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2-1.飼うなら犬が良い
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ミラは、あの事件以降、魔物のことを調べることにした。
とりあえず、書庫で一通り魔物の書物は読んでおく。
この街では、AランクやBランクの魔物の出現はほぼなく、比較的C~Eランクの魔物が多い。
強力なBランク以上の魔物、さらに強いAランクは希少、Sランクは世界でも数体しか確認されていない。
存在は知られているが、目撃情報が少ない魔物もいる。例えば、フェンリルだ。狼のような姿をしていているが、体が大きく、強力な個体だという。
Sランクはどれも挿し絵がなく、文章でさまざまな憶測の情報が書かれていた。
それから、ミラはBランクの魔物の詳しい特徴を読んだ。
遭遇したフレアボアは、Bランクと記載があった。
フレアボアは、個体差が大きいためにBランクとはしているが、中にはAランク相当の個体もいるという。
深海クラゲでも異常個体がいたように、フレア・ボアも例外ではないらしい。
ミラは、異常個体について気になる。少し調べてみることにした。
すると、異常個体は、自然に発生する場合と、魔石や魔力の影響を受けて急速に成長する場合があるという。
「あの魔物はBランクだったのかしら? それとも異常個体だったのかしら?」
ミラには判断がつかなかった。
その日は、魔物の事が書いてある本を読みふけった。
***
ミラは久しぶりに日課の依頼で薬草採集に来ていた。
前日は、深海クラゲに穴だらけにされた代わりの防具服を買って、剣を鍛冶屋へ修理に出した。
というのも、ミラが切った異常個体は、生体器官が硬かったらしく、剣が少し欠けていたのだ。
その間は、代わりの剣を借りた。
その後は、謝罪行脚だ。
あの事件で使った気弾の威力がかなり強かったらしく、門の上部が抉れたのだ。
そこで、門の一部を魔法で削り取ったことへの謝罪に向かった。
だが、むしろ感謝されてしまった。
強度が足りないとわかったとか、それよりも功績がとか、言われるミラだった。
そんなこんなで、普段の日常を取り戻した。
***
大変だった昨日を思い浮かべながら、ミラは外を歩いた。
「今日は天気がいいし、ぽかぽかして気持ちいいわ」
採集に向かういつもの道。
雑木林の木の陰から顔を出すものがいた。
「まさか!」
ミラはそれを目の端でとらえて、足を止める。
ミラはとっさに剣の柄に手を添えた。
だが、その姿をはっきり見ると、小さくて白い毛をした犬(?)だった。
「ワンちゃん?」
ミラは警戒を解いて、木に近づいた。
「ぐるるるるるうぅ」
その白い犬(?)は、ミラのほうにゆっくりと近づいてきた。
「ぐるうぅ?」
ミラの記憶では、生物の本に犬の記述があり、その動物を家族として飼っている人もいるという。俗称がワンちゃんだ。実家にはいなかった。
「でも変ね。あんまり本で読んだ犬っぽくないわ。魔物かしら?」
かといって、ミラは魔物の本をありったけ読んできたため、外見が一致する魔物が、記憶に一体もいなかった。
「ぐる……」
ミラは少し近づいてその姿を確認する。小型のサイズ感。
ふさふさした毛だ。
なぜ警戒心を解いたのかわからないが、ミラに近づいてくる。
その犬は頭を差し出した。
「撫でてほしいのかしら?」
ミラは、ゆっくりと頭を撫でると、気持ちよさそうにした。
「なんか、可愛い。う~ん、私の知らない魔物かしら? それなら、街には連れていけないわ」
魔物を気軽に街に引き入れることはできない。せっかく城門で守っているのに、内側に魔物を入れてしまうと守りが難しくなるからだ。
「ぐるるうぅ」
白い犬は、少し寂しそうに鳴き、きらきらした目でミラを見た。
「うっ! けど、魔物はダメよ。それに犬は『ワンっ』とか『キャンッ』とか鳴くと書いてあったはずだわ。街には連れていけないわ……」
やっぱり知らない魔物だと、ミラは自分に言い聞かせた。まるで言い訳のようだ。
すると、それを聞いた白い犬は、口をもぐもぐした。
そして、
「ぐるぅ……わんっ!」
犬のように鳴いた。
「え?」
「わんっ、わんっ!」
急に犬の鳴き声を始めたのだ。
ミラはその鳴き声を聞いて驚いた。
まるでミラの話を聞いて、理解し、犬であるかのように振る舞った。
「やっぱり犬なのかしら?」
ミラは、それに気づかず、よしよしと撫でた。
「喉になにか詰まっていたのね」
白い犬を見ると、足をケガしていた。
「薬草を塗ってあげるから足を見せて」
すると、犬の方から引きずる足を出した。
「あなた、賢いのね」
言葉を理解して、薬を塗ってもおとなしくしている。賢い子だと理解する。
。
ミラはその白い犬を両手で抱えて持ち上げる。
(犬なら大丈夫よね?)
