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第89回『老いぼれ ごぼう抜き 日記』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第89回『老いぼれ ごぼう抜き 日記』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約時間分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=EOJy_df8MQY
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
金子はマラソンに命を懸けていた。
学生時代は陸上部ではなくバレーボール部に所属していたので、マラソンには学校の行事以外には縁がなかった。
だが社会人になり仕事に追われ、夜はお酒を飲んで酩酊して朝を迎えるような日を繰り返しているうちに、自分のお腹周りが気になりだした。
そこでダイエットのために始めたのが早朝のジョギングだった。
始めは1キロ走るのもつらかった。
仕事でなまり、日常的に睡眠時間が足りてない体は悲鳴を上げた。
肩で息をしながらもこれでは仕事に支障をきたすのでもうやめてしまおうかとも思ったが、ジョギングをした日はむしろ活動的に仕事ができることに気付いてからジョギングの魅力に取りつかれるのに時間はかからなかった。
朝30分のジョギングが彼の日課となった。
新しいシューズやウェアも買った。
また、タイムや距離を記録するジョギング用の日記も取り始めた。
その生活が1年も続くと、金子は自分の体力にも自信が持てるようになってきた。
そこで金子はマラソン大会に出場することにした。
さっそくインターネットで参加できる大会を検索すると、隣りの市で開催されるハーフマラソン大会を見つけた。
はっはっはっ。
金子は走っていた。
金子にとってはこれが初めてのマラソン大会だったが、周りには何度も出場してると思しきランナーたちが大勢いた。
運動部に所属しているらしい高校生もいれば、細身ながらもしっかりと筋肉のついているお年寄りもいた。
一人、また一人と金子は抜かされた。
だが、マラソンが自分との戦いであることを金子も忘れていなかった。
大切なのは自分のペースを守ることだ。
この大会に向けて金子はタイムを計りながらハーフを走るためのペース作りをしてきた。
まずは完走して自分のタイムを知ることができれば十分であり、初めての大会なので彼には自己ベストというものはまだ持っていない。
着順も気にしてはいけない。
どうせ上位に入賞するのは本格的に陸上競技やスポーツをやっている人たちなのだ。
むしろ金子は緊張しないで走れていることが嬉しかった。
大会の運営はしっかりしておりエントリーはスムーズだったし、チェックポイントでの係員からの応援は心強かった。
何度も電車で通ったことのある町だったが、遠景に見える山並みの美しさにも気付けた。
金子はマラソンの趣味が長く続きそうだなと思った。
そのとき、金子の体に不思議なくらい力が湧いてきた。
まるで自分の体が輝いてる感じがした。
いてもたってもいられなくなった金子はペースを上げた。
それはペースを上げたというものではなかった。
まわりから見るとほとんど全力疾走のスピードだった。
だが、金子は全く疲れを感じなかった。
それどころか走っても走ってもまだまだ走れそうな気がした。
金子は次々とランナーたちを追い抜いた。
抜かれたランナーたちはなぜそんなスピードで走るのかと困惑していた。
係員も自分の前を風のように走る金子の姿に目を丸くした。
だが金子は止まらなかった。
止まる必要を感じていなかった。
とうとう金子はトップのランナーを抜いた。
ゴールが見えてきた。
金子は15キロほどの距離を全力疾走のようなスピードで走ってきたことになる。
それでも金子の顔には疲労も苦痛もなく、笑みすらこぼれていた。
ゴールまであと10メートルとなったとき、金子の足は突然止まりバタッとその場に倒れた。
天上界で死神Aは死神Bに尋ねた。
「あの金子って男を死なせたの、お前だろ?」
「ああ。過剰にパワーを与えてやった。それで体は耐えきれなくなった。」
「あんまり不自然な操作はしない方がいいぜ。いつ死んだっておかしくない老いぼれはいくらでもいるのに、なんだってあんな元気な男をごぼう抜きしたんだよ。」
死神Bは黙ったままだった。
「どうせ金子がマラソンを始めたら、仕事ができるようになった上にスタイルもよくなって女にもモテ始めたのがうらやましかったからだろ?」
「ち、ちちち違えし!」
死神Bは真っ赤になって反論した。
「じゃあ、なんで殺したんだよ。」
このままでは死神Aに自分の嫉妬がばれてしまうとあせった死神Bは必死に自分の行為を振り返り、言い訳を探した。
そして見つけた。
「金子はマラソンに命を懸けていたって一行目に書いてあるから。」
~・~・~・~・~
~感想~
ごぼう抜きという言葉に大勢の中から一つを選び出すという意味があることを検索して初めて知りました。
なのでその意味で使おうと思い、また、あえて次々と追い抜かすという意味では使わないようにするために、マラソンの話にしました。
一行目は最初から伏線のつもりで書きましたが、死神にセリフとして言わせるというのはその場で決めました。
