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第153回『花鳥風月 ミスタードーナツ 実写化』

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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第153回『花鳥風月 ミスタードーナツ 実写化』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約58分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=uvOfbUPwVbQ

↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/

~・~・~・~・~

地域の自治会で親睦を深めるためにハイキングへ行くことになった。
行先はバスを乗り継いて1時間ほどの山で、なだらかなので丘陵と言ってもいいかもしれない。
小学校低学年の遠足先に選ばれることもあり、お年寄りもいる自治会にはちょうどよかった。

いざ登り始めてみると、景色もよく、程よく汗がかけて話が弾み、みな笑顔だった。
自治会でも経歴の長い長谷川が田中に声をかけた。
「田中さん、ずいぶんと大きな荷物を持ってきてますなあ。」
確かに持ち物はお弁当を含めて各自自由だったが、田中のリュックは人よりひときわ大きかった。
泊りがけの本格的な登山もできそうなほどの容量だったが、かといって登山用のリュックというわけではなく、ごく普通のものだった。
「ええ。必要なものを詰めたら、こうなってしまいまして。」
田中は恥ずかしそうに答えた。
「それでも足取りはハキハキとしてますからね。体力がありますねえ。そういえばバスの中でもずっと立ってましたし。」
そういう長谷川は荷物を必要最小限にしつつも、すでに息が上がっていた。
「いえいえ、見た目が膨らんでいるというだけで、それほど重くないんですよ。」
長谷川が見てみると、確かにリュックの持ち手は田中の肩に食い込んではおらず、田中が歩くたびに左右に揺れていた。

1時間近く歩いていると、一行はついに目的地である高台に到着した。
辺りは森に囲まれ、清涼な空気と小鳥の鳴き声が流れていた。
見晴らしも素晴らしく、普段自分たちの暮らす町が目の前に広がっていた。
「それではここでお昼にしましょう。」
長谷川が言うと、みんなでレジャーシートを敷いてお弁当を食べ始めた。
そのとき田中がリュックからお弁当といっしょに大きな丸いものを取り出すのにみんなは気付いた。
それは真ん中に穴が空いている丸いクッションだった。
田中はそれをシートの上に置くと、お尻の位置を確かめながらゆっくりと座った。
「僕、座るときこれがないとだめなんですよ。」
田中は自分が注目を浴びているのに気づいて、聞かれる前にみんなが抱くであろう疑問に答えた。
「ああ、道理でリュックは大きいけど重くなさそうなわけですね。」
「うちの職場でもそういうクッション使ってる人いますよ。」
「ドーナツ状だしおまけに色もブラウンだから、田中さんはさしずめさんですな。」
「えぇっ? 僕、いつのまにしたんですか?」
クッションの話題でひと笑いが起きると、女性陣から提案が出た。
せっかくこんなの素晴らしいところにいるんだから、みんなで俳句を作らないかというものだった。
俳句教室に通っている女性がいたので、彼女からの提案だったのかもしれない。
みんなはさっそく、景色を見回し小声で言葉を探しながら俳句を考えた。.
思いついた人から順に俳句を披露していき、それをみんなでやんやと品評し合った。
「里山や いつかは我の 墓にせん。」
長谷川が自虐的な句を披露すると、笑いが起きた。
「あっはっは。長谷川さんはまだまだ元気ですよ。」
「ここ一帯を自分だけの墓にするなんて贅沢だなあ。」
俳句教室に通っている女性は笑いを浮かべながらも自分なりに批評した。
「里山と墓の組み合わせに意外性があっていいと思いますよ。それに『里山や』で読み手の頭の中に一斉に景色が広がるじゃないですか。ちょうど今私たちが今見ているような美しい景色が。切れ字の使い方は長谷川さんが一番上手だったと思いますよ。」
周りからはおーという感嘆の声がもれ、長谷川は優勝したスポーツ選手のように両手をあげてみんなに答えた。
するとドーナツ状のクッションに座っている田中がお尻を少し上げながら言った。
「切れ痔は俺のことだ。」

~・~・~・~・~

~感想~
お店の名前であるミスタードーナツの使い方に悩みました。
花鳥風月で詩や俳句を連想し、ドーナツと言えばそういう形のクッションがあるなと思い、切れ字と切れ痔のだじゃれで話を作ろうと思いました。
なのでミスタードーナツも実写化も使い方がテキトーです。
言うまでもなく作中の俳句も批評もテキトーです。
田中の一人称が僕だったのに、オチでは俺となってしまっています。
ノリで書いていたので気付きませんでした。
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