品のところには実物大の写真が置かれるとともに、販売金額も表示されている。売約済みの作品の場合は予約も受け付けることになった。また、展示中の陶芸品であるが、あと1週間で完売見込みである。浮世絵は卸希望の業者が多く一般販売数を超えている。
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白人の老夫婦と従者がタクシーから降り立った。従者は鞄を抱え外で待機している。老夫婦は展示会場を詳細に見ながらうなずきあっている。[責任者はどなたですか。]ゴン太が頭で足を小突いているが、重要人物の合図である。[いらっしゃいませ、責任者のサンリンポチェと申します。]
[実は抹茶茶碗を妻に買ってやりたいのですが、老後の貯えの中からやっと50万円しか出せません。すみませんがどんなものでもかまいません、選んでいただけませんでしょうか。]ゴン太が頭ではなく前足で足をトントンと叩いている。かなりの大物のようだ。[わかりました。こちらで少しお待ちください。]小政に、[遠州さんにお茶を2つ頼んでください。][へぃ、承知しました。]
[これを見立てましたがいかがですか。]2人で高台裏からじっくりと見ていたが、お互いに笑みがこぼれている。そこに遠州がお茶を運んできた。[まあ、一服してください。]
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[これはおいしいですし、貧乏人の老夫婦にはもったいないサービスですよ。それとこのお茶碗はとても50万円には見えませんが。][はい、そのとおりですが、せっかく遠いところからはるばるとやってこられたのです。このくらいはかまいませんよ。]
[さきほど遠州さんとおっしゃっていましたが、今持ってきたのが遠州さんですか。][はいそうです。]外に向かって手をあげると、従者がすかさずに鞄を持ってやってきた。[実はお願いがあって来たのです。私は米国で投資会社をやっています、バフ〇ットと申します。][バフ〇ットさんと申しますと、有名な富豪の方ですか。][有名かどうかわかりませんが、それなりに資産は所有しています。]
おもむろに従者がかばんを開け書類を取り出した。[お願いというのは妻のためにこのような美術館を建てまして、まかせようとおもうのですが妻も私も日本文化が好きでして、その関係のものを揃えようと思っていました。]
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[そんな時にこちらの北斎さんなどの展示即売会があることを聞き、早速やってきた次第です。この美術館に展示するものをあなたと茶道で有名な遠州さんにお願いしたいのです。もちろん展示するものの他に、その数倍の収容物が必要だということも心得ております。収容期間は1年で予算は5,000億円です。予算を超えても1兆円ぐらいでしたら用意できます。それだけでは当然に不安だと思いますので手付金として500億円を預けておきます。引き受けていただけますか。]
[すみませんが、話がとても大きくて重要なのでミーティングが必要です。少しお待ちいただけますか。][けっこうですよ。ゆっくり打ち合わせをしてください。私どもは店内を見て回っていますので。]
[面白い案件が出てきた。そばで聞いていて内容はわかっていると思うので意見を言ってくれるかな。]サスケ、[これはものすごく大きな話ですね。全力で受けるべきです。]
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志野、[額は大きいですが、超能力を使ってしょっちゅう先方に行って打ち合わせができるので充分に可能ですよ。]遠州、[これはまた面白いですね。一生に一度あるかどうかの話です。断る理由は何もありません。私も興味を持ってこのミッションに協力をします。]
すず、[でも収める作品の調達がたいへんです。分身してチームを作れば可能ですかね。]
サスケ、[手付金を500億円預かるんですから、やってみるべきです。][じゃあやることにするか。][異議な~し。]
