【完結】Blue Blood 〜Murderous Melody〜【恋と瑠璃色の弾丸】

朔良

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『今のは・・銃声かっ?』

「樹悪い、後で掛けなおすっ!!」

『あっ、おい!!』

電話を切ると公園の中に消えていった。




「サヨナラだアオイ。」

そう告げたエリックは目を閉じて引き金に力を込めた。

「エリックっ!!」

銃声が轟いた。
エリックの髪を掠めて銃弾は夜の闇に消えた。
目を開けると、葵がエリックの手首を握っていた。

「死なせないっ!エリックも、エリックの大切な人も。」

「放せっ!!そんな事出来る訳ないだろっ!俺が死ねば全てが丸くおさまるっ!」

エリックの首筋にチクリとした痛みが走った。
その瞬間、意識が遠のいっていった。

「な・・にを・・。」

「ごめんね。エリック。」

意識を手放したエリックは前のめりに倒れた。

「っと・・。」

葵は倒れたエリックを支えた。
そこに、慌てた様子の司が現れた。

「葵っ!今の銃声はっ!?」

「司。エリックを運ぶの手伝ってくれる?」

葵の腕の中に居るエリックを見て瞳を瞬かせた。

「これは・・。どういう状況だ?」




エリックは葵のベッドに寝かされた。
布団をかけてあげると葵が部屋から出てきた。
司がコーヒーを手渡す。

「ありがとう。」

カップを受け取るとソファーに座った。
葵から事の経緯を車の中で聞いていた。

(まさか、エリックが死のうとするなんて・・。そこまでして、護りたい者って・・?)




エリックは夢を見ていた。

『ここは・・。』

子供達が遊具で遊んでいる。
幼いエリックがバイオリンを弾いていると、女の子が近付いてきた。

「エリック!バイオリンの練習?聴いててもいい?」

ブロンドの髪を肩まで伸ばし水色の瞳が印象的な女の子だ。

「ソフィア。何が聴きたい?」

「アヴェ・マリアが聴きたい。」

「わかった。」

ソフィアは目を閉じて聴きいっている。
演奏が終わると、ソフィアは拍手をした。

「やっぱりエリックの演奏は最高だねっ!」

『ああ、そうだアヴェ・マリアはソフィアが好きな曲だった・・。』

画面は切り替わり、エリックが施設を出ていく場面になった。
ソフィアは瞳に涙を浮かべて言った。

「エリック。イギリスに行っても私の事忘れないでね・・。」

大きな瞳から今にも涙が溢れ落ちそうだった。

「忘れるわけないだろ?たったの三年だ、あっという間に過ぎるよ?」

エリックはソフィアの涙を拭いながら言った。

「また、ここに帰って来てくれる?」

「ああ。」

エリックはソフィアとの約束を胸にイギリスへと旅立った。
エリックのバイオリンの才能に惚れ込んだ実業家がイギリスの音楽学校への留学を勧めてくれたのだ。

『この時、既に俺は裏の世界に片足を突っ込んでた。所詮、少しばかりの才能があったとしても音楽で食べていこうなんて思ってなかった。親もなく頼る人も居ない。自分の人生に希望なんて持てなかった。・・・。だけど、人生は解らない。俺にこんなに才能があったなんて。色んなコンクールに出れば賞を貰い。世間はあっという間に俺を認めた。その一方では、裏の世界から抜け出せずにいたんだ。そんな時、アオイと出会ったんだ。あの頃のアオイはどこか儚げだった。死を恐れない行動力で完璧な仕事をこなしていた。感情が全く読めなかった。なのに今は・・。』

エリックは目を開けた。見慣れない天井だ。ホテルではないらしい。
周りを見渡す。

「ここは・・。確かアオイと海の見える公園に居たよな?それで・・。」

まだ、気怠い身体を起こして首筋に手を当てた。

「首筋に痛みがあって気を失ったのか?」

ドアを開けると葵と司が居た。

「エリック。気が付いたのね?」

葵が微笑みながらエリックを見た。

「アオイ・・。」

「身体まだ怠いでしょ?もう少し休んでたら?」

「一体何をしたんだ?」

「麻酔針を打っただけだから心配ないわ。」

「・・・。」

「どうして?」

「えっ?」

「どうして死なせてくれなかったんだ!?」

「そんな事出来る訳ないでしょ?目の前で大切な仲間を失うなんて・・。」

穏やかに紡がれた言葉にエリックの心は揺らいだ。


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