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第98回『パイオニア 電話番号 タロット占い』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第98回『パイオニア 電話番号 タロット占い』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間7分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=207eEjEF_EQ
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
生まれてきて28年、年齢イコール彼女いない歴の僕にとうとう彼女ができた。
彼女は道を歩けばだれもが振り返るほどきれいな人で、思いやりのあるとても優しい人だ。
今まで日陰を歩いてきた僕にとって、こんな人と付き合えるなんて夢みたいな話だ。
彼女の写真を見せると会社の人たちはみなどうやって落としたんだよと聞くが、何を隠そう彼女から声をかけてきてくれたのだ。
こんなこと誰も信じてくれなかった。
でも本当だ。
喫茶店で仕事をしていたときに、隣りの席に座っていた彼女のイヤリングが床に落ちた。
それを拾ってあげたのがきっかけだ。
それどころか広い店内で、空席はいくらでもあるというのに、わざわざ彼女が僕の隣の席を選んだときから運命は始まっていたのかもしれない。
毎日が幸せだ。
彼女とのSNSの交換で朝が始まる。
彼女のSNSにはいつもたくさんの絵文字が踊っていた。
そして週末には食事を兼ねたデートだ。
つらい仕事も彼女がいると思えばがんばれた。
あるとき、僕は仕事で大きなミスをして会社に迷惑をかけてしまった。
上司が取引先を走り回ってくれたおかげで事なきを得たが、僕はとても落ち込んでいた。
デートの時、彼女は僕の微妙な表情の変化を見て取ったらしく、何かあったのかと聞かれた。
会社のことを正直に話すと、彼女は親身になって慰めてくれた。
そして最後には失敗は成功の母というんですから、これを糧にして出世してくださいねと応援してくれた。
この言葉に勇気をもらった僕は翌日からよりいっそう精力的に仕事をこなした。
僕のために汗を流してくれた上司もその意気だと、背中を叩いてくれた。
その甲斐あってか仕事も順調に回り出した。
仕事のミスが減り心に余裕ができると、彼女の言葉が気になりだした。
彼女は僕に出世してくださいねと言った。
これはひょっとして僕との結婚を考えているということだろうか。
でもまだ会って3か月ほどなので、結婚は早い気もする。
しかし彼女の優し気な眼差しはいつも未来に向いているかのようだった。
次のデートのとき、ずっと彼女の言動が気になっていた僕はちらりと結婚という言葉を発した。
話の流れは学生時代の同級生についてだった。
すると彼女は前のめりになり急に早口となった。
「あ、結婚って興味あります? そうですよね。でも自分は結婚できるのか、とかいつ結婚したらいいのかって不安になりますよね?」
すらすらとしゃべり続ける彼女に僕は口をはさむ余裕なんてなかった。
「私も人生でよく迷うことがあるんですよ。そんなときはいつもこの方に相談してるんですよ。」
彼女はハンドバッグから一枚の紙を取り出した。
「この方! 知ってます? よく当たるって評判の占い師なんです。」
紙には中東のような──中東そのもの、ではない──衣装を着て、タロットカードを並べてカメラ目線を向けている女性の写真が目を引いた。
赤や黄色で彩られた文章には!が多用されていて、料金はわからないが電話番号はデカデカと記載されていた。
「最初は私も本当かなって思ってたんですが、この方に相談したら仕事も恋愛もどんどんうまくいったんですよ。」
その恋愛には僕のことは含まれているのかなと思った。
「えーと、こういうのは。」
「大丈夫ですよ。最初の1回目は無料ですから! この方の特徴は毎週占ってくれるんです。だから状況に合わせたきめ細かい運勢がわかるんです。」
どうやらそうやって少しずつお金を搾り取っていくやり方らしい。
「僕は今はちょっと。」
僕が帰ろうとすると彼女はあわてて付け加えた。
「あ、あの、彼女はタロットカードのパイオニアなんですっ。」
大昔のエジプトで生まれたタロットカードにパイオニアを名乗るのは無理があった。
器量が悪く、女性から声をかけられるはずもないのに夢を見てしまった僕が悪いのだ。
それから彼女との連絡は途絶え、彼女ができる前の、いつもの毎日が始まった。
一つだけ違うのは以前よりも仕事の要領が良くなったことくらいだ。
「一緒にお昼食べません?」
昼休み、先日ミスをフォローしてあげた女性社員が肩を叩いてきた。
~・~・~・~・~
~感想~
お題はタロットカードとパイオニアから考えていきました。
それでタロットカードのパイオニアを名乗る人間は詐欺師だろうなと思い、こうしました。
詐欺の常套手段を描くだけなのに無駄に長いだけで、もっと短くすませるべきだったと反省してます。
