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出発
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「アオイっ!一体どういう事だっ!?」
葵の部屋にやってきたエリックの勢いに目を瞬かせた。
「どういう事って?」
「俺が死んだってニュースになってる!マスコミを動かしたのか?」
「あれはちゃんと警察庁が公表したのよ。マスコミだけ動かしたって仕方ないしね。」
「警察?遺体も無いのにそんな事どうやって・・?」
「・・・。まぁ、座ったら?所で、ソフィアさんはどうしたの?」
「俺の泊まってるホテルにいる。それよりどういうつもりなんだ?」
葵はキッチンに行くとコーヒーを淹れ始めた。
「アオイっ!?」
「これでも飲んで落ち着いて?」
カップをエリックの前に置いた。
一口コーヒーを飲むと口を開いた。
「エリック・ブライトは死んだ。表の世界でも裏の世界でもね。これだけ大々的に報道されてるんだから疑う人間は居ないでしょうね?」
数紙の新聞をテーブルの上に並べた。どの新聞もエリックの訃報をトップ紙面で取り上げていた。
「それが目的だったのか?でも、レインが認めるはずないだろ?それをどうやって?」
「レインには悪いけど、まぁいい薬になったんじゃないの?」
「お前なぁ。」
「これでエリックはもう自由よ。裏の世界に縛られることはない。ソフィアさんとも一緒に居られる。お互いに好きなのに別れる必要なくなったって事よ。」
「どうやって警察を動かしたんだ?」
「・・・。司の同期が警察庁に居るの。だからちょっとお願いしてね。」
そう言うとニッコリ笑った。
「お願いして出来る事じゃないと思うけど?」
「後は企業秘密。」
「アオイ・・。どうして?そこまでしてくれるんだ?」
「幸せになって欲しいのよ。裏の世界に縛り付けられて不幸になってほしくないの。死が平等に有るように、幸せになる権利だって平等にあるのよ。」
目を伏せて呟いた。
「アオイは?」
「えっ?」
「アオイは、今幸せか?」
「・・・。幸せ・・だよ。」
葵は笑顔を浮かべたがどこか寂しそうだった。
エリックがホテルに戻るとソフィアが心配そうに出迎えた。
「エリック。どうだったの?」
「ああ。やっぱりアオイが絡んでた。俺を裏社会から解放するために動いてくれたんだ。」
「それって・・?」
「今回の報道で俺は死んだって事になってるからな。だからもう何も気にしなくて良いんだ。」
優しい笑顔をソフィアに向けた。
「じゃあ、エリックと一緒に居られる・・て事?」
「ああ。」
ソフィアはエリックに抱きついた。
「嬉しい。」
その時部屋のベルが鳴った。
エリックがドアを開けると、ホテルのスタッフが立っていた。
「何か?」
「桜葉様からお荷物をお預かりしております。」
「サクラバ?」
「こちらを。」
綺麗にラッピングされた小さな箱を手渡された。
「ありがとう。」
ドアを閉めると、箱をまじまじと見た。
(サクラバって、確かツカサの名字だよな?)
ソフィアの元に戻ると箱を開けた。
中には便箋が入っていて『MARRY CHRISTMAS』と書かれていた。
その下には真新しいパスポートと航空券が2枚入っている。
パスポートを開くと、エリックの顔写真に『フェリックス ブライトニング』という名前が記されていた。
「これは?」
「アオイ達からのクリスマスプレゼントだ。」
ソフィアにパスポートと航空券を見せた。
「フェリックス・・。いい名前ね?」
ソフィアは微笑みながらエリックを見上げた。
「ああ。そうだな。気に入ったよ。」
✳✳✳✳✳✳✳✳
2日後。
エリックとソフィアは成田空港の出発ロビーに居た。
「やっぱり来ないのかしら?」
エリックは辺りを見渡してため息を吐いた。
「ああ。そうだな。アオイらしいよ・・。ソフィア行こうか?」
「ええ。」
二人はニューヨーク行きの飛行機に乗り込んだ。
(フェリックス・・幸運か。アオイ・・。ありがとう。)
「見送りに行かなくて本当に良かったのか?」
「エリックはもう裏の世界の人間じゃない。私と一緒に居るところを見られてもいけないしね・・。」
葵と司は成田空港の近くにある『さくらの山公園』に来ていた。
公園からは飛行機の離着陸が間近に見られるのだ。
「そうだな・・。」
視線の先には離陸態勢に入った一機の飛行機があった。
轟音を轟かせながら葵達の頭上を飛行機が飛び立っていった。