ジョギングとマラソンをしっかりと区別できていない、詰めの甘い話です。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第89回『老いぼれ ごぼう抜き 日記』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約時間分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=EOJy_df8MQY
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
金子はマラソンに命を懸けていた。
学生時代は陸上部ではなくバレーボール部に所属していたので、マラソンには学校の行事以外には縁がなかった。
だが社会人になり仕事に追われ、夜はお酒を飲んで酩酊して朝を迎えるような日を繰り返しているうちに、自分のお腹周りが気になりだした。
そこでダイエットのために始めたのが早朝のジョギングだった。
始めは1キロ走るのもつらかった。
仕事でなまり、日常的に睡眠時間が足りてない体は悲鳴を上げた。
肩で息をしながらもこれでは仕事に支障をきたすのでもうやめてしまおうかとも思ったが、ジョギングをした日はむしろ活動的に仕事ができることに気付いてからジョギングの魅力に取りつかれるのに時間はかからなかった。
朝30分のジョギングが彼の日課となった。
新しいシューズやウェアも買った。
また、タイムや距離を記録するジョギング用の日記も取り始めた。
その生活が1年も続くと、金子は自分の体力にも自信が持てるようになってきた。
そこで金子はマラソン大会に出場することにした。
さっそくインターネットで参加できる大会を検索すると、隣りの市で開催されるハーフマラソン大会を見つけた。
はっはっはっ。
金子は走っていた。
金子にとってはこれが初めてのマラソン大会だったが、周りには何度も出場してると思しきランナーたちが大勢いた。
運動部に所属しているらしい高校生もいれば、細身ながらもしっかりと筋肉のついているお年寄りもいた。
一人、また一人と金子は抜かされた。
だが、マラソンが自分との戦いであることを金子も忘れていなかった。
大切なのは自分のペースを守ることだ。
この大会に向けて金子はタイムを計りながらハーフを走るためのペース作りをしてきた。
まずは完走して自分のタイムを知ることができれば十分であり、初めての大会なので彼には自己ベストというものはまだ持っていない。
着順も気にしてはいけない。
どうせ上位に入賞するのは本格的に陸上競技やスポーツをやっている人たちなのだ。
むしろ金子は緊張しないで走れていることが嬉しかった。
大会の運営はしっかりしておりエントリーはスムーズだったし、チェックポイントでの係員からの応援は心強かった。
何度も電車で通ったことのある町だったが、遠景に見える山並みの美しさにも気付けた。
金子はマラソンの趣味が長く続きそうだなと思った。
そのとき、金子の体に不思議なくらい力が湧いてきた。
まるで自分の体が輝いてる感じがした。
いてもたってもいられなくなった金子はペースを上げた。
それはペースを上げたというものではなかった。
まわりから見るとほとんど全力疾走のスピードだった。
だが、金子は全く疲れを感じなかった。
それどころか走っても走ってもまだまだ走れそうな気がした。
金子は次々とランナーたちを追い抜いた。
抜かれたランナーたちはなぜそんなスピードで走るのかと困惑していた。
係員も自分の前を風のように走る金子の姿に目を丸くした。
だが金子は止まらなかった。
止まる必要を感じていなかった。
とうとう金子はトップのランナーを抜いた。
ゴールが見えてきた。
金子は15キロほどの距離を全力疾走のようなスピードで走ってきたことになる。
それでも金子の顔には疲労も苦痛もなく、笑みすらこぼれていた。
ゴールまであと10メートルとなったとき、金子の足は突然止まりバタッとその場に倒れた。
天上界で死神Aは死神Bに尋ねた。
「あの金子って男を死なせたの、お前だろ?」
「ああ。過剰にパワーを与えてやった。それで体は耐えきれなくなった。」
「あんまり不自然な操作はしない方がいいぜ。いつ死んだっておかしくない老いぼれはいくらでもいるのに、なんだってあんな元気な男をごぼう抜きしたんだよ。」
死神Bは黙ったままだった。
「どうせ金子がマラソンを始めたら、仕事ができるようになった上にスタイルもよくなって女にもモテ始めたのがうらやましかったからだろ?」
「ち、ちちち違えし!」
死神Bは真っ赤になって反論した。
「じゃあ、なんで殺したんだよ。」
このままでは死神Aに自分の嫉妬がばれてしまうとあせった死神Bは必死に自分の行為を振り返り、言い訳を探した。
そして見つけた。
「金子はマラソンに命を懸けていたって一行目に書いてあるから。」
~・~・~・~・~
~感想~
ごぼう抜きという言葉に大勢の中から一つを選び出すという意味があることを検索して初めて知りました。
なのでその意味で使おうと思い、また、あえて次々と追い抜かすという意味では使わないようにするために、マラソンの話にしました。
一行目は最初から伏線のつもりで書きましたが、死神にセリフとして言わせるというのはその場で決めました。
ジョギングとマラソンをしっかりと区別できていない、詰めの甘い話です。
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