女性社員から声をかけられるというオチは入れようか入れまいかずっと迷いながら書いていたのですが、パイオニアへの流れがうまく行かなかったので入れることにしました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第98回『パイオニア 電話番号 タロット占い』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間7分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=207eEjEF_EQ
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ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
生まれてきて28年、年齢イコール彼女いない歴の僕にとうとう彼女ができた。
彼女は道を歩けばだれもが振り返るほどきれいな人で、思いやりのあるとても優しい人だ。
今まで日陰を歩いてきた僕にとって、こんな人と付き合えるなんて夢みたいな話だ。
彼女の写真を見せると会社の人たちはみなどうやって落としたんだよと聞くが、何を隠そう彼女から声をかけてきてくれたのだ。
こんなこと誰も信じてくれなかった。
でも本当だ。
喫茶店で仕事をしていたときに、隣りの席に座っていた彼女のイヤリングが床に落ちた。
それを拾ってあげたのがきっかけだ。
それどころか広い店内で、空席はいくらでもあるというのに、わざわざ彼女が僕の隣の席を選んだときから運命は始まっていたのかもしれない。
毎日が幸せだ。
彼女とのSNSの交換で朝が始まる。
彼女のSNSにはいつもたくさんの絵文字が踊っていた。
そして週末には食事を兼ねたデートだ。
つらい仕事も彼女がいると思えばがんばれた。
あるとき、僕は仕事で大きなミスをして会社に迷惑をかけてしまった。
上司が取引先を走り回ってくれたおかげで事なきを得たが、僕はとても落ち込んでいた。
デートの時、彼女は僕の微妙な表情の変化を見て取ったらしく、何かあったのかと聞かれた。
会社のことを正直に話すと、彼女は親身になって慰めてくれた。
そして最後には失敗は成功の母というんですから、これを糧にして出世してくださいねと応援してくれた。
この言葉に勇気をもらった僕は翌日からよりいっそう精力的に仕事をこなした。
僕のために汗を流してくれた上司もその意気だと、背中を叩いてくれた。
その甲斐あってか仕事も順調に回り出した。
仕事のミスが減り心に余裕ができると、彼女の言葉が気になりだした。
彼女は僕に出世してくださいねと言った。
これはひょっとして僕との結婚を考えているということだろうか。
でもまだ会って3か月ほどなので、結婚は早い気もする。
しかし彼女の優し気な眼差しはいつも未来に向いているかのようだった。
次のデートのとき、ずっと彼女の言動が気になっていた僕はちらりと結婚という言葉を発した。
話の流れは学生時代の同級生についてだった。
すると彼女は前のめりになり急に早口となった。
「あ、結婚って興味あります? そうですよね。でも自分は結婚できるのか、とかいつ結婚したらいいのかって不安になりますよね?」
すらすらとしゃべり続ける彼女に僕は口をはさむ余裕なんてなかった。
「私も人生でよく迷うことがあるんですよ。そんなときはいつもこの方に相談してるんですよ。」
彼女はハンドバッグから一枚の紙を取り出した。
「この方! 知ってます? よく当たるって評判の占い師なんです。」
紙には中東のような──中東そのもの、ではない──衣装を着て、タロットカードを並べてカメラ目線を向けている女性の写真が目を引いた。
赤や黄色で彩られた文章には!が多用されていて、料金はわからないが電話番号はデカデカと記載されていた。
「最初は私も本当かなって思ってたんですが、この方に相談したら仕事も恋愛もどんどんうまくいったんですよ。」
その恋愛には僕のことは含まれているのかなと思った。
「えーと、こういうのは。」
「大丈夫ですよ。最初の1回目は無料ですから! この方の特徴は毎週占ってくれるんです。だから状況に合わせたきめ細かい運勢がわかるんです。」
どうやらそうやって少しずつお金を搾り取っていくやり方らしい。
「僕は今はちょっと。」
僕が帰ろうとすると彼女はあわてて付け加えた。
「あ、あの、彼女はタロットカードのパイオニアなんですっ。」
大昔のエジプトで生まれたタロットカードにパイオニアを名乗るのは無理があった。
器量が悪く、女性から声をかけられるはずもないのに夢を見てしまった僕が悪いのだ。
それから彼女との連絡は途絶え、彼女ができる前の、いつもの毎日が始まった。
一つだけ違うのは以前よりも仕事の要領が良くなったことくらいだ。
「一緒にお昼食べません?」
昼休み、先日ミスをフォローしてあげた女性社員が肩を叩いてきた。
~・~・~・~・~
~感想~
お題はタロットカードとパイオニアから考えていきました。
それでタロットカードのパイオニアを名乗る人間は詐欺師だろうなと思い、こうしました。
詐欺の常套手段を描くだけなのに無駄に長いだけで、もっと短くすませるべきだったと反省してます。
女性社員から声をかけられるというオチは入れようか入れまいかずっと迷いながら書いていたのですが、パイオニアへの流れがうまく行かなかったので入れることにしました。
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