[お待たせをいたしました。それではありがたく承ります。][それはよかつた。私は投資家なのでふ、ふ、ふ、あなたに実は投資をしたいのです。ですから3分の1の1,500億円ぐらいはあなたの作品にしてください。それとさきほどお持ちいただいたお茶碗は50万円でいいとおっしゃっていただいたのですが、2個1億円で購入いたします。手付金と合わせて501億1千万円を振り込みます。]従者が素早く振り込みの処理を完了した。
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[これはどうもありがとうございます。私達は超能力でそちらの方に気軽に訪問することができます。打ち合わせにうかがいますので、よろしくお願いします。][ではよろしく頼みますよ。]みんなで最敬礼をして送り出した。
すず、[王様、食堂にエビ天ぷら3匹載せ蕎麦を用意してあります。][やっぱりエビ天そばは後利益があるな。]ワンワンワン。[あ、そうだエビの尾っぽは犬用だな。]ワンワンワン。
展示オープンは2週間が経過したが、残りあと1週間である。浮世絵は卸も入っているので800枚程が売れているが、陶芸品は北斎の大皿2億5千万円が2点残っている。他は全部が売約済みである。サスケ、[今日あたりでそろそろ終了ですかね。]すず、[でも普通の人が買えるもではありませんからね、残るときは残っちゃいますよ。]と、その時、オープン前日に見えていた英国大使館員がやってきた。
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[まだ残っているといいのですが。]小政、[何をお探しで。][北斎の大皿よ、まだありますか。][はい、こちらへどうぞ。][あ~、よかった。この2皿いただきますわ。]小政、[消費税を入れまして、5億5千万円です。][銀行渡り小切手を用意しましたがよろしいですか。]額面通りのものを、ハンドバッグより取り出した。
[それでは領収書を作りますのでお待ちください。][これで女王陛下も安心をされると思います。][お待たせいたしましたが、領収書とお品物です。どうもありがとうございました。]
経過を見ていた王様、[よ~し、完売したぞ。夕食は特上寿司食べ放題だすずさん、料理長に行ってください。][はいわかりました。]みんなから拍手が起きた。
[いや~、やりましたね。][今日はさっき言っといたけど特上寿司食べ放題に、なんと350年物の泡盛を開けるぞ、琉球の王様が飲んでいたものと同じものだ。][それは楽しみです。]
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王宮の中華専用食堂に北斎・広重・写楽・お栄などの浮世絵師の面々に子供達3人と王様などのスタッフなどで10人が円卓を囲んでいる。[まあ、好きなように飲んで食べてください。]メイドがそれぞれに老酒を注いでいる。すでに前菜の三併盤は置かれていて、それぞれが取り皿に盛っている。
[みなさんのおかげで共同で作った陶芸品は完売し、浮世絵もたくさん売れました。お礼を言います。料理はどんどん出てきますので、好きにとってください。][親分、僕達も食べていいんですか。][食べたいジョー。]メイドが次に置かれた腰果鶏丁と前菜を取った小皿を2皿づつ子供たちの前に揃えた。[わ~ぃ、おいしそうだジョー。]
[皆様もどうぞ、お取りになってください。]北斎、[ずいぶんと気さくなお殿様ですね。呼ばれたのはごちそうをするだけではないと思いますが、どうぞ気軽にお話をしてください。]
続いてイシモチの甘辛煮も出てきた。
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[それでは申し上げます。どうぞ、食べて飲みながら聞いてください。実は皆様にここの仕事はこのままに進めてもらって、もう一度江戸にもどって仕事をしていただきたいのです。]
写楽、[え~っ、また貧乏長屋に戻るのですか。][いえいえ、昔のスタイルで流れている歴史はそのままで、それとは別に真に江戸のど真ん中で、その当時の雰囲気そのままに仕事をしてほしいのです。]広重、[具体的にどういうことでしょうか。]
