シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜

ミコガミヒデカズ

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第1章 世界の半分をやろう

第2話 瞬間移動した先は見覚えある風景

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「しゅ、瞬間移動ッ!!」

 ブルーノさんこと青野さん、そして魔王の合体攻撃をかわすべく僕は魔法を唱えた。とっさの事だったので行き先なんかは考えてなかった、とにかく攻撃をかわす…それだけを考えて…。

 どさっ!!

「い、いたたた…」

 気がつくと僕はどこか硬い地面に僕は投げ出されていた。異世界での生活に慣れてきたところだったので石畳の上にでも落ちたか…、そんな風に思った。

「い、いや、違う。これ…、コンクリートだ。…いや、アスファルトって言うべきか」

 倒れていた身を起こすと僕のすぐ真ん前にはガードレール、どうやらここは歩道のようだ。その脇には電信柱があり、その上には歩行者用信号が灯っている。

「夜か…、時間は…九時…二十分過ぎか…。あ…、ここは…」

 自動車用信号灯の横に付いた交差点名を見て僕は地球に…日本に帰ってきた事を次第に実感してくる。

鴫田しぎた南交番前』

 見上げた先にある現在地を示してくれているプレート、馴染みがある地名だった。埼玉県中部にあるかつては小江戸と呼ばれた地方都市、僕はこの街で生まれ育った。

 そしてこの鴫田南交番前の交差点、ここが僕の異世界転移に至ったきっかけになった場所だ…。

……………。

………。

…。

 高校入学をきっかけに始めたアルバイト、その帰り道に僕はこの交差点を横断していた。その時に僕はトラックに轢かれそうになったのだ。

「君ッ、危ないッ!!」

 その時、飛びつくようにして助けてくれたのが青野さんだった。

 渋滞しがちな国道の迂回路、それがこの交差点を横切る県道…。鴫田南交差点はその県道が横切るいくつもの交差点の一つだ。

 僕はこの交差点の歩行者用の信号が青になって渡り始めた。すると、そこに横合いからトラックが突っ込んできた。完全なノーブレーキ、ドライバーが信号を見落としていたのかあるいは居眠りか…とにかく人を殺す事が出来る凶器が僕に迫っていた。

 青野さんにより間一髪の所で僕は難を逃れた。しかしトラックはかわせたけれど勢いは止まらない、車道を外れそのまま歩道に叩きつけられる…そう思ったのだがそうはならなかった。次の瞬間、僕と青野さんは見慣れない西洋風の神殿のような場所にいた。そして、その石畳のような所に僕らは投げ出された。

「う、うう…」
「間に合った…、良かった…。だ、だが…ここは…」

 トラックに轢かれる危機を免れ僕は胸を撫で下ろしたが見えている風景は見慣れた鴫田しぎた地区のものではない。

「あ…あなた方は…?」

 そこに声がかかった。声がした方を見ると瞳を閉じた女性がいた。わずかに紫がかった白い髪。そして肌も…、簡素な服…なんて言うか古代ギリシャの女性が着ていた服のような…。

 それが僕らの異世界転移だった。彼女は神殿に仕える巫女でサマルムーンさん、魔王の脅威にさらされている国を憂いて一心不乱に祈りを捧げていたのだという…。彼女いわく、自分には召喚魔法の知識は無いのでただ一心不乱に祈っていたのだという事だ。

「きっとその祈りが天に通じたのだと思います…」

 あれから異世界エニッスウェアはどうなったのだろうか…。サマルムーンさんは無事だろうか…。

「それにしても…、午後九時二十分過ぎか…。あのトラックに轢かれそうになったのも同じくらいの時間だったよな…。九時にバイトが終わって…帰り道でトラックに…。って事は…僕はあの瞬間に戻ったのか…、だとすると異世界にいた約1年半の時間はどうなるんだろう?あっちでの時間は経過してないのかな?」

 青野さんと共に異世界エニッスウェアでの魔王を倒す旅…、それには一年半の時間を要した。もしあれが夢なら僕もかなり想像力が豊かなものだ、命の危機があったのも一度や二度ではない。思わず独り言も洩れるというものだ。

 僕が信号脇の歩道に佇んでいると何か光るものが近づいてきた。どうやら懐中電灯の光のようだ、それを持った人物がこちらを照らしながら歩いてやってくる。

「あの、地面にしゃがみこんでどうしましたー?そこの交番の者でーす。ご気分が悪いとか、怪我をされたりとかされてませんかー?」

 近づいてくるのは警察官の制服姿の女性だった。そうか、この交差点は名前通り交番前にある。きっとそこの婦警さんだろう。

「あ、はい。大丈夫です。ちょっと転んでしまったみたいで…。あ、学ランが汚れちゃった…」

 そう言って僕は地面に倒れた時に服に付いた土埃をぱんぱんと手で払いながら立ち上がった。着ているのは学校指定の制服、いわゆる黒の学ランだ。ちゃんと汚れを払っておかないと目立つもんね。

「学ラン?え、ええっ!?」

 立ち上がった僕のすぐ近くに来た婦警さんは僕の姿を見て目を真ん丸にして驚いている。

「お、おとッ…男ッ!?あなた、男の人ですかッ!?」

 先程までののんびりとした口調とは違う切羽詰まったような必死さで婦警さんは僕に尋ねたのだった。



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