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1-3.5.兄姉の非道な行い(兄・シーラスの回想)
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兄のシーラスは、3女の末妹であるミラを心の底から恐れていた。
自分が当主となり、この家の全権を握る日も近くない。そうなれば、王家との間柄を強固とし、第一王女と結婚するという野望も叶う。
しかし、兄が無能だと噂されるのだけは避けなければならない。すべての兄弟姉妹の中で、一番優れている必要があった。
――そこで、一番邪魔だったのが、ミラだった。
最悪なことに、次代聖女として、ミラのことを指名した王都呼び出しの召喚状が届いて、兄・シーラスは窮地に立たされたのだ。
聖女とは、才あるものを「聖女」という役職で呼び、教育を受けさせて、最終的には治療に欠かせない聖魔法や神との交信をする神聖な存在である、といわれていた。
ミラが聖女に就いてしまっては、いよいよ、シーラスは野望が叶わなくなる。
王家は無理をして彼との結婚をする必要がなくなるのだ。聖女というつながりがあればシーラスは用済みとなってしまう。
それは長女のフェリスも同じ立場に立たされていることを兄は知っている。自分ではなく、まさかミラが選ばれるなど、才で負けていると公言されるようなものであり、貴族社会ではとんだ赤っ恥である。
しかも、半分軟禁状態だったはずのミラの才能がバレたのは、もちろん、兄のシーラスと長女のフェリスが原因だった。
シーラスは、自分のほうが上だと自覚させて将来的に有利な立場にしようとした。
その際に剣術訓練と称して、素人のミラ相手に木剣で滅多打ちにした。彼はいずれ剣聖を次ぐとも噂される実力があった。
しかし、日を追うごとに、ミラに押されるようになり、1ヶ月もしないうちに、負けてしまった。僅かな期間で剣の才能を上回ったのだ。
「ふん、このくらいの剣術、庶民なら誰でもできる」
「手加減してやってるんだ、これくらい当たり前だが、まだまだだ」
と言い聞かせておいたが、見ていた家政婦メイドの誰かが王家に告げ口したのだろう。あいつらは口が軽い、とシーラスは憤慨した。
同じようなことを長女のフェリスもしていることを知った。
その内容が、さまざまな教養という名の軟禁である。
とはいっても、誰も知らないような古代語の知識や国家の歴史資料、他国の言語、魔法知識、神話・伝承、生き物や物質の成分などだ。知らないと恥ずかしいと、部屋に軟禁するための口実を作り、外に出さないようにしていた。
しかも、どの知識もほとんど実際の生活で役に立たないものばかりだった。
ミラを『できそこないの妹』にして、上の立場でいるために。
ところが、ミラは姉・フェリスが押し付けた知識を見たら一度で全部覚えた。しかも、内容をすぐに理解していたのである。
いよいよ覚えさせる知識も底をつき、部屋に留める理由がなくなった。
その知的な才能を、やはり家政婦メイドの誰かが王家に告げ口したのだろう。
その結果、優れた才を持つ末妹として王家の聖女にふさわしいと認識されるようになったようだ。
これはまずいと、シーラスたちは、自分たちの仕事をミラにやらせて、その成果だけを横取りしようとした。
しかし、それは父親にバレて、結局続かなかった。やはり家政婦メイドの誰かが父に告げ口したのだろう。
召喚日直前には、聖女に関する返事が来ないことを不審に思ったのか、ついに王家の馬車が来た。
シーラスたちは、なんとかして、ミラを亡き者としたかったが、直接手を出すわけにはいかず、森の魔物たちに殺してもらうことにした。
この国の犯罪者認識システムは高度で、魔法での鑑定時に一発で殺人がバレてしまうからだ。
そのため、長女のフェリスは何かと理由をつけて、ミラに森へ行くように仕向けた。
念のため、帰ってくるようなら、来客にばれないように追放することを副案とした。もちろん、父親には内緒でだ。
勝手に森の方でくたばってくれれば幸いである。
領地を追放されてこの時期に食料もなしで徒歩の旅は不可能な田舎の領地だ。絶対に追放すれば野たれ死ぬだろう。
兄・シーラスと姉・フェリスが情報を捻じ曲げ、「ミラは聖女の役割を放棄して森に逃げ、魔物に食われた可能性が高い」ことを王家に伝えたのである。もちろん嘘の情報だが、ミラが死ねばそれもバレることはないだろう。
