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第121回『麻酔銃 数学者 歩き出す』

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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第121回『麻酔銃 数学者 歩き出す』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約時間分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=MJtw5ggSs0Y

↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/

~・~・~・~・~

Q動物園にはあまりお客が入っていなかった。
もちろんお客さんが来てくれるように努力は重ねているが、経営は毎月のように火の車だ。
動物たちにあげるエサの工面にも苦労している。
職員に支払う給料もギリギリでがまんしてもらっている。
それでも経営は苦しかった。
そして園長にはもう一つ悩みの種があった。
動物園では動物が逃走したときのために、を常備しておく必要がある。
ただでさえ懐が寒いのに、この上必要な時が来るとは限らないのためにお金を割くのはとても厳しかったのだ。

そこで園長は獣医師を呼んだ。
「経費削減のために麻酔の量を極力減らしてほしい。」
獣医師は目を丸くした。
に入っているのはもともと麻酔に必要な量だけですよ。」
「わかっている。しかし少しでも経費を浮かせたいのだ。ほんの少しでもいい。麻酔が効く限界まで減らしてほしい。」
長年の付き合いのために断れなかった獣医師は渋々了承した。
獣医師は自分がになったかのように計算に計算を重ね、麻酔に本当に必要な量を割り出した。

後日獣医師は園長にを渡しに行った。
しかし園内が騒がしいことに獣医師は気付いた。
職員に話を聞くと、象が一匹檻から逃げ出したとのことだった。
獣医師は急いで園長のもとへ駆けつけた。
園長を始め職員たちは遠くから象の様子をうかがっていた。
獣医師はさっそくこのを使うことを薦めた。
「おお、完成していたのか。しかしこれで本当に効くのかね?」
獣医師は自分に麻酔の量を減らすように頼んでおきながら不安視する園長の質問に腹を立てた。
「大丈夫ですよ。見ていてください。」
獣医師はを構えて、象に狙いを定めた。
獣医師が引き金を引くと、象はパタッと倒れた。
「やったあっ。」
園長は歓声を上げた。
しかし職員たちが近づくと、象はゆっくりと起き上がった。
麻酔が十分には効いていなかったようだ。
これではもう一発を撃たねばならない。
園長は涙ながらに獣医師に訴えた。
「どうしてくれるんだ! これで我が動物園は今月も赤字だ!」
た像を見て獣医師は答えた。
「なに、足が出ただけですよ。」

~・~・~・~・~

~感想~
お題の麻酔銃と歩き出すはつなげやすかったです。
歩き出すから足が出るという慣用句を連想したので、赤字の状況を考えて落語のようなオチを目指しました。
しかしこのオチのためには麻酔の量を減らさなくても、ほかにいくらでも方法があったと思います。
園長が依頼するのは数学者でもよかったのですが、一応獣医師にしました。
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