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第97回『春巻き ソフトキャンディ うどん』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第97回『春巻き ソフトキャンディ うどん』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間4分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=dmza64ZgkXE
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「スプリングハズカム!」
皿を持ってきた和人の叫びに、テーブルに座って待っていた俺は笑った。
季節は晩秋を迎えつつあったから当然だ。
「なんだよ、彼女ができたっていうんなら話が違うぞ。」
そう、和人は小さな中華料理屋を営んでいて、今日は友人の俺に新メニューの試食に来てもらったのだ。
「もちろんできたのはこれさ。」
和人は皿の上でじゅうじゅうと揚げたばかりの音を出している春巻きを覗き込んだ。
「これが新メニュー? 今までも春巻き出してただろ。」
「味を変えた。名付けて春春巻き。」
「春が多いな。」
そう言いながら俺は春巻きをかじった。
ザクッと小気味いい音が響いた。
揚げ時間は完璧なようだ。
だが、しばらく噛んでいると俺は驚いた。
「うお、硬い。なんだこれ。」
そんなはずはないと思った和人は、俺が食べた春巻きをよく観察してみた。
すると春巻きの中にうどんのように太い透明なものがあった。
「なんだよ、これ。」
「これは春雨だ。一本のように固まっちゃってたらしい。どうしてだろ?」
「春雨か。噛んだとき味のしないソフトキャンディが入ってたのかと思ったよ。」
プロでありながら恥ずかしい失敗をした和人は謝ったが、俺はそんなことは気にしていなかった。
「で、どこが味を変えたんだ。今食べた限りは同じ味だと思うけど。」
「春雨を入れてみた。」
「今まで春雨入れてなかったのかよ。普通入れるだろ。あと、春雨を入れたところで食感は変われど、味はそんなに変わらないだろ。」
確かに和人の店は繁盛しているとは言い難かったが、その理由を垣間見たような気がした。
ここは我が道を行っていると思おう。
そして友人代表として、勇気をもって春巻きに春雨を入れることを思いついた理由を問おう。
「二つとも名前に春が入ってるから。」
中身をあらためるために箸でほぐした春巻きは冷めて、立ち上がる湯気の量はみるみるうちに減っていた。
やはり和人は春春巻きという名前ありきで作っていたのかと、俺は悟った。
「春雨を入れるのは当たり前なんだから、それで春春巻きを名乗るのはあきらめろよ。」
和人が残念がっているところに、店の扉を開ける音がした。
「こんばんはー。って二人ともなにやってんの。」
休店の札がかかっているにもかかわらず、堂々と入ってきたのは俺たちの幼馴染の椿だった。
「二人に挨拶しようと思ってたからちょうどいいや。それ、春巻き?」
「おう。少し失敗したけどお前も食え。最後の晩餐に。」
最後にするなと笑いながら椿は春巻きを食べた。
彼女が口に入れた部分には固まった春雨がなかったらしく、おいしそうに食べていた。
「で、もう一度聞くけど二人ともなにやってんの。」
俺たちは事情を説明した。
春春巻きというメニューを作りたいばかりに春雨を入れて満足げだった和人を椿は大笑いしてくれた。
だが和人をさんざんばかにした後、最後にアドバイスをくれた。
「ま、どうしても春春巻きをやりたければ、春と名の付く他のものを入れるしかないよ。」
それから椿はいなくなった。
でも和人はそんなことを気にしていられなかった。
店で出した新メニューの春春巻きが大好評で、毎日繁盛していたからだ。
春巻きの中には春雨も入っているが、それが理由で春春巻きを名乗っているわけではない。
春と名の付く他のものを入れればいい。
和人は口にこそ出さないが、中華鍋をふるいながら今日も椿には感謝しているはずだ。
椿のあの一言のおかげで和人は中に春菊を入れることを思いついたのだから。
それが和人の作る春巻きによく合って、今の店があるのだから。
俺もまだ春春巻きを食べたことはないが、椿が海外赴任から帰ってきたときには二人で寄ることにしよう。
~・~・~・~・~
~感想~
お題全てが食べ物とは前代未聞で困りました。
結局2つを比喩として使ってしまいました。
残酷ネタへのへのミスリードはなんだか気乗りしなかったので、ほどほどにしました。
