実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~

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1-10.調合を依頼する

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「スフィアさん、どうすればいいんでしょうか?」

 ミラは「弟子入りしなくてもいいから、話を聞いてほしい」と工房に訪れたが、一度昨日の今日だったこともあり、またしても断られてしまった。

 ミラはテーブルの上を見つめた。そこにはいつもと様子の違うスフィアがいた。
 スフィアはぐったりした様子で言葉を返す。

「え……、いまなにか言いましたか?」

 ミラは改めて声をかける。

「もしかしてすごく疲れてます?」

「もう……ダメかも」

 親指と人差し指で丸の形を作って、身体をぐったりとテーブルにつけた。そのまま顔もテーブルにぺたりと沈んだ。

「やっぱり、この前のお偉いさんが来たのが、何か大変だったのですか?」
「ええ、そう、そうなのよ!」

 急に元気の出たソフィアが顔を上げ背筋を伸ばす。
 よほどの何かあったらしい。

「何かは知りませんけど、大変だったんですね」
「それで用事は何だっけ?」
「はい、見学も断られてしまってどうしようかと思いまして」
「じゃあ、薬師の指名依頼でも出してみたら?」
「それって、私でも出せるんですか?」
「もちろん。ただ、お金が少し多くかかるけど」
「それでも学院の費用よりはずっと安いですし、当てもないので、依頼を出します」

 ミラはこの方法しかないと拳に力を込めて、依頼出しを進めるようにお願いした。
 しばらく、手続きをして、お金を払い、後ほど指名依頼が通達されるという。
 貯めていたお金の半分以上が消えた。

 だが、方法としては確実だ。
 この街のギルド所属の薬師は、指名依頼を断れない立場にある。
 それを逆に利用したというわけだ。


 数日後。
 ギルドには2人の姿があった。
 ミラは、それを見て首を傾げたのだ。

「あれ? 2人ともいるんですか?」

 ソフィアがそれに答える。

「あ、ごめんなさい、通達相手を間違えて2人に送っちゃいました(テヘペロ)」

 明らかに嘘っぽい言い訳で、2人とも呼び出しに成功したらしい。
 とはいえ、調合や魔法を見せてくれるなら、どちらでもミラは良かった。どっちに通達を送るかはソフィアに任せていた。そのため、どちらが来るかイメージして個別に対応を考えていた。だが、2人とも一緒というのは想定外だった。

「どういうことかな? 説明がほしいなぁ」
「あなたギルド受付嬢でしょ! 何考えているのよ。こっちは忙しいのよ?」

 2人は最初、ソフィアに通達ミスの文句をつけていたが、次第に互いの悪口に発展していき、最終的に、どちらが案件を受けるのかという言い争いに変わっていった。

「君が受ければいい! 本当は暇なんだろう。最近は薬師の仕事受けていないって聞いたよ」
「誰がチクったの! あ、あんただって暇してるんでしょ? 変な趣味にハマっているって聞いたわよ? 仕事そっちのけで、良いご身分ね」
「な、なぜそれを!」

 2人の後ろ暗い情報をそれぞれに流していたのが、ギルド受付嬢のソフィアだった。
 ソフィアはため息を付いて、2人の間に入り、喧嘩の仲裁にかかる。

「あの~、無駄な喧嘩はそのへんにして、そろそろ決めませんか?」

「無駄なんかじゃない」
「何勝手なことを言っているのかしら」

「じゃあ、ミラちゃんはどっちが良い?」

 話を振られたミラは、どちらでも良かったため言葉に詰まった。

「えっと、どっちでも構いません……けど」

 そう言われた瞬間、2人の顔色が変わった。

 少しだけ焦ったように見えたのだ。

「僕のほうが良いだろ?」
「私よね? 色々教えてあげられるわ」

「おい、君は嫌なんじゃなかったのか?」
「そっちこそ!」

 ミラは言葉を失った。なぜこの2人は、急にやる気に満ちたことを言い出したのかと。
 そこにひっそりと耳打ちをしたのがソフィアだ。

「ナイスな返答です。この2人、プライドだけは高いから、どっちでも良い、みたいなことを言われたのが、同じ弟子として負けたようで嫌だったんです」

「つまり、私に教えたいから、ではなくて、相手に下だと思われたくない、から?」
「そうそう」

 結局、口喧嘩は収まらず、報酬は1人分しかないが、2人ともミラに調合を見せてくれることになった。ここで、どちらが優れているかを決めるつもりらしい。

「「どっちが良かったか、最後に君|《あなた》が決めて!」」

 ミラは唖然とする。
 苦笑いを浮かべながら「はい」と答えるしかなかった。

 段々と、趣旨がずれてきた。だが、調合を見られるのならどちらでも良かったのだ。
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