[はい、紀伊国屋文左衛門という有名な豪商がいますが、その豪商に私の魂が乗り移ります。そしてここにいる10人で行くのです。私が文左衛門になっていますので、決して嫌な思いはさせません。まず私とこのサスケとすずの3人で行って皆さんをお迎えできるようにします。準備ができましたら、もう一人の私と残っている子供たちを含めた全員で一緒に紀伊国屋邸に入ります。皆さん分身で行きますんで、ここの生活はこのまま残ります。
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したがって当然に今の生活に戻ることができます。]お栄、[紀伊国屋さんの客人扱いでしたらお金に不自由はしないし、何か問題が起きても、お金で解決ができますのでとても面白いと思います。貧乏な暮らししかしていないので、贅沢なこともしてみたいです。新しい発想の絵も画けるようになると思いますので興味深いですね。]
写楽、[お金に心配なく一流どころの芝居を毎日見れるのはとても絵を画くのに役立ちます。][絵の題材は自由です。売らんがための考えは一切必要ありません。好きなものをおかきください。
それと子供たちの役割は私たち4人のスタッフの間にいて雑用係をやってもらいます。その方が事がスムーズにいくと思ったからです。]北京ダッグが出てきた。メイド[これは皮にネギの細切りを添えて、専用のミソで食べてください。][親分これはおいしいですね。][おいしいジョー。][王様、そこで金魚を飼えますか。][飼いたいジョー。]
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[そうだな、お金に不自由はしていないので飼えるだろうよ。][わ~ぃ、おもしろいジョー。][それから犬2匹も一緒に行くから。]タエ、[それはよいことです。ゴン太にユリは頼りになりますから。]
[王様、よく考えてみますと。紀伊国屋さんでなじんだら、北斎さん一行はそのままにして引き上げた方がよろしいと思います。もちろん文左衛門の魂に入った王様はそのままですが。][そうだな、そこにいてもすることがあまりなくなるから、それだったら王宮で美術館に収めるものを進めていた方がいいかな。]タエ、[そうしますと、すぐに帰ってきちゃうんですか。][ボクはおまんじゅうをたくさん食べたいジョー。][1週間から10日間ぐらいかな。]
北斎、[王様が文左衛門になっているんでしたら、それで大丈夫ですよ。全く題ありません。][親分、1週間でも面白いですよ。子供のお大臣遊びができるじゃあないですか。][何言ってるの。遊びに行くわけじゃあないのよ。]
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お栄、[おいしいところたくさん知っているから、案内してあげるわね。][ボク酒まんとかお団子も食べたいな。][食べたいジョー。]ここは江戸の紀伊国屋文左衛門の屋敷である。魂の入り込んだ文左衛門とサスケにすずが昼食をとっている。
サスケ、[王様、えらい贅沢ですね。刺身の種類だけで8種類もありますよ。毎日こんなもん食べているんですかね。][食い物にはずいぶんこだわっているね、成り上がり者はまずこれからだろう。]すず、[魂だけ入り込んで、たいへんな事はありませんか。]
[いや、まったく大丈夫だ。二面性を持っているので、文左衛門の時にはそれに任せればいいし、今の状態も普通にできている。まずこれを渡しておこうか。]切り餅を2つずつ、一包み25両であるから50両ずつが渡された。[ひえ~、こんなにいただいちゃってよろしいんですか。][いろんなものを買えますね。これは助かりますよ。]
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[サスケもすずも武道の達人だが、暗くなると危険なので早めに帰るようにした方がいい。それと道案内の小物を付けるので、連れて行きなさい。]
[サスケさん、とりあえず案内を連れて二人で町中を歩いてみましょうか。]いろんな商店が並んでいる。すずはやっぱり女の子である。呉服店に入りたいらしい。[いいよ入っても。仕立ててもらうんだったら、早めに出来上がりをしてもらうように確認したほうがいいね。]明日香国の門前町は江戸文化保存地区なので、普通に着物を着ているのでまったく違和感がない。すずが着ているレベルの布地を3種類出してきた。[仕立てはどのくらいの日数がかかるの。][7日あればできます。]
