初めに戻って繰り返す

都山光

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1章:外伝

1章外伝5…その頃の召喚組『迷宮挑戦④:モンスターハウス』

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迷宮に潜り始めて数時間が経過した。
参加した召喚者達は慣れない行軍と魔物との戦いに、流石に疲労の色の見える者もおり、次の階層である20階層に挑む前、安全のある場所でしばし休息をとっていた。
座りながら水分を取ったりと疲れを取ろうとしている少年少女にヴァレンシュが声を掛ける。

「さて、休憩しながらでいいので皆、俺の話を聞いてくれ。まずだが、君達の上達には称賛を送る。初心の冒険者や騎士が挑むこの迷宮をこれだけの速度で攻略できるとは思っていなかった。この分ではあと数時間もすればこの迷宮の攻略を終える事が出来ると踏んでいる」

称賛を送るヴァレンシュの言葉に「ふふん、あたりまえだ」と満更でもない言うような、褒められて嬉しいような笑みを浮かべるクラスメイト達。
自分達も強くなっている実感を得ていた故にであろうか。

「この休息後に、この下の階層である20階層に挑むことなる。そして迷宮と呼ばれし場所に存在する、ある一定の階層を進むと現れる”迷宮の試練”が発生する」
「迷宮の試練?それはどういう事ですか?」

聞きなれない言葉に聞き返す”勇者”神童正儀。

「うむ。迷宮の試練。別名を【モンスターハウス】とも言う階をそう称している。このモンスターハウスでは今までよりも強力な力や能力を持つ魔物が現れたり、今まで以上の多数の魔物が一度に出現する厄介な所なのだ」
「…ゲームで言う所の、中ボス戦って感じなのかな」
「そうだな、なんかそんな風が近い気がするな」

武藤遊一と瀬戸海治がヴァレンシュの説明をそう感想を抱き確認しあう。
他の者も的を得ているなとその声に頷く。

「強力な魔物が出現した場合は我々騎士が前衛を務め牽制を掛け、そして皆が援護し撃破を狙う。そして多数の魔物が出現する場合は、皆それぞれ組んでいる各チームで連携を取りつつ戦うように。まあ、この迷宮に関しては調査済みなのでな、この迷宮のモンスターハウスとして出現するのは多数の魔物と分かっている。故に、これよりはチーム単位で行動する様にしてくれ。なに、一チームに一人我々騎士が護衛に付く。まず正儀のチームにはギルバートが付く」
「よろしくお願いしますギルバートさん」
「こちらこそだね。勇者君のお手並みは今までも見せてもらっていたからね。俺が足を引っ張らないように気を付けるよ」

正儀チームと騎士ギルバート。
お互いに宜しくと言いあうと、この先について話し合う。



「剛のチームにはアルフレッドだ」
「頼むぜ。…と言っても、俺には護衛もクソもいらねぇからな。アンタはあの二人を守ってやれや」

つよしは親指を今回組んでいる遊一と海治に向けながらそう告げた。
それに臣は、

(えっ!?僕には!?僕一人?)

と思った。
剛に告げられたアルフレッドは表情を変えず了承を告げ、遊一と海治の二人の方に向く。

「……わかりました。…御二方どうぞよろしく」
「こちらこそ。済みません、アイツが失礼な物言いをして」
「……御気になさらずに」

王国一の冷静クールな騎士アルフレッド。剛田の傲岸な物言いも彼には風の様に吹くだけのようだった。

(ク、クールな人だ)
(クールだな。普通あんな嫌味な物言いされたら少しでも不満の表情を浮かべるだろう)
(そうだね。アルフレッドさん眉一つ動かさないなんて、気にもしてないってことかな?)

アルフレッドのその様子に臣、遊一、海治は『クールな人だ』と呟くのだった。



「リルカのチームにはグラッセが付く」
「よろしくお嬢さん方」

ヴァレンシュに紹介されたグラッセは思わず頬を染めて魅了でもされるのでは思わせる笑みで挨拶をする。

「ふふっ、こちらこそですわ。このわたくしの舞に付いて来られるようにお願いしますわ」
「よろしくです♪」
「…よろ」
(美形の騎士だわ~)
(……美形だ…興味ないけど)
「よ、よろしく、お願いします」
「ふふ、こちらこそお嬢様方♪」

爽やかな女性を虜にしそうなイケメンの笑みで答える騎士グラッセ。
女性を虜にするような笑みだ。最も、彼の爽やかスマイルも4人中一人にしか効いていないようだったが。
余談だが、もし彼の笑みの虜になったとしても無駄であるが。それは彼の女性の守備範囲はロリっ娘なので意味はなかっただろう。



「最後に咲夜、君達のチームだ。ドーゼ、この者達は目を離さないようにな」
「分かりました」
「…なんか護衛より御目付け役って感じがするわね」
「…不本意だけど、アンタと同意」
「アハハっ」

正儀、剛、リルカのチームパーティは最初からチーム編成されていたが、咲夜、命、守はチームを組んでいないワンマンパーティだった。しかも咲夜、命の二人は単独行動を希望する問題児故に勝手な専攻をしない様にと言う名目のお目付け役だった。



20分程休憩した後、いよいよ20階層に進む。
歩く先には階段のような場所があり、その階段を下れば次の階層の様だ。
その階段を降りると大きな空間が広がっていた。
その広さは、野球場くらいはあるのではないだろうか…

(迷宮ってすごいのね。ここまででもかなり深く降りてるはずなのにまだこんな広い空間があるなんて。しかもほかにもあるって迷宮はもっと深いらしいし……!?…何か嫌な感じがするわね)

空間に足を踏み入れた時から、咲夜は何か嫌な気配がしたのだった。
その咲夜の感は的中したのか、この広間の中心に突然魔方陣が浮き上がった。
そして浮かび上がった魔方陣の中心に濃い密度の魔力が溢れたのだった。また同時に先程降りてきた階段のような場所に扉がされたのだ。つまり閉じ込められたという事だろう。
溢れていた魔力は、いくつもの2メートル以上はある、まるで鬼のような灰色の姿をし、右手に棍棒の様な武器を持っている魔物【オーガ】へと姿を変えたのだった。

「来るぞ! 各自、チームと自分の“加護”の力を最大に使う事を意識して事に当たれ! 敵を殲滅できれば扉が開く。とにかく、各グループ、向かってくる相手を殲滅せよ!」

『モンスターハウス』迷宮の大きさによって変わるが、ある程度の階層を突破すると発生する仕組みになっており強力な魔物が現れたり、多くの魔物が現れたりする場所の事を言う。

ヴァレンシュの掛け声と共に、オーガ達が咆哮を上げながら襲い掛かってくるのだった。
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