(エリック。幸せになってね・・。)
葵は何時までもその飛行機を見送った。
葵の部屋にやってきたエリックの勢いに目を瞬かせた。
「どういう事って?」
「俺が死んだってニュースになってる!マスコミを動かしたのか?」
「あれはちゃんと警察庁が公表したのよ。マスコミだけ動かしたって仕方ないしね。」
「警察?遺体も無いのにそんな事どうやって・・?」
「・・・。まぁ、座ったら?所で、ソフィアさんはどうしたの?」
「俺の泊まってるホテルにいる。それよりどういうつもりなんだ?」
葵はキッチンに行くとコーヒーを淹れ始めた。
「アオイっ!?」
「これでも飲んで落ち着いて?」
カップをエリックの前に置いた。
一口コーヒーを飲むと口を開いた。
「エリック・ブライトは死んだ。表の世界でも裏の世界でもね。これだけ大々的に報道されてるんだから疑う人間は居ないでしょうね?」
数紙の新聞をテーブルの上に並べた。どの新聞もエリックの訃報をトップ紙面で取り上げていた。
「それが目的だったのか?でも、レインが認めるはずないだろ?それをどうやって?」
「レインには悪いけど、まぁいい薬になったんじゃないの?」
「お前なぁ。」
「これでエリックはもう自由よ。裏の世界に縛られることはない。ソフィアさんとも一緒に居られる。お互いに好きなのに別れる必要なくなったって事よ。」
「どうやって警察を動かしたんだ?」
「・・・。司の同期が警察庁に居るの。だからちょっとお願いしてね。」
そう言うとニッコリ笑った。
「お願いして出来る事じゃないと思うけど?」
「後は企業秘密。」
「アオイ・・。どうして?そこまでしてくれるんだ?」
「幸せになって欲しいのよ。裏の世界に縛り付けられて不幸になってほしくないの。死が平等に有るように、幸せになる権利だって平等にあるのよ。」
目を伏せて呟いた。
「アオイは?」
「えっ?」
「アオイは、今幸せか?」
「・・・。幸せ・・だよ。」
葵は笑顔を浮かべたがどこか寂しそうだった。
エリックがホテルに戻るとソフィアが心配そうに出迎えた。
「エリック。どうだったの?」
「ああ。やっぱりアオイが絡んでた。俺を裏社会から解放するために動いてくれたんだ。」
「それって・・?」
「今回の報道で俺は死んだって事になってるからな。だからもう何も気にしなくて良いんだ。」
優しい笑顔をソフィアに向けた。
「じゃあ、エリックと一緒に居られる・・て事?」
「ああ。」
ソフィアはエリックに抱きついた。
「嬉しい。」
その時部屋のベルが鳴った。
エリックがドアを開けると、ホテルのスタッフが立っていた。
「何か?」
「桜葉様からお荷物をお預かりしております。」
「サクラバ?」
「こちらを。」
綺麗にラッピングされた小さな箱を手渡された。
「ありがとう。」
ドアを閉めると、箱をまじまじと見た。
(サクラバって、確かツカサの名字だよな?)
ソフィアの元に戻ると箱を開けた。
中には便箋が入っていて『MARRY CHRISTMAS』と書かれていた。
その下には真新しいパスポートと航空券が2枚入っている。
パスポートを開くと、エリックの顔写真に『フェリックス ブライトニング』という名前が記されていた。
「これは?」
「アオイ達からのクリスマスプレゼントだ。」
ソフィアにパスポートと航空券を見せた。
「フェリックス・・。いい名前ね?」
ソフィアは微笑みながらエリックを見上げた。
「ああ。そうだな。気に入ったよ。」
✳✳✳✳✳✳✳✳
2日後。
エリックとソフィアは成田空港の出発ロビーに居た。
「やっぱり来ないのかしら?」
エリックは辺りを見渡してため息を吐いた。
「ああ。そうだな。アオイらしいよ・・。ソフィア行こうか?」
「ええ。」
二人はニューヨーク行きの飛行機に乗り込んだ。
(フェリックス・・幸運か。アオイ・・。ありがとう。)
「見送りに行かなくて本当に良かったのか?」
「エリックはもう裏の世界の人間じゃない。私と一緒に居るところを見られてもいけないしね・・。」
葵と司は成田空港の近くにある『さくらの山公園』に来ていた。
公園からは飛行機の離着陸が間近に見られるのだ。
「そうだな・・。」
視線の先には離陸態勢に入った一機の飛行機があった。
轟音を轟かせながら葵達の頭上を飛行機が飛び立っていった。
(エリック。幸せになってね・・。)
葵は何時までもその飛行機を見送った。
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