[3着買ったら安くなるかしら。][そうですね、1着が3分ですので9分ですが、1分を引きまして8分になりますのでちょうど2両です。][私は紀伊国屋でこんななりをしていますが、客人扱いですずと申します。支払いは届いた時でよろしいですか。]
住職は大きくうなずいて、深々と感謝のお辞儀をした。[どうも助けていただいて、ありがとうございました。経理で支払の用意をしてありますので、そちらでお願いいたします。それでは儀式の準備中ですので失礼をします。]と慌ただしく行ってしまった。
[さあ、手続きをして帰りましょうか。すずさん処理が終わったら、みんなへのお土産にお菓子を買っていきましょう。]お寺近くの老舗の店で、多めに買いそろえて持ち帰った。
いつものバードサンクチュアリーの大型水槽の前で、ター坊によっちゃんが前と同じように職人町の乱暴者3人の前で、偉そうに講釈をたれている。ター坊、[飼い方のポイントは4つある。1に水、2に餌、3に病気、あとは愛情である。ボクとよっちゃんはこの事を完璧にやっているから、飼育の難しいランチュウと東錦の幼魚をもう無事に3週間も飼っている。]2人は大きくうなずいて[これから師匠と呼んでもよろしいでしょうか。]
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[ま~な、そう呼びたいならそれでいいよ。][それでいいジョー。][今日はどうもありがとうございました。][ああ。][ああだジョー。]2人とも得意になってふんぞり返っている。
[あなたたち、金魚の飼育は難しいのよ。明日のこともわからないのに生意気なこと言っちゃっていいの。][親分もぼくたちのこと師匠と呼んだ方がいいですよ。][そうだジョー。]ボコボコ、それぞれにゲンコツがとんできた。[前みたいに全部死んじゃって、死にそうな顔をするかもしれないのよ。]
夏見の明日香陶芸店ビルの3階会議室である。いつもの企画スタッフが参加しているが、北斎30点の浮世絵、広重に写楽が各20点にお栄10点の合計80点の浮世絵とお栄を除いた3人との共同制作の陶器が集まってきた。初めての浮世絵師4人との合同展示会に向けての対策である。花器はネット販売が主なので2階に3分の1ぐらいに詰めておくようにし、空いたところで展示販売をすることにした。
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期間は3週間で値段は浮世絵が北斎15万円、広重と写楽各13万円、お栄11万円。陶器は北斎の70cm大壺各3億5千万円を7点、大皿を5点各2億5千万円。写楽に広重の70cm大壺2億5千万円各5点、大皿1億7千万円各5点。抹茶茶碗は北斎5千万円5個、写楽に広重は3千5百万円各5個に決まった。
[こんな感じですけど意見をどうぞ。]サスケ、[浮世絵が相場と比べるとずいぶん安価ですが。][その通りだが販売枚数を決めていないので、いくらでも売れる。][なるほど。]すず、[陶器は一点物なので同じく安く感じられます。]サスケ、[浮世絵と同じ色調で一点物。これは人気でそうだよな。]
遠州、[お茶碗はいずれも面白いですよ。][北斎に広重は外国でも人気なので、外国のマスコミにも連絡をしてあります。もしかしたらそちらから来店するかもしれないし、たぶん例の大富豪も見逃さないだろうな。それではみんなで会場作りを手伝ってください。]
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展示会のオープンを明日に控え、内外のマスコミと評論家を呼んで先行閲覧会をこれから催すことになっている。
すず[これは本物の北斎や広重ですので、世界中から関係者が押し寄せてくるんじゃあないんですか。美術館とかコレクターに頼まれた業者とか面白くなりそうです。それに日本趣味の富豪は多いですから。]
サスケ[展示期間が3週間もあるので、焦らずにゆっくりでいいんじゃあないんでしょうか。私の予想ですと陶芸品は2週間以内で勝負はつくと思います。]すず、[国内だけですと厳しい値付けですが、世界に発信していますので充分に完売できると思いますよ。]
