上 下
18 / 174

第18回『肯定 黒歴史 家庭科』

しおりを挟む
YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第18回『肯定 黒歴史 家庭科』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約50分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓


↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/

~・~・~・~・~

10代。
それは体は大人になり始め、自分は何者かと問い、進路に逡巡する青い季節だ。
中学生になったばかりの僕もその例外ではなかった。

「早く席につきなさーい。」
教室のざわめきが耳に届いていてまるで教室に入る前から決めていたかのように、先生が扉を開けると同時に注意した。
先生の声に追い立てられるように友達とおしゃべりしていた生徒はそそくさと席についた。
楽しかった時間は終わった。
きっとこの瞬間までが日曜日だったのだろう。
月曜日の1時間目とともに、長い長い1週間の始まりだ。
この1週間に詰め込まれるものを持って僕らは大人になっていくのだろう。
「前回の授業でも言った通り、この国では21世紀の半ばまでは学校にはという課程がありました。」
前回も言っていた家庭と課程をかけたダジャレに数人の生徒がくすくすと笑った。
「これは料理や裁縫などを全て家庭の中で行うもの、つまり仕事とみなしていない考え方です。このような差別的な見方がほんの50年ほど前までは当り前のようにあったのです。そうですね、料理も裁縫も立派な仕事です。」
確かに現在僕たちは毎日当り前のように料理も裁縫も業者に委託している。
物心ついたときからそうだったのであまり考えたこともなかったが、僕たちの生活になくてはならない仕事だ。
「そしてこのという授業があったことを学校で取り上げられるようになったのもここ数十年間になってからなのです。先生が子どものころはという授業が存在したことは学校で習いませんでした。」
ノートをとっていた女子が興味深そうに顔を上げた。
その後も先生はなぜという授業が遠ざけられたのか、そして遠ざけるために国はどのようなことをしてきたのかを説明した。
僕のペン回しの軌道は机に広げられた真っ白いノートの上でよく映えた。
このペンのように時計の秒針も早く進んでほしかった。
歴史を勉強するということはすることでも否定することでもないはずだと僕は思っている。
事実を淡々と教えてくれればいい。
だから歴史の授業は好きだ。
だがこの時間はなんだか誰かを攻撃する意志に満ちている気がする。
休み時間にいじめを見たときと同じ、ざわざわとする気分だ。
それが僕のクラスでは月曜日の1時間目に来るだ。
時間割表を見ると2時間目はピンク国語でその次は赤体育が続く。
こんなことを教えていったい大人たちは僕たちにどんな人間になってほしいのだろう。
その答えがわからないまま、今日も僕は教室の片隅でペンを回していた。
しおりを挟む

処理中です...