よっていつもにましてぱっとしない話です。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第97回『春巻き ソフトキャンディ うどん』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間4分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=dmza64ZgkXE
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~・~・~・~・~
「スプリングハズカム!」
皿を持ってきた和人の叫びに、テーブルに座って待っていた俺は笑った。
季節は晩秋を迎えつつあったから当然だ。
「なんだよ、彼女ができたっていうんなら話が違うぞ。」
そう、和人は小さな中華料理屋を営んでいて、今日は友人の俺に新メニューの試食に来てもらったのだ。
「もちろんできたのはこれさ。」
和人は皿の上でじゅうじゅうと揚げたばかりの音を出している春巻きを覗き込んだ。
「これが新メニュー? 今までも春巻き出してただろ。」
「味を変えた。名付けて春春巻き。」
「春が多いな。」
そう言いながら俺は春巻きをかじった。
ザクッと小気味いい音が響いた。
揚げ時間は完璧なようだ。
だが、しばらく噛んでいると俺は驚いた。
「うお、硬い。なんだこれ。」
そんなはずはないと思った和人は、俺が食べた春巻きをよく観察してみた。
すると春巻きの中にうどんのように太い透明なものがあった。
「なんだよ、これ。」
「これは春雨だ。一本のように固まっちゃってたらしい。どうしてだろ?」
「春雨か。噛んだとき味のしないソフトキャンディが入ってたのかと思ったよ。」
プロでありながら恥ずかしい失敗をした和人は謝ったが、俺はそんなことは気にしていなかった。
「で、どこが味を変えたんだ。今食べた限りは同じ味だと思うけど。」
「春雨を入れてみた。」
「今まで春雨入れてなかったのかよ。普通入れるだろ。あと、春雨を入れたところで食感は変われど、味はそんなに変わらないだろ。」
確かに和人の店は繁盛しているとは言い難かったが、その理由を垣間見たような気がした。
ここは我が道を行っていると思おう。
そして友人代表として、勇気をもって春巻きに春雨を入れることを思いついた理由を問おう。
「二つとも名前に春が入ってるから。」
中身をあらためるために箸でほぐした春巻きは冷めて、立ち上がる湯気の量はみるみるうちに減っていた。
やはり和人は春春巻きという名前ありきで作っていたのかと、俺は悟った。
「春雨を入れるのは当たり前なんだから、それで春春巻きを名乗るのはあきらめろよ。」
和人が残念がっているところに、店の扉を開ける音がした。
「こんばんはー。って二人ともなにやってんの。」
休店の札がかかっているにもかかわらず、堂々と入ってきたのは俺たちの幼馴染の椿だった。
「二人に挨拶しようと思ってたからちょうどいいや。それ、春巻き?」
「おう。少し失敗したけどお前も食え。最後の晩餐に。」
最後にするなと笑いながら椿は春巻きを食べた。
彼女が口に入れた部分には固まった春雨がなかったらしく、おいしそうに食べていた。
「で、もう一度聞くけど二人ともなにやってんの。」
俺たちは事情を説明した。
春春巻きというメニューを作りたいばかりに春雨を入れて満足げだった和人を椿は大笑いしてくれた。
だが和人をさんざんばかにした後、最後にアドバイスをくれた。
「ま、どうしても春春巻きをやりたければ、春と名の付く他のものを入れるしかないよ。」
それから椿はいなくなった。
でも和人はそんなことを気にしていられなかった。
店で出した新メニューの春春巻きが大好評で、毎日繁盛していたからだ。
春巻きの中には春雨も入っているが、それが理由で春春巻きを名乗っているわけではない。
春と名の付く他のものを入れればいい。
和人は口にこそ出さないが、中華鍋をふるいながら今日も椿には感謝しているはずだ。
椿のあの一言のおかげで和人は中に春菊を入れることを思いついたのだから。
それが和人の作る春巻きによく合って、今の店があるのだから。
俺もまだ春春巻きを食べたことはないが、椿が海外赴任から帰ってきたときには二人で寄ることにしよう。
~・~・~・~・~
~感想~
お題全てが食べ物とは前代未聞で困りました。
結局2つを比喩として使ってしまいました。
残酷ネタへのへのミスリードはなんだか気乗りしなかったので、ほどほどにしました。
よっていつもにましてぱっとしない話です。
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