はやくも英国大使館員が、うわさを聞きつけて調査にやってきた。女王の依頼ということだが、納得して帰っていった。マスコミ各社の評判も上々である。さて今日はオープン初日である。昨日のマスコミの取材でも北斎と広重などの浮世絵有名作家新作の大量発表ということで興奮状態であったが、広くスペースを割いて情報を載せてくれたので電話での問い合わせが多い。
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卸希望の業者も内外からかなり多く来所されているが、英語は志野とすずが普通に話せるので心強い。某大手自動会社の総務担当3人がお見えになった。本社と支店のあちらこちらに和のテーマで飾るということで、海外を含めて合うようなのを探しに来たと言って熱心に見ている。
[壺3点と大皿3点それに浮世絵を15点買おうと思っているのだけど、稟議決裁を取らないと金が出ないのです。社長命令だから間違いないと思うけども他の人の認めももらいますので、明後日まで取っておいてほしいのですがよろしいでしょうか。]
[それでは請求書を書きますのでお待ちください。入金を確認しましたら、担当者が直接にお持ちいたします。][え、業者ではなくここの担当者が来るの。][高額で壊れ物ですので、直接うかがいます。][それではよろしく。][ありがとうございました。]北斎、広重、写楽の大壺に大皿を各1点ずつに浮世絵を15点で売上合計約14億4千万円になる。
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サスケ、[さすが世界のT社ですね。スケールが違う。][まあ、社長命令だから壊れないだろう。][こういうのやっていたら、普及品が売れなくなっちゃいますね。][それはだめだよ。うちは普及品で儲けさせてもらっている。おろそかにしてはいけないな。][そうですね、気をつけます。]
高級車の運転手付きで華道海の坊の次女が降り立った。最近の婦人雑誌にイケてる女性のようによく出ている。[責任者はいますの。][ど、ど、どちらさんで。[海の坊です。][ど、ど、どうぞ、中にいますんで。]
小政が人物を確認して、すばやく応接コーナーに案内した。[私が責任者のサンリンポチェと申します。][あなたでしたの。よく新聞や雑誌に出ていますね。][恐れ入ります。して何かご用件がおありのようですが。]
[私どもの重代の花器と同じようなのが、ネットで販売されているようなので、確認しに来ました。]
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[弊店はいろいろな参考資料を見たりして、アイデアを組みわせながらデザインを決めているのもございます。たまたま似たのだと思いますよ。][ケチを付けに来たのではなく、よくできているので感心をしているのです。何なら取引しますか、需要は多いですよ。]
[それは天下の海の坊さんですから名誉なことですので、ぜひお願いいたします。][それでは後で担当者を来させますね。実はここに来たのはそれがメインではなく、お皿を買いに来たのです。見せていただけますか。]
[どうぞ、どうぞこちらです。][まあ、素敵ですね。これは一点物ですので価値がありますよ。これとこれとこれ3枚くださいな。][消費税込みで、6億4千9百万円です。]秘書が振り込みを済ませ、荷物を大事そうに持った。[それでは担当を越させますね。]
[どうもありがとうございました。]
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すず[これじゃあすぐに売り切れになっちゃいますよ。][なくなっちゃったら作っちゃおうか、頭にインプットしてあるんで、少しだけ絵柄を変えることはできるさ。]サスケ[それはよく考えた方がいいです。すぐに売れちゃうから、ありがたみもあるんです。]
[それもそうだな。2つ大きいのをやったのでちょっと休憩するわ。食堂でお茶を飲んでくるのでやっててね。][はい、どうぞ。][これで海の坊の花器が絡んでくると忙しくなるね。][そうですね。人員を増やさなければいけなくなります。]
オープンから7日が経過し、北斎や広重の陶芸品は3分の2が売約済みになっている。売れた作品のところには実物大の写真が置かれるとともに、販売金額も表示されている。売約済みの作品の場合は予約も受け付けることになった。また、展示中の陶芸品であるが、あと1週間で完売見込みである。浮世絵は卸希望の業者が多く一般販売数を超えている。
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白人の老夫婦と従者がタクシーから降り立った。従者は鞄を抱え外で待機している。老夫婦は展示会場を詳細に見ながらうなずきあっている。[責任者はどなたですか。]ゴン太が頭で足を小突いているが、重要人物の合図である。[いらっしゃいませ、責任者のサンリンポチェと申します。]
[実は抹茶茶碗を妻に買ってやりたいのですが、老後の貯えの中からやっと50万円しか出せません。すみませんがどんなものでもかまいません、選んでいただけませんでしょうか。]ゴン太が頭ではなく前足で足をトントンと叩いている。かなりの大物のようだ。[わかりました。こちらで少しお待ちください。]小政に、[遠州さんにお茶を2つ頼んでください。][へぃ、承知しました。]
[これを見立てましたがいかがですか。]2人で高台裏からじっくりと見ていたが、お互いに笑みがこぼれている。そこに遠州がお茶を運んできた。[まあ、一服してください。]
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[これはおいしいですし、貧乏人の老夫婦にはもったいないサービスですよ。それとこのお茶碗はとても50万円には見えませんが。][はい、そのとおりですが、せっかく遠いところからはるばるとやってこられたのです。このくらいはかまいませんよ。]
[さきほど遠州さんとおっしゃっていましたが、今持ってきたのが遠州さんですか。][はいそうです。]外に向かって手をあげると、従者がすかさずに鞄を持ってやってきた。[実はお願いがあって来たのです。私は米国で投資会社をやっています、バフ〇ットと申します。][バフ〇ットさんと申しますと、有名な富豪の方ですか。][有名かどうかわかりませんが、それなりに資産は所有しています。]
おもむろに従者がかばんを開け書類を取り出した。[お願いというのは妻のためにこのような美術館を建てまして、まかせようとおもうのですが妻も私も日本文化が好きでして、その関係のものを揃えようと思っていました。]
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[そんな時にこちらの北斎さんなどの展示即売会があることを聞き、早速やってきた次第です。この美術館に展示するものをあなたと茶道で有名な遠州さんにお願いしたいのです。もちろん展示するものの他に、その数倍の収容物が必要だということも心得ております。収容期間は1年で予算は5,000億円です。予算を超えても1兆円ぐらいでしたら用意できます。それだけでは当然に不安だと思いますので手付金として500億円を預けておきます。引き受けていただけますか。]
[すみませんが、話がとても大きくて重要なのでミーティングが必要です。少しお待ちいただけますか。][けっこうですよ。ゆっくり打ち合わせをしてください。私どもは店内を見て回っていますので。]
[面白い案件が出てきた。そばで聞いていて内容はわかっていると思うので意見を言ってくれるかな。]サスケ、[これはものすごく大きな話ですね。全力で受けるべきです。]
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志野、[額は大きいですが、超能力を使ってしょっちゅう先方に行って打ち合わせができるので充分に可能ですよ。]遠州、[これはまた面白いですね。一生に一度あるかどうかの話です。断る理由は何もありません。私も興味を持ってこのミッションに協力をします。]
すず、[でも収める作品の調達がたいへんです。分身してチームを作れば可能ですかね。]
サスケ、[手付金を500億円預かるんですから、やってみるべきです。][じゃあやることにするか。][異議な~し。]
[お待たせをいたしました。それではありがたく承ります。][それはよかつた。私は投資家なのでふ、ふ、ふ、あなたに実は投資をしたいのです。ですから3分の1の1,500億円ぐらいはあなたの作品にしてください。それとさきほどお持ちいただいたお茶碗は50万円でいいとおっしゃっていただいたのですが、2個1億円で購入いたします。手付金と合わせて501億1千万円を振り込みます。]従者が素早く振り込みの処理を完了した。
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[これはどうもありがとうございます。私達は超能力でそちらの方に気軽に訪問することができます。打ち合わせにうかがいますので、よろしくお願いします。][ではよろしく頼みますよ。]みんなで最敬礼をして送り出した。
すず、[王様、食堂にエビ天ぷら3匹載せ蕎麦を用意してあります。][やっぱりエビ天そばは後利益があるな。]ワンワンワン。[あ、そうだエビの尾っぽは犬用だな。]ワンワンワン。
展示オープンは2週間が経過したが、残りあと1週間である。浮世絵は卸も入っているので800枚程が売れているが、陶芸品は北斎の大皿2億5千万円が2点残っている。他は全部が売約済みである。サスケ、[今日あたりでそろそろ終了ですかね。]すず、[でも普通の人が買えるもではありませんからね、残るときは残っちゃいますよ。]と、その時、オープン前日に見えていた英国大使館員がやってきた。
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[まだ残っているといいのですが。]小政、[何をお探しで。][北斎の大皿よ、まだありますか。][はい、こちらへどうぞ。][あ~、よかった。この2皿いただきますわ。]小政、[消費税を入れまして、5億5千万円です。][銀行渡り小切手を用意しましたがよろしいですか。]額面通りのものを、ハンドバッグより取り出した。
[それでは領収書を作りますのでお待ちください。][これで女王陛下も安心をされると思います。][お待たせいたしましたが、領収書とお品物です。どうもありがとうございました。]
経過を見ていた王様、[よ~し、完売したぞ。夕食は特上寿司食べ放題だすずさん、料理長に行ってください。][はいわかりました。]みんなから拍手が起きた。
[いや~、やりましたね。][今日はさっき言っといたけど特上寿司食べ放題に、なんと350年物の泡盛を開けるぞ、琉球の王様が飲んでいたものと同じものだ。][それは楽しみです。]
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王宮の中華専用食堂に北斎・広重・写楽・お栄などの浮世絵師の面々に子供達3人と王様などのスタッフなどで10人が円卓を囲んでいる。[まあ、好きなように飲んで食べてください。]メイドがそれぞれに老酒を注いでいる。すでに前菜の三併盤は置かれていて、それぞれが取り皿に盛っている。
[みなさんのおかげで共同で作った陶芸品は完売し、浮世絵もたくさん売れました。お礼を言います。料理はどんどん出てきますので、好きにとってください。][親分、僕達も食べていいんですか。][食べたいジョー。]メイドが次に置かれた腰果鶏丁と前菜を取った小皿を2皿づつ子供たちの前に揃えた。[わ~ぃ、おいしそうだジョー。]
[皆様もどうぞ、お取りになってください。]北斎、[ずいぶんと気さくなお殿様ですね。呼ばれたのはごちそうをするだけではないと思いますが、どうぞ気軽にお話をしてください。]
続いてイシモチの甘辛煮も出てきた。
456
[それでは申し上げます。どうぞ、食べて飲みながら聞いてください。実は皆様にここの仕事はこのままに進めてもらって、もう一度江戸にもどって仕事をしていただきたいのです。]
写楽、[え~っ、また貧乏長屋に戻るのですか。][いえいえ、昔のスタイルで流れている歴史はそのままで、それとは別に真に江戸のど真ん中で、その当時の雰囲気そのままに仕事をしてほしいのです。]広重、[具体的にどういうことでしょうか。]
