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第47回『パンケーキ 宗教戦争 近視』

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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第47回『パンケーキ 宗教戦争 近視』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約55分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=de8dcKN34rY

↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/

~・~・~・~・~

人には宗派というものがある。
それは幼いころより刻み込まれたものであり、あとから強制的に変えることは容易ではない。
そして困ったことに人は自分が信じる宗派を絶対的に正しいものだという考えに固執し、他者にも勧誘し共感を求めてしまう。
だから異なる宗派と宗派が出会うとき、両者はいがみ合い、争ってしまう。
それが歴史上数多く繰り返されてきた宗教戦争である。
我が家でもはよく起こる。
というよりもを前にして私と夫はの真っ最中である。

「練乳をかけて食べたこともないくせにわかった風なこと言わないでよ。」
「別に普通にバターとメイプルシロップでいいだろ。」
私が練乳のボトルを持ってにじり寄るも、夫はバターとメイプルシロップを冷蔵庫にしまう気配がない。
バターは早く冷蔵庫にしまわないと溶けちまうだろ!
ここからも夫はバターとメイプルシロップをやめる気はないということがありありとわかる。
すちゃっ。
私は練乳のボトルを横にして胸の前にかざした。
今にも発射しますよという構えだ。
「とにかく一度だけっ。一度だけでいいから食べてみて!」
「昔ジャムで食べたことあるからいいって。」
「ジャムと練乳は違うやんけ!」
「その一回ではメイプルシロップで充分だと思ったの。」
夫は私の相手をするのに面倒そうになってきたのがわかった。
仕方ない。
私だっていい歳をした大人だ。
ここは天岩戸作戦だ。
ぶりゅりゅっ。
私は速攻でに練乳をかけた。
そしてすかさずたっぷりと練乳のかかったを口に運んだ。
「ん-、おいしー! やっぱには練乳だなー!」
どうだ、私の見事な食レポ。
とたんに練乳をかけたて食べたくなっただr夫はバターのフタを開けようとしていた。
「んあー、待ってー、お願いだからこれかけてー!」
私はとっさにボトルを力いっぱい差し出した。
しかしボトルはフタが開いたままだったため、辺り一面に練乳が飛び散ってしまった。
テーブルや床はもちろん、私と夫まで練乳まみれになってしまった。
練乳はメガネにもかかっていた。
メガネをはずして、の夫は少しぎこちない足取りで台所にふきんを取りに行った。

二人で練乳を拭きながら私ははしゃぎすぎてしまったことを謝った。
「それだけは楽しいメニューってことだな。次は俺も練乳にしてみるよ。」
子どものように食べ物を無駄にしてしまった私を夫は怒りもせずにむしろこちらに歩み寄ってくれた。
私は夫の器の広さに胸がいっぱいになった。
だがそれでも私には後悔の念が消えなかった。
「いいえ、私は本当に取り返しのつかないことをしてしまったわ。」
「練乳はまた買ってくればいいし、部屋はこうして掃除すれば元通りさ。」
「ううん、違うの。私実はメガネフェチなの。なのに私が練乳をかけてしまったばかりにあなたは今メガネをはずしてしまって全然萌えない。」
すると夫は私の手を握ってきた。
「いいや、君は素晴らしいことをしてくれたよ。なんせ今俺は頭から白い練乳をかかぶっている君にむちゃくちゃ萌えてるからね。」

人には宗派というものがある。
概して人の宗派はわかりがたいものだ。
本日私はがなくならない一因を見た気がした。

~・~・~・~・~

~感想~
宗教戦争は陰惨な話にしたくなかったので、パンケーキには何をかけるかという話にしました。
当初はメガネフェチというオチで書いていましたが、途中で夫のフェチも加えました。
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