十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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忘却の楔13

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「今日は1日俺と付き合って貰うよ?」

そう美咲に告げた久堂が向かった先は、意外な場所だった。

「着いたよ。」

久堂が笑顔で言う。

「えっーーーと。ここですか?」

「うん。そう、ここ。」

「いや、でも・・ここ私の家なんですけど?」

「うん。わかってるよ?さぁ、行こう?」

美咲が戸惑っている間に車を降りて、助手席のドアを開ける。

「どうぞ?」

「・・・・はい。」

美咲は混乱しながら久堂の後をついていく。当然やってきたのは美咲の部屋の前だった。

「・・・・。」

何も言わずに、鍵を開けると室内に入るように促される。
部屋に入り電気を点ける。

「久堂さん上着預かります。」

「うん。ありがとう。」

久堂が上着を渡すとハンガーに掛けた。
キッチンでコーヒーを淹れてテーブルの上に置く。

「如月さん、こっち。」

久堂の隣に座るように言われた。

「あの、久堂さん?」

その瞬間、久堂が美咲の顔を見つめて頬に手を伸ばした。

「やっぱり顔色が悪い。それに、目が赤いよ?」

久堂のやさしい手が美咲の頬を撫でた。

「そ、そんなこと・・・・。」

「・・・・。俺は如月さんの事が心配なんだ。色々あったから。辛いでしょう?」

久堂の真摯な視線が向けられる。

「・・・・、そんな。本当に辛いのは長嶺さんですよ。記憶を無くしてもなお私のせいで苦しんでる・・。ほんと、長嶺さんから見たら私は疫病神ですよ・・・。」

「苦しいのは如月さんだって同じじゃないか!?長嶺さんだけが辛い思いをしてるわけじゃない。皆、誰も悪くはないんだ。」

久堂が優しく美咲を抱き締めた。暖かな久堂の腕の中に閉じ込められると優しく背中を撫でてくれた。

「今日は一日ユックリして?これは、業務命令だよ?」

久堂が悪戯っぽい笑顔を浮かべた。

「もう!敵わないな、久堂さんには。」

そう言って身体の力を抜いて久堂に寄りかかる。
久堂の体温を感じながら目を閉じた。
そんな美咲を何処までも何処までも優しく抱きしめる。
お互いに無言のまま居ると、美咲から規則正しい寝息が聞こえた。
そっと、顔を覗き込むと眠ってしまったようだった。その顔が何故か穏やかな顔だったことに久堂は安堵した。暫く、美咲を抱き締めていたがユックリ寝てほしくて抱き上げるとベッドへ寝かせた。

「お休み、如月さん。どうか、今だけはユックリ眠って?」

ソット前髪を払うと額に口づけをした。
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