[はい、紀伊国屋文左衛門という有名な豪商がいますが、その豪商に私の魂が乗り移ります。そしてここにいる10人で行くのです。私が文左衛門になっていますので、決して嫌な思いはさせません。まず私とこのサスケとすずの3人で行って皆さんをお迎えできるようにします。準備ができましたら、もう一人の私と残っている子供たちを含めた全員で一緒に紀伊国屋邸に入ります。皆さん分身で行きますんで、ここの生活はこのまま残ります。
457
したがって当然に今の生活に戻ることができます。]お栄、[紀伊国屋さんの客人扱いでしたらお金に不自由はしないし、何か問題が起きても、お金で解決ができますのでとても面白いと思います。貧乏な暮らししかしていないので、贅沢なこともしてみたいです。新しい発想の絵も画けるようになると思いますので興味深いですね。]
写楽、[お金に心配なく一流どころの芝居を毎日見れるのはとても絵を画くのに役立ちます。][絵の題材は自由です。売らんがための考えは一切必要ありません。好きなものをおかきください。
それと子供たちの役割は私たち4人のスタッフの間にいて雑用係をやってもらいます。その方が事がスムーズにいくと思ったからです。]北京ダッグが出てきた。メイド[これは皮にネギの細切りを添えて、専用のミソで食べてください。][親分これはおいしいですね。][おいしいジョー。][王様、そこで金魚を飼えますか。][飼いたいジョー。]
458
[そうだな、お金に不自由はしていないので飼えるだろうよ。][わ~ぃ、おもしろいジョー。][それから犬2匹も一緒に行くから。]タエ、[それはよいことです。ゴン太にユリは頼りになりますから。]
[王様、よく考えてみますと。紀伊国屋さんでなじんだら、北斎さん一行はそのままにして引き上げた方がよろしいと思います。もちろん文左衛門の魂に入った王様はそのままですが。][そうだな、そこにいてもすることがあまりなくなるから、それだったら王宮で美術館に収めるものを進めていた方がいいかな。]タエ、[そうしますと、すぐに帰ってきちゃうんですか。][ボクはおまんじゅうをたくさん食べたいジョー。][1週間から10日間ぐらいかな。]
北斎、[王様が文左衛門になっているんでしたら、それで大丈夫ですよ。全く題ありません。][親分、1週間でも面白いですよ。子供のお大臣遊びができるじゃあないですか。][何言ってるの。遊びに行くわけじゃあないのよ。]
459
お栄、[おいしいところたくさん知っているから、案内してあげるわね。][ボク酒まんとかお団子も食べたいな。][食べたいジョー。]ここは江戸の紀伊国屋文左衛門の屋敷である。魂の入り込んだ文左衛門とサスケにすずが昼食をとっている。
サスケ、[王様、えらい贅沢ですね。刺身の種類だけで8種類もありますよ。毎日こんなもん食べているんですかね。][食い物にはずいぶんこだわっているね、成り上がり者はまずこれからだろう。]すず、[魂だけ入り込んで、たいへんな事はありませんか。]
[いや、まったく大丈夫だ。二面性を持っているので、文左衛門の時にはそれに任せればいいし、今の状態も普通にできている。まずこれを渡しておこうか。]切り餅を2つずつ、一包み25両であるから50両ずつが渡された。[ひえ~、こんなにいただいちゃってよろしいんですか。][いろんなものを買えますね。これは助かりますよ。]
460
[サスケもすずも武道の達人だが、暗くなると危険なので早めに帰るようにした方がいい。それと道案内の小物を付けるので、連れて行きなさい。]
[サスケさん、とりあえず案内を連れて二人で町中を歩いてみましょうか。]いろんな商店が並んでいる。すずはやっぱり女の子である。呉服店に入りたいらしい。[いいよ入っても。仕立ててもらうんだったら、早めに出来上がりをしてもらうように確認したほうがいいね。]明日香国の門前町は江戸文化保存地区なので、普通に着物を着ているのでまったく違和感がない。すずが着ているレベルの布地を3種類出してきた。[仕立てはどのくらいの日数がかかるの。][7日あればできます。]
[3着買ったら安くなるかしら。][そうですね、1着が3分ですので9分ですが、1分を引きまして8分になりますのでちょうど2両です。][私は紀伊国屋でこんななりをしていますが、客人扱いですずと申します。支払いは届いた時でよろしいですか。]
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