実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~

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1-5.ハーフリングと買い物

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 翌日、ミラは冒険者ギルドに依頼を探しに行った。
 服はドレスということもあり、乾ききらないのか少し湿っていた。
 仕方なくドレスに袖を通して、必要そうなものを準備し、部屋を出た。

 冒険者ギルドに来た目的は薬草採集の依頼を受けることだ。
 冊子で読んだとき、冒険者の仕事の中には「薬師」がポーション作りに使う「薬草採集の依頼」があることを知った。この街に来る途中でも多くの薬草を摘んできた。
 これなら自分でもできそうだと思ったのである。

 この依頼を受ける人の中には、薬草知識を増やすことで、いずれ薬師となり、ギルドに依頼を発注する道具店の薬師見習いとしての道がひらけるらしい。
 ツテのない者は、こうやって地道に薬のことを学び、いずれ弟子入りするか、専門の学院に通うことが冊子には書いてあった。
 この冊子は意外と情報網羅に優れているようで、ミラのような初心者の冒険者でもわかりやすい。


 ギルド内を歩いて、掲示場所にたどり着く。
 さまざまな種類の薬草が掲示板の紙に張り出されて、依頼がされている。報酬もバラバラだ。

 ミラはその張り紙のすべてを見て、その場で『全部』記憶した。それが当たり前であるかのように、その場を後にする。

 最初ということもあり、ポム草という名前の草を採集する依頼を受けることにした。5本で銅貨10枚だ。
 その依頼書を受付に持っていくと、昨日と同じ受付の女性が対応した。

「最初の依頼になりますので、ベテランの方に指導をお願いしています」

 とのことだった。紹介されたのは、大人とは思えない子供のような姿の小さい女の子だった。ハーフリングという種族らしい。

 ミラは挨拶した。

「あの、よろしくお願いします」
「ボクはピタ。よろしくね?」

 元気で明るい感じ。髪は茶色で背中くらいまである、おさげに髪を結んでいる。ずんぐりとしたところが少し可愛い雰囲気のある女性だ。

「私はミラです。ピタさんが付いてきてくださるのですか?」

「そうだよ? それにしてもミラちゃん。先に服を買うべきじゃないかな? そのドレスで森に入るつもり?」

 ミラは冒険者ギルドを見回して、服装を観察した。ピタもしっかりと冒険者の格好をしている。武器は弓のようだ。
 やはり、自分の服装ドレスは冒険者活動をするとなると違和感があるらしい。

「では、先に買い物をしてからですかね……」
「じゃあ、露店に行こう!」

 そうして、ピタのあとを付いていき、露店で中古の服を購入した。
 女性用防具を勧められたが、魔物と戦うのは無理なので、ただの女性用冒険服を選んだ。
 緑のトップスに少し短めのスカートで、動きやすい細工がしてある。下履きの短いズボンとセットだ。

 一応、採集用の革袋とナイフも購入するように言われた。ナイフは新品の値段が高いため、どちらも使い古しの安いものを選んだ。研げばまだ使えるらしい。
 それとは別に、草を詰める用の大きな布袋も購入した。お守り用に、以前摘んだあの草を入れるつもりだ。

 街の門を出て、向かうのはすぐ近くにある森だった。
 この辺には下級ポーションの材料となるポム草が生えている。
 
「それにしても、ミラちゃんはなんで、冒険者に? というかこの街に?」
「その、実家でいろいろあって……」
「う~ん、まあ、冒険者になる人っていろいろあるよね。詳しくは聞かないけどさ。でも、大丈夫かなって」
「魔物ですか?」
「そうそう、この森って魔物が出るんだよ。あっちの道に続く深い森なんて、凶暴な魔物がうじゃうじゃいるよ? 怖いよね。でも、まさか何の防衛手段も持たずに森へ入ろうとしているなんて、そのほうが驚いたよ」

 確かに、ミラは言われなければ防具や武器、冒険者用の服を持つ発想すらなかった。
 いまあるのも採集用のナイフだけだし、とピタは少し笑いながら言った。

「そういうものだと知らなくて」
「ミラちゃんは何か武器は使えないの?」
「剣を『庶民』程度になら、と言われたことがあります。(兄によると)全然ダメらしいですけど。手加減をした動きの遅い兄にやっと当てられるくらいです」

 ミラは剣聖と噂される兄の動き全力の動きを遅いと言い切った。

「そっかー。じゃあ、魔物相手には通用しないね」

 残念、とピタはこぼす。

「そういえば、ここに来る途中に魔物に襲われました」
「どんな魔物?」
「猪みたいな姿で、大きかったです。すごい突進をして、動きも早かったです」

 ミラは詳しく魔物のことを説明した。
 ピタはその説明を聞いているうちに、だんだん顔色が青ざめていった。

 ピタは足を止めた。ミラに振り返ると、かなり驚いた顔をしていた。

「それ、『フレアボア』じゃない? でもまさか……ミラちゃん襲われたって本当なの? 襲われたのに生きてるよね……?」
「はい、ですが立ち去ってくれました。突進されて吹き飛ばされたのでケガはしましたけど」
「え……、ホントに?」
「はい」

 信じられないという顔でミラを見るピタ。そういえば、とピタは思い出す。
 あのドレス、腹部に血のような跡があった。

 だが、すべてが信じられないのも無理はない。
 
「だってさ、フレアボアって、ランクBの危険な魔物だよ? 生きているなんて奇跡だよ!」
「そうなんですね。たしかにあれは奇跡かも」
(草がいっぱい生えていて、逃げてくれたから)

 若干話が噛み合わない2人だった。

「昔、フレアボアの討伐を名乗り出た冒険者がいて、そのパーティに付いていったけど、あれに突進されて彼、即死だった。みんなリーダーが相手している間に撤退を余儀なくされたけど、そのリーダーも足止めで死んじゃった」
「やっぱり危険だったんですね……」

 ミラは布の袋に入った草をちらっと見た。
 この草の生えている場所を偶然見つけなければ、あそこで死んでいたかもしれない。そう思うと少し身震いした。

「でもまあ、この森にはそんな危険な魔物はめったに出ないから大丈夫だよ」 
「そうなんですね。それなら安心で――」

 そのセリフをピタは手で制して遮った。

「それで安心されても困るよ? 魔物がいないわけじゃないからね」
「すいません。気をつけます。でも私、魔物相手に戦えませんよ?」
「まあ、冒険者の宿命だから、戦えない人が魔物と遭遇したら運がなかったと思うしかないよ。それでも最低限の護身はするべきだけどね。それに採集用のナイフじゃ魔物を撃退するのは無理」
「わかりました。お金ができたら護身用の武器も早めに買うことにします」

 ピタは笑顔で偉い偉いと、まるでミラを子供扱いした。

「あの、失礼かもしれないんですけど、ピタさんって何歳なんですか?」
「ん? 今年で24歳だよ?」

 ミラよりもずっと年上らしい。その年齡でこの小さな見た目にミラは驚かされる。大人とは聞いたが、接していると少し歳が上くらいに考えていた。だが、見かけよりずっと大人だった。
 ミラの22歳の長女よりも年上だ。

「思ったよりも歳上なんですね」
「まあ、ハーフリングはいつもそんな感じの反応をされるね。最近は気にならなくなったけど」
「あ、ごめんなさい」
「別にいいよ。ミラちゃんは悪い子じゃなさそうだし」

 二人は草原を暫く歩くと、森の中に入っていった。
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