18 / 82
第2章 天然男子を巡る思惑とそうはさせない佐久間修
第17話 エリート官僚とやらが来た。
しおりを挟む「まずは七日間、佐久間修さんには当方指定の施設で『新しい日常復帰プラン』を受けていただきます」
政府の聞き慣れない部署からやってきた一人の女性がそんな事を言っている。年齢は30歳過ぎくらい、いわゆる派手髪をしており注意して見れば身につけている時計には宝石があしらわれている。
(あれはかなりの高級品だよな、百万とか二百万てレベルじゃない。確か…、異世界に行く前に銀座の高級時計店に強盗が入ったニュースがあったな)
その時計店の一番高価な品は五千万、それにも宝石が散りばめられていた。それで興味を持って高価な時計の一覧をスマホで眺めたんだっけ…。その時に見たうちの一つがその腕にあった。
真希子さんや真唯ちゃんとの再会から一夜明け翌朝…、僕は郊外である鴫田警察署から街の中心部にあるホテルに宿泊していた。すると、朝一番に僕宛ての連絡が来た。政府から今後の事について打診がある、それですぐに警察署に来てくれとの事だった。政府の役人、そして今現在の警備を担当している鴫田警察署並びに埼◯県警の面々が同席するとの事でこのホテルで集まるには手狭であった為だ。
そんな訳で朝からパトカーに揺られる。警備の意味もあり車両によるちょっとした大名行列だ。かつては小江戸とも呼ばれた城下町、今も古刹などがある観光地として名の知れた街なので宿泊施設も充実している。
ただ、鴫田警察署から距離はそんなでもないのに江戸時代から続く街なのでその道は狭い。すぐに渋滞し移動にも時間がかかる。およそ5キロほどの道のりに小一時間もかかった。おまけにマスコミが待ち構えていたり車で後をついてきたりする。さらには空にはヘリが飛んでるし…、移動だけで疲れるって初めてだよ。
警察署に着き、昨日と同じ第一会議室に入ると件の女性がいた。『朝早くから御足労をおかけして…』の一言も無い、とても嫌な感じだ。
会議室内には他にも警察幹部の人もいてその表情は苦虫を噛み潰したようで物々しさすら感じる。先程渡された名詞には何やら長々と所属が書かれているが、肩書きも相まって正直読むのが面倒くさい。
「男性が受ける研修を当方指定の施設で…って、それはどこで受ける事になるんですか?」
「はい。函館、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡の七都市を予定しております」
「えっ?一つの場所じゃないんですか?まあ研修内容によっては研修場所が変わるのかも知れませんが…。しかも男性の為の『新しい日常復帰プラン』って七日間ですよね。それで七都市ですか?一日一都市?移動だけで時間がかかりますよね、大丈夫なんですか?」
「ええ。復帰プランにつきましては特殊でも難解なものでもありませんし、移動の事などはご心配ありませんよ」
ははは、と笑いながら政府からの役人は語る。身につけている物や名刺にあった肩書きから考えるといわゆるエリート役人なんだろうな。
「全施設きヘリポートがあり、宿泊機能もあります。佐久間さんにおかれましては移動については建物の屋上から屋上へ、ヘリコプターによる空の旅をお楽しみいただくような形になります」
え?空の旅を楽しむ?それじゃ何の為の研修なのさ?研修自体も難解ではないし、その土地に行かなきゃ研修できない特別な物でもない?じゃあ、どうしてそんな全国行脚みたいなマネをしなくちゃならないのさ。その事を政府から来た役人の人に聞いてみた。最早、名前を覚える気も無い。
「研修は難解でも特別でもないんですよね?なら、そんな移動しなくても良いんじゃないですか?」
「ええ、そこなんです。今回は研修の他に各地でお顔を見せていただくと言うのが大事な目的です。各地におります我々の上層部はもちろん、有力な方々にお会いになる事は決して佐久間さんにおかれましてもプラスとなるでしょう。どうです、コレを機に全て我が省に全てお任せいただくというのは…?」
三日月のように唇の両端を上げながら言葉を続ける。
「きっとより良い待遇になりますよ、佐久間さんにとっても我々にとっても…ね」
いわゆるウィンウィンの関係ですよ、最後には満面の笑みでその人は言った。だが、僕にはそれがとてもおぞましいものに見えた。
確かにこの誘いに乗れば甘い汁とやらを吸う人生が待っているのかも知れない。だけど、操り人形みたいに利用される人生ってのも嫌だ。
「署長さん」
僕は真賀里さんに声をかけた
「ん、なんだ?少年」
「その復帰プランというのは県内で…。どこか近所で…、それこそこちらの署内で受けられたりはしないんでしょうか?」
「いや、出来るぞ。男性がある程度の年齢になったらやる一般的な研修でもあるしな。ウチだったらヤマさんとかハルさんが出来るな」
「それならこちらでお願い出来ませんでしょうか?人員配置とかご無理をおかけしない程度に…」
僕がそう言うと県の警察幹部の人達が破顔一笑、歓声を上げたり中にはガッツポーズを取っている人もいる。一方で慌てている人がいる。
「な、何を言っているのです!あなたは選ばれた人間なのですよ!私達についてくれば一生安泰、言わば上級国民としての生活が約束されます。人生思うがまま、そしてその功績で私もそこに足を踏み入れる事ができる!良いから来るんだッ、こんなちっぽけな警察署なんかでなく中央へ!ただ、それだけの事なんだッ!!」