追放したミラが家に帰ってくることはなかった。
――彼らは、その夜、ミラが生きている可能性はなく、死んだであろうことに大いに喜んだ。
自分が当主となり、この家の全権を握る日も近くない。そうなれば、王家との間柄を強固とし、第一王女と結婚するという野望も叶う。
しかし、兄が無能だと噂されるのだけは避けなければならない。すべての兄弟姉妹の中で、一番優れている必要があった。
――そこで、一番邪魔だったのが、ミラだった。
最悪なことに、次代聖女として、ミラのことを指名した王都呼び出しの召喚状が届いて、兄・シーラスは窮地に立たされたのだ。
聖女とは、才あるものを「聖女」という役職で呼び、教育を受けさせて、最終的には治療に欠かせない聖魔法や神との交信をする神聖な存在である、といわれていた。
ミラが聖女に就いてしまっては、いよいよ、シーラスは野望が叶わなくなる。
王家は無理をして彼との結婚をする必要がなくなるのだ。聖女というつながりがあればシーラスは用済みとなってしまう。
それは長女のフェリスも同じ立場に立たされていることを兄は知っている。自分ではなく、まさかミラが選ばれるなど、才で負けていると公言されるようなものであり、貴族社会ではとんだ赤っ恥である。
しかも、半分軟禁状態だったはずのミラの才能がバレたのは、もちろん、兄のシーラスと長女のフェリスが原因だった。
シーラスは、自分のほうが上だと自覚させて将来的に有利な立場にしようとした。
その際に剣術訓練と称して、素人のミラ相手に木剣で滅多打ちにした。彼はいずれ剣聖を次ぐとも噂される実力があった。
しかし、日を追うごとに、ミラに押されるようになり、1ヶ月もしないうちに、負けてしまった。僅かな期間で剣の才能を上回ったのだ。
「ふん、このくらいの剣術、庶民なら誰でもできる」
「手加減してやってるんだ、これくらい当たり前だが、まだまだだ」
と言い聞かせておいたが、見ていた家政婦メイドの誰かが王家に告げ口したのだろう。あいつらは口が軽い、とシーラスは憤慨した。
同じようなことを長女のフェリスもしていることを知った。
その内容が、さまざまな教養という名の軟禁である。
とはいっても、誰も知らないような古代語の知識や国家の歴史資料、他国の言語、魔法知識、神話・伝承、生き物や物質の成分などだ。知らないと恥ずかしいと、部屋に軟禁するための口実を作り、外に出さないようにしていた。
しかも、どの知識もほとんど実際の生活で役に立たないものばかりだった。
ミラを『できそこないの妹』にして、上の立場でいるために。
ところが、ミラは姉・フェリスが押し付けた知識を見たら一度で全部覚えた。しかも、内容をすぐに理解していたのである。
いよいよ覚えさせる知識も底をつき、部屋に留める理由がなくなった。
その知的な才能を、やはり家政婦メイドの誰かが王家に告げ口したのだろう。
その結果、優れた才を持つ末妹として王家の聖女にふさわしいと認識されるようになったようだ。
これはまずいと、シーラスたちは、自分たちの仕事をミラにやらせて、その成果だけを横取りしようとした。
しかし、それは父親にバレて、結局続かなかった。やはり家政婦メイドの誰かが父に告げ口したのだろう。
召喚日直前には、聖女に関する返事が来ないことを不審に思ったのか、ついに王家の馬車が来た。
シーラスたちは、なんとかして、ミラを亡き者としたかったが、直接手を出すわけにはいかず、森の魔物たちに殺してもらうことにした。
この国の犯罪者認識システムは高度で、魔法での鑑定時に一発で殺人がバレてしまうからだ。
そのため、長女のフェリスは何かと理由をつけて、ミラに森へ行くように仕向けた。
念のため、帰ってくるようなら、来客にばれないように追放することを副案とした。もちろん、父親には内緒でだ。
勝手に森の方でくたばってくれれば幸いである。
領地を追放されてこの時期に食料もなしで徒歩の旅は不可能な田舎の領地だ。絶対に追放すれば野たれ死ぬだろう。
兄・シーラスと姉・フェリスが情報を捻じ曲げ、「ミラは聖女の役割を放棄して森に逃げ、魔物に食われた可能性が高い」ことを王家に伝えたのである。もちろん嘘の情報だが、ミラが死ねばそれもバレることはないだろう。
追放したミラが家に帰ってくることはなかった。
――彼らは、その夜、ミラが生きている可能性はなく、死んだであろうことに大いに喜んだ。
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