一瞬、狼のような魔物かもと恐れたが、本にはこのような狼の魔物はいなかった。
こんなところに置いていったら、うっかり魔物の生息域に迷い込んで食べられてしまううのではないかと心配になる。
「これは保護よ……。保護は大事だわ」
何重もの言い訳を自分にして、ようやく、街に連れて行くことに決めた。
ミラは白い犬を一度地面に下ろす。
足のケガが治ったことで少し活発になったのか、ミラの周りをしばらく走って、足元に待機した。
とりあえず、このまま白い犬を連れて採集を続けた。
犬には亜種がたくさんいて、どの犬種かはわからない。
「でもそうね。せっかく拾ったのなら名前をつけないと」
ミラは少しだけ考えた。毛の触り具合からなんとなく語感の合いそうなものを選んだ。
「う~ん、あなたの名前はシルクよ」
「わんっ!」
この名前を気に入ったらしい。
いつも通りに採集を終え、白い犬と街に一緒に帰ることにした。
***
門のところでは犬だと説明し、宿に連れて行くのだが、動物の持ち込みはダメらしく、困ったことになった。
「どうしましょう。あ、工房に行けば……」
ミラは譲り受けた工房でシルクを飼うことにした。工房の横に犬小屋を作る。
工房の中には生き物が口にすると毒となるような薬品があった。
下手に工房の中では飼えない。
それにここの工房は宿とは違って、周囲の建物なども近くないし、近くに散歩できる自然な場所もあった。
工房の番犬になってくれることも期待できる。
「大事な研究資料もあるから、防犯にもなるはず」
こうしてミラは、さまざまな言い訳を重ねて、森で拾った白い犬を工房で飼い始めた。
ふと、ミラは思い返す。
(そういえば、指名依頼の件、どうしましょう……)
ミラは冒険者ギルドで言われたことを思い出した。
***
それは、ミラが街にシルクを連れてきた日の依頼達成を報告に行った時のこと。
「これで依頼完了です。あ、ミラさん。実はミラさんに指名依頼が来ています」
「え? 私に指名依頼ですか?」
ミラは驚いた。
そもそも冒険者として採集しかしていないミラに指名依頼を出す理由がわからなかった。
薬師としても見習いで依頼を受けるような立場ではないのだ。
「はい、護衛任務です」
「……えっ! 護衛任務って」
ミラは言葉を失った。
採集ですらなく、守るための戦闘力や技術が必要な任務だ。
それをミラに依頼する意味がよくわからなくなった。
「2日後に護衛対象が来ますので、詳しくはその時に」
ミラはスフィアを観察した。
スフィアは真剣らしく、冗談ではないようだ。
「本当なんですね……」
「はい……。けど多分、大丈夫だと思いますよ」
「それはどういう……」
初めての護衛依頼でも深刻になる必要はないという。
「すみません。詳しくは言えないんです。この指名の護衛任務は詳細を先に話せないことになっていてるんです」
これ以上、護衛依頼の中身について話を聞けないとのことだ。
ミラは仕方なく、冒険者ギルドを後にした。
この国が定めた『指名依頼』のシステムは、ギルドが認可した以上、冒険者が断ることのできない依頼だ。
(けど、私は護衛できる戦力がないのだけれど……本当に大丈夫かしら? それ以前に、護衛任務をした経験もないのだけれど)
とりあえず、書庫で一通り魔物の書物は読んでおく。
この街では、AランクやBランクの魔物の出現はほぼなく、比較的C~Eランクの魔物が多い。
強力なBランク以上の魔物、さらに強いAランクは希少、Sランクは世界でも数体しか確認されていない。
存在は知られているが、目撃情報が少ない魔物もいる。例えば、フェンリルだ。狼のような姿をしていているが、体が大きく、強力な個体だという。