政府から来た人は凄まじく興奮し、本音を隠す事なく撒き散らした。おそらくこの人は僕を連れ帰り、その手柄を片手にさらなる出世や地域地域の有力者とのコネでも狙っているのだろう。僕という存在が認識され、それを利用してやろうと現れた…そんな所か。
「それにこんな地方の警察署なんかで…」
「お言葉ですが…」
僕は相手の言葉を遮り口を挟んだ。
「鴫田署の皆さんは熱心に警護をしてくれました。それこそ不眠不休で。言うなれば寝食を共にするような感じで。こういうのに一番大切なのは信頼だと思いますし…」
「し、寝食…だと…」
政府の人も、警察のお偉いさん達も驚きを持って呟いているがとりあえず話を続けるか。
「だから研修は是非こちらの鴫田警察署さんにお願い出来ればと思います」
「ま、待って下さい。この一警察署では規模も人員も限られているでしょうッ!」
中央からの役人がまくしたてる。
「それなら心配いらんッ!」
県警のお偉いさん達が椅子から立ち上がる。
「警備に必要な人員なら我ら埼○県警がいくらでも周辺署から増援を送る!場合によっては本部からでも構わない。ゆえに安心して中央さんにはお帰り頂いて結構ですぞ」
「それに聞けばすでに寝食を共にするほどに信頼を得ている署員もおるようですからな。どうやら拒絶された中央さんとは違い、我々をご指名のようだ。中央さんはどうぞ安心してお帰り下さい、我々の方で滞りなく研修も警護も行いますので」
「バ、バカな…。この件は…も、もう上にも、各地のトップにも有力者にも決定事項として報告し伝わっているんです!会談をし、その方々に連なる年頃の御息女達にもこの機会に顔合わせをしていただくスケジュールも昨夜一晩で組んでいるんですよ!!く、工夫して分刻みの最大限に面会できるようにしたスケジュールを…。ど、どうなるんです、それは!?」
錯乱したように叫ぶ政府からの女性。いい加減、頭に来る。
「それはそちらの勝手な…、いやあなたの身勝手な計画でしょう?何が『新しい日常復帰プラン』ですか。やってる事はただ単にいきなりやって来て僕にあなたの出世の為の道具、あるいは人身御供《ひとみごくう》になれという事じゃないですか?」
僕はいったん息継ぎをする、そして『それに』と一言吐いて言葉を続けた。
「研修はいつやるんですか?ハッキリ言ってそんな分刻みの面会メインのスケジュール、研修する時間なんて無いじゃないですか!?」
「そ、それは空いた時間に…」
「どこにそんな時間がある!?夜も寝ずに学習しろって事ですか、寝る時間も削って…。それとも移動中のヘリの中ででも寝てろとでも言うんでしょうか?いや…、そのヘリの中でも寝ずに誰かと面会しろとか言うんじゃないですか?」
怒りもあったのか思わず僕は叩きつけるように言った。
32
あなたにおすすめの小説
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
男女比1:50の世界に転生したけど、前世の感覚で普通に接してたら幼馴染も姉妹もお嬢様もみんな沼にハマっていった件 ~ダンジョンにも潜ります〜
ベリーブルー
ファンタジー
男女比1:50――この世界で男は、守られ、大切にされ、穏やかに生きることを求められる存在。
だけど蓮は違った。
前世の記憶を持つ彼には、「男だから」という枷がない。女の子にも男の子にも同じように笑いかけ、距離を詰め、気負いなく手を差し伸べる。本人にとってはただの"普通"。でもこの世界では、その普通が劇薬だった。
幼馴染は気づけば目で追っていた。姉は守りたい感情の正体に戸惑い始めた。名家のお嬢様は、初めて「対等」に扱われたことが忘れられなくなった。
そして蓮はと言えば――。
「ダンジョン潜りてえなあ!」
誰も見たことのない深淵にロマンを見出し、周囲の心配をよそに、未知の世界へ飛び込もうとしている。
自覚なき最強のタラシが、命懸けの冒険と恋の沼を同時に生み出す、現代ダンジョンファンタジー。
カクヨムさんの方で先行公開しております。
男女比5対1の女尊男卑の世界で子供の頃、少女を助けたら「お嫁さんになりたい!」と言って来た。まさか、それが王女様だったなんて……。
楽園
恋愛
「将来、あなたのお嫁さんになりたい」
10年前、俺は魔法の力で一人の少女を救った。
……そして現在。ここは男女比5:1の女尊男卑の世界。
男は女に「選ばれる」ためだけの存在する。
俺、アルトは、前世の記憶と女でさえ持っていない無限の魔力を隠し、父と静かに暮らす「モブ」になるはずだった。
「待っていましたわ、アルト」
学園で再会したあの時の少女は、驚くべきことにリリアーナ王女だった。
どうやら彼女、あの日の「約束」を本気で果たしに来たらしい。
(俺の平穏なモブ生活が……!)
最強を隠したい男と、その秘密ごと彼を手に入れたい王女の、すれ違い学園ファンタジー!
貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら
普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。
そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる