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第122回『片道切符 麻婆豆腐 激安』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第122回『片道切符 麻婆豆腐 激安』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約54分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=WL4TQPRr_Ok
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
目の前では豆板醤で真っ赤になったひき肉がぐつぐつと煮えたぎっていた。
茄子はそれを見てふーっと息を吐いた。
汗が止まらないのはひき肉から沸き立つもうもうとした湯気のせいだけではなかった。
茄子は目をつぶり天を仰いだ。
茄子として生まれ、大きく育った自分の人生を振り返っていたのかもしれない。
茄子は足を小さく踏み鳴らすことで緊張をほぐそうとしていた。
茄子はこの時ほど自分の皮の色が紫で良かったと思ったことはなかった。
もしも元々の色が白だったら、あるいは黄色だったら、周囲からは今の自分が青ざめていることがばれてしまっていただろう。
茄子は茄子として生まれてきたことに感謝の気持ちがわいてきた。
そして次に、茄子としての運命を果たそう、そう思えた。
ならばあとはこの鍋に向かって飛び込むだけだ。
茄子は両足を踏ん張った。
そのとき誰かが茄子の肩を掴んだ。
春雨だった。
「ばかやろうっ。お前麻婆茄子になる気かよっ?」
「そうさ。だって麻婆の中にとろとろの茄子が入ってるとおいしいだろ? あれが麻婆っていうのか知らんけど。」
茄子は鍋の中の挽肉を見ながら乾いた笑いを浮かべた。
しかし茄子の肩を掴む春雨の手には力が入るばかりだった。
「とろとろ? 確かにな! でも、でもそれだけだろっ?」
春雨はまっすぐ鍋の中を指さした。
「見ろあのひき肉を! 豆板醤となじんですっごく辛いんだぞ! おまけに油と片栗粉で炒められて熱々だ!」
春雨は声のトーンを一段落とした。
「そんな中に俺が入ってみろ。春雨をちゅるちゅるとすすれば辛さが和らぐ。オアシスだ!」
茄子は目を見開き、初めて春雨の顔をまっすぐ見た。
「お前、まさかっ……。」
春雨はお湯をかぶった。
春雨の下ごしらえだ。
「そうだ。麻婆春雨になれば、食べる人もっ……。」
どすっ。
どすっ。
茄子と春雨の延髄に衝撃が走った。
二人はひざからがくんと倒れた。
薄れそうな意識の中、二人が見上げるとそこに立っていたのはお豆腐だった。
「ふっ。お前らを行かせるわけにはいかねえよ……。」
豆腐は続けた。
「麻婆を食う奴らはな、むしろ辛さと熱さを求めているんだ。だから麻婆を食うという行為は地獄への片道切符でいいんだ。なあに、心配するな。辛さを求める人間の命なんて激安さ。ものの数にならん。ならばお望み通り辛さでしびれている舌の上に熱々の豆腐が乗っかることで、奴らにさらなる地獄を見せてやるぜ!」
最後の力を振り絞って茄子と春雨が伸ばした手も届かなかった。
豆腐はすでに鍋に向かって飛び込んでいた。
「うおりゃああぁぁぁーーーーっ!」
落下の最中に豆腐の体に格子状の切れ目が入った。
次の瞬間、豆腐は角切りとなってばらばらに別れ、鍋の中へと落ちていった。
それを見届けると、茄子と春雨もまた深い意識の底へと落ちていった。
次に彼らを呼び覚ますのは、麻婆豆腐を食べた人の、辛さと熱さにもだえる叫び声だった。
~・~・~・~・~
~感想~
激安の麻婆豆腐だけど、辛すぎて食べるのは地獄への片道切符みたいな話しか思いつかなくて、そこから逃れるためにヘンテコな話にしようと思いました。
そうしたら豆腐と茄子と春雨が争う話になりました。
少年漫画のような展開を意識しました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第122回『片道切符 麻婆豆腐 激安』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約54分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=WL4TQPRr_Ok
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~・~・~・~・~
目の前では豆板醤で真っ赤になったひき肉がぐつぐつと煮えたぎっていた。
茄子はそれを見てふーっと息を吐いた。
汗が止まらないのはひき肉から沸き立つもうもうとした湯気のせいだけではなかった。
茄子は目をつぶり天を仰いだ。
茄子として生まれ、大きく育った自分の人生を振り返っていたのかもしれない。
茄子は足を小さく踏み鳴らすことで緊張をほぐそうとしていた。
茄子はこの時ほど自分の皮の色が紫で良かったと思ったことはなかった。
もしも元々の色が白だったら、あるいは黄色だったら、周囲からは今の自分が青ざめていることがばれてしまっていただろう。
茄子は茄子として生まれてきたことに感謝の気持ちがわいてきた。
そして次に、茄子としての運命を果たそう、そう思えた。
ならばあとはこの鍋に向かって飛び込むだけだ。
茄子は両足を踏ん張った。
そのとき誰かが茄子の肩を掴んだ。
春雨だった。
「ばかやろうっ。お前麻婆茄子になる気かよっ?」
「そうさ。だって麻婆の中にとろとろの茄子が入ってるとおいしいだろ? あれが麻婆っていうのか知らんけど。」
茄子は鍋の中の挽肉を見ながら乾いた笑いを浮かべた。
しかし茄子の肩を掴む春雨の手には力が入るばかりだった。
「とろとろ? 確かにな! でも、でもそれだけだろっ?」
春雨はまっすぐ鍋の中を指さした。
「見ろあのひき肉を! 豆板醤となじんですっごく辛いんだぞ! おまけに油と片栗粉で炒められて熱々だ!」
春雨は声のトーンを一段落とした。
「そんな中に俺が入ってみろ。春雨をちゅるちゅるとすすれば辛さが和らぐ。オアシスだ!」
茄子は目を見開き、初めて春雨の顔をまっすぐ見た。
「お前、まさかっ……。」
春雨はお湯をかぶった。
春雨の下ごしらえだ。
「そうだ。麻婆春雨になれば、食べる人もっ……。」
どすっ。
どすっ。
茄子と春雨の延髄に衝撃が走った。
二人はひざからがくんと倒れた。
薄れそうな意識の中、二人が見上げるとそこに立っていたのはお豆腐だった。
「ふっ。お前らを行かせるわけにはいかねえよ……。」
豆腐は続けた。
「麻婆を食う奴らはな、むしろ辛さと熱さを求めているんだ。だから麻婆を食うという行為は地獄への片道切符でいいんだ。なあに、心配するな。辛さを求める人間の命なんて激安さ。ものの数にならん。ならばお望み通り辛さでしびれている舌の上に熱々の豆腐が乗っかることで、奴らにさらなる地獄を見せてやるぜ!」
最後の力を振り絞って茄子と春雨が伸ばした手も届かなかった。
豆腐はすでに鍋に向かって飛び込んでいた。
「うおりゃああぁぁぁーーーーっ!」
落下の最中に豆腐の体に格子状の切れ目が入った。
次の瞬間、豆腐は角切りとなってばらばらに別れ、鍋の中へと落ちていった。
それを見届けると、茄子と春雨もまた深い意識の底へと落ちていった。
次に彼らを呼び覚ますのは、麻婆豆腐を食べた人の、辛さと熱さにもだえる叫び声だった。
~・~・~・~・~
~感想~
激安の麻婆豆腐だけど、辛すぎて食べるのは地獄への片道切符みたいな話しか思いつかなくて、そこから逃れるためにヘンテコな話にしようと思いました。
そうしたら豆腐と茄子と春雨が争う話になりました。
少年漫画のような展開を意識しました。
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