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忘却の楔3
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三人はホテル内のレストランへ向かった。席に着く。雅也と美咲は隣同士で向いに譲が座った。
雅也は何故か美咲の事が気になって仕方なかった。美咲の香りも雰囲気も何故かとても懐かしい気がした。
メニューを見て三人は注文をした。暫く経つと、譲が申し訳無さそうに言う。
「あぁ、ごめん、電話だ。長くなりそうだからちょっと席外すね?」
そう言うとレストランから出ていってしまった。
「譲さん相変わらず忙しそうですね?」
美咲が会話を振る。
「えぇ、兄さんはいつも仕事優先なんです。俺はそんな兄さんに甘えてばかりだった・・。自分の我を通して、好きな事をして・・。本当に子供でしたよ。」
自嘲気味に笑った雅也の顔が哀しかった。
「そんな事・・無いんじゃないですか?雅也さんは自分に正直に生きてるんです。それは、親や兄弟だからって取り上げてはいけないと、私は思います。人生は一度だけです。限られた時間の中で、どう生きるかそれが大切なんじゃないでしょうか?」
「限られた時間の中で・・?」
「・・なんて、若い人間が生意気言ってしまってごめんなさい。でも・・時間は大切に使ったほうが良いと思うんです。だから、譲さんも雅也さんも・・選んだ道に後悔は無いんじゃないでしょうか?」
「如月さん・・・・。」
確かに昔同じ事を言われた気がする。大切な人に、そして勇気を貰った。
何度思い出そうとしても、靄が掛かったように朧気なままだった。
無理に思い出そうとすると、頭がズキリと痛む。咄嗟に頭に手を当てた。
「・・っく。」
雅也の異変に気が付いた美咲が顔を覗き込んだ。
「雅也・・さん?大丈夫ですかっ?頭が痛いんですか?直ぐにお医者様を・・。」
美咲が慌ててホテルスタッフを呼ぼうとしたとき。
「如月さん・・俺は大丈夫。一時的なものだから。」
「でも・・・・。解りました、少し休みましょ?」
美咲はスタッフにいって氷水とタオルを借りた。
ボールの中の氷が美咲が手を動かすたびに、カランカランと音を立てた。
絞ったタオルを広げると雅也のおでこに当てた。
「どう、ですか?」
「うん。気持ちいいよ、ありがとう。」
「いえ、なら良かった・・。」
安堵したような声色に不思議と癒やされた。
暫く、すると雅也が美咲に聞いた。
「俺達って今まで会ったことってありましたっけ?」
いきなりの問いに流石の美咲もたじろいだ。
「会った事は無いんじゃないかな?」
そう、返すのが精一杯だった。
「そう・・ですか。何だか俺の知っている人に似てたから。」
その言葉を聞くと、美咲はドキッとした。
「あぁ、でもその人の顔も名前も思い出せないんですけどね?」
バツが悪そうに言った。
そこへ、さっき電話をしに行った譲が戻る。
「悪い悪い。緊急でな!?」
「譲さん、大丈夫ですか?」
咄嗟に美咲は譲の心配をした。
「んっ?大丈夫だよ。それに急に二人にしてしまってごめんな。」
「ふふっ、大丈夫ですよ。」
仲睦まじい感じをあえて醸し出した。
食事も終わりレストランを出る。
「ごめんなさい、譲さん雅也さん。ちょっと用事が出来てしまって。私はここで失礼させて頂きます。」
「・・わかった。」
雅也は何故か美咲の事が気になって仕方なかった。美咲の香りも雰囲気も何故かとても懐かしい気がした。
メニューを見て三人は注文をした。暫く経つと、譲が申し訳無さそうに言う。
「あぁ、ごめん、電話だ。長くなりそうだからちょっと席外すね?」
そう言うとレストランから出ていってしまった。
「譲さん相変わらず忙しそうですね?」
美咲が会話を振る。
「えぇ、兄さんはいつも仕事優先なんです。俺はそんな兄さんに甘えてばかりだった・・。自分の我を通して、好きな事をして・・。本当に子供でしたよ。」
自嘲気味に笑った雅也の顔が哀しかった。
「そんな事・・無いんじゃないですか?雅也さんは自分に正直に生きてるんです。それは、親や兄弟だからって取り上げてはいけないと、私は思います。人生は一度だけです。限られた時間の中で、どう生きるかそれが大切なんじゃないでしょうか?」
「限られた時間の中で・・?」
「・・なんて、若い人間が生意気言ってしまってごめんなさい。でも・・時間は大切に使ったほうが良いと思うんです。だから、譲さんも雅也さんも・・選んだ道に後悔は無いんじゃないでしょうか?」
「如月さん・・・・。」
確かに昔同じ事を言われた気がする。大切な人に、そして勇気を貰った。
何度思い出そうとしても、靄が掛かったように朧気なままだった。
無理に思い出そうとすると、頭がズキリと痛む。咄嗟に頭に手を当てた。
「・・っく。」
雅也の異変に気が付いた美咲が顔を覗き込んだ。
「雅也・・さん?大丈夫ですかっ?頭が痛いんですか?直ぐにお医者様を・・。」
美咲が慌ててホテルスタッフを呼ぼうとしたとき。
「如月さん・・俺は大丈夫。一時的なものだから。」
「でも・・・・。解りました、少し休みましょ?」
美咲はスタッフにいって氷水とタオルを借りた。
ボールの中の氷が美咲が手を動かすたびに、カランカランと音を立てた。
絞ったタオルを広げると雅也のおでこに当てた。
「どう、ですか?」
「うん。気持ちいいよ、ありがとう。」
「いえ、なら良かった・・。」
安堵したような声色に不思議と癒やされた。
暫く、すると雅也が美咲に聞いた。
「俺達って今まで会ったことってありましたっけ?」
いきなりの問いに流石の美咲もたじろいだ。
「会った事は無いんじゃないかな?」
そう、返すのが精一杯だった。
「そう・・ですか。何だか俺の知っている人に似てたから。」
その言葉を聞くと、美咲はドキッとした。
「あぁ、でもその人の顔も名前も思い出せないんですけどね?」
バツが悪そうに言った。
そこへ、さっき電話をしに行った譲が戻る。
「悪い悪い。緊急でな!?」
「譲さん、大丈夫ですか?」
咄嗟に美咲は譲の心配をした。
「んっ?大丈夫だよ。それに急に二人にしてしまってごめんな。」
「ふふっ、大丈夫ですよ。」
仲睦まじい感じをあえて醸し出した。
食事も終わりレストランを出る。
「ごめんなさい、譲さん雅也さん。ちょっと用事が出来てしまって。私はここで失礼させて頂きます。」
「・・わかった。」
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