Sランクはどれも挿し絵がなく、文章でさまざまな憶測の情報が書かれていた。
それから、ミラはBランクの魔物の詳しい特徴を読んだ。
遭遇したフレアボアは、Bランクと記載があった。
フレアボアは、個体差が大きいためにBランクとはしているが、中にはAランク相当の個体もいるという。
深海クラゲでも異常個体がいたように、フレア・ボアも例外ではないらしい。
ミラは、異常個体について気になる。少し調べてみることにした。
すると、異常個体は、自然に発生する場合と、魔石や魔力の影響を受けて急速に成長する場合があるという。
「あの魔物はBランクだったのかしら? それとも異常個体だったのかしら?」
ミラには判断がつかなかった。
その日は、魔物の事が書いてある本を読みふけった。
***
ミラは久しぶりに日課の依頼で薬草採集に来ていた。
前日は、深海クラゲに穴だらけにされた代わりの防具服を買って、剣を鍛冶屋へ修理に出した。
というのも、ミラが切った異常個体は、生体器官が硬かったらしく、剣が少し欠けていたのだ。
その間は、代わりの剣を借りた。
その後は、謝罪行脚だ。
あの事件で使った気弾の威力がかなり強かったらしく、門の上部が抉れたのだ。
そこで、門の一部を魔法で削り取ったことへの謝罪に向かった。
だが、むしろ感謝されてしまった。
強度が足りないとわかったとか、それよりも功績がとか、言われるミラだった。
そんなこんなで、普段の日常を取り戻した。
***
大変だった昨日を思い浮かべながら、ミラは外を歩いた。
「今日は天気がいいし、ぽかぽかして気持ちいいわ」
採集に向かういつもの道。
雑木林の木の陰から顔を出すものがいた。
「まさか!」
ミラはそれを目の端でとらえて、足を止める。
ミラはとっさに剣の柄に手を添えた。
だが、その姿をはっきり見ると、小さくて白い毛をした犬(?)だった。
「ワンちゃん?」
ミラは警戒を解いて、木に近づいた。
「ぐるるるるるうぅ」
その白い犬(?)は、ミラのほうにゆっくりと近づいてきた。
「ぐるうぅ?」
ミラの記憶では、生物の本に犬の記述があり、その動物を家族として飼っている人もいるという。俗称がワンちゃんだ。実家にはいなかった。
「でも変ね。あんまり本で読んだ犬っぽくないわ。魔物かしら?」
かといって、ミラは魔物の本をありったけ読んできたため、外見が一致する魔物が、記憶に一体もいなかった。
「ぐる……」
ミラは少し近づいてその姿を確認する。小型のサイズ感。
ふさふさした毛だ。
なぜ警戒心を解いたのかわからないが、ミラに近づいてくる。
その犬は頭を差し出した。
「撫でてほしいのかしら?」
ミラは、ゆっくりと頭を撫でると、気持ちよさそうにした。
「なんか、可愛い。う~ん、私の知らない魔物かしら? それなら、街には連れていけないわ」
魔物を気軽に街に引き入れることはできない。せっかく城門で守っているのに、内側に魔物を入れてしまうと守りが難しくなるからだ。
「ぐるるうぅ」
白い犬は、少し寂しそうに鳴き、きらきらした目でミラを見た。
「うっ! けど、魔物はダメよ。それに犬は『ワンっ』とか『キャンッ』とか鳴くと書いてあったはずだわ。街には連れていけないわ……」
やっぱり知らない魔物だと、ミラは自分に言い聞かせた。まるで言い訳のようだ。
すると、それを聞いた白い犬は、口をもぐもぐした。
そして、
「ぐるぅ……わんっ!」
犬のように鳴いた。
「え?」
「わんっ、わんっ!」
急に犬の鳴き声を始めたのだ。
ミラはその鳴き声を聞いて驚いた。
まるでミラの話を聞いて、理解し、犬であるかのように振る舞った。
「やっぱり犬なのかしら?」
ミラは、それに気づかず、よしよしと撫でた。
「喉になにか詰まっていたのね」
白い犬を見ると、足をケガしていた。
「薬草を塗ってあげるから足を見せて」
すると、犬の方から引きずる足を出した。
「あなた、賢いのね」
言葉を理解して、薬を塗ってもおとなしくしている。賢い子だと理解する。
。
ミラはその白い犬を両手で抱えて持ち上げる。
(犬なら大丈夫よね?)
一瞬、狼のような魔物かもと恐れたが、本にはこのような狼の魔物はいなかった。
こんなところに置いていったら、うっかり魔物の生息域に迷い込んで食べられてしまううのではないかと心配になる。
「これは保護よ……。保護は大事だわ」
何重もの言い訳を自分にして、ようやく、街に連れて行くことに決めた。
ミラは白い犬を一度地面に下ろす。
足のケガが治ったことで少し活発になったのか、ミラの周りをしばらく走って、足元に待機した。
とりあえず、このまま白い犬を連れて採集を続けた。
犬には亜種がたくさんいて、どの犬種かはわからない。
「でもそうね。せっかく拾ったのなら名前をつけないと」
ミラは少しだけ考えた。毛の触り具合からなんとなく語感の合いそうなものを選んだ。
「う~ん、あなたの名前はシルクよ」
「わんっ!」
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「どうしましょう。あ、工房に行けば……」
ミラは譲り受けた工房でシルクを飼うことにした。工房の横に犬小屋を作る。
工房の中には生き物が口にすると毒となるような薬品があった。
下手に工房の中では飼えない。
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工房の番犬になってくれることも期待できる。
「大事な研究資料もあるから、防犯にもなるはず」
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ふと、ミラは思い返す。
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***
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「これで依頼完了です。あ、ミラさん。実はミラさんに指名依頼が来ています」
「え? 私に指名依頼ですか?」
ミラは驚いた。
そもそも冒険者として採集しかしていないミラに指名依頼を出す理由がわからなかった。
薬師としても見習いで依頼を受けるような立場ではないのだ。
「はい、護衛任務です」
「……えっ! 護衛任務って」
ミラは言葉を失った。
採集ですらなく、守るための戦闘力や技術が必要な任務だ。
それをミラに依頼する意味がよくわからなくなった。
「2日後に護衛対象が来ますので、詳しくはその時に」
ミラはスフィアを観察した。
スフィアは真剣らしく、冗談ではないようだ。
「本当なんですね……」
「はい……。けど多分、大丈夫だと思いますよ」
「それはどういう……」
初めての護衛依頼でも深刻になる必要はないという。
「すみません。詳しくは言えないんです。この指名の護衛任務は詳細を先に話せないことになっていてるんです」
これ以上、護衛依頼の中身について話を聞けないとのことだ。
ミラは仕方なく、冒険者ギルドを後にした。
この国が定めた『指名依頼』のシステムは、ギルドが認可した以上、冒険者が断ることのできない依頼だ。
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