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第4章 不意打ちから始まる高校生活

第63話 文化祭の事前説明会となにやらトラブルの予感

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 体育館に移動した。今日の六時間目は全校集会は行われた。

 その全校集会の目的は今月末に行われる文化祭についてのものだった。いくつかの高校を統合した河越八幡女子高校では大学受験などをする生徒もいればそのまま就職をする人もいる。進路をどうするにせよ何かと慌ただしい文化祭と体育祭をそれぞれ新学年にも慣れた五月と六月に行い、七月以降は受験であったり就職活動に集中出来るように大きな行事は極力少なくしているのだそうだ。

 今回の議題…文化祭についてなのだが、本来なら時間的な余裕を持たせる為に四月のうちから…少なくともゴールデンウィーク前に集会をしておくべき内容だ。しかし、水面下で僕の編入先をこの河越八幡女子高校で…という打診が水面下で行われていた。その為に学校としてはその対応に追われていた、しかも僕の安全などを考えればあまりおおっぴらにはできない。

 しかも一方では正式発表こそされていなかったものの私立貞聖高校に入学濃厚という噂もあった、おそらくは貞聖高校側が意識的に情報をリークしていたのだろう。その噂の事もあり状況を見守る為に状況を注視、結果として関係各所の対応が遅れたらしい。

 しかしまあ…、それも無理からぬ事なのかも知れない。『新しい日常復帰プラン』研修を終えていない男性に対し進学先や就学先などを斡旋したり、希望先を聞き出そうとしたりするのは禁止。中でも勧誘などをする為に接触をするのはもっての他、厳しく非難される。

 しかし、男性本人が自分から志望校について意思表示するのは構わないそうで僕が貞聖に対し友好的な雰囲気をにおわせた事で『正式な発表はないが貞聖高校さんで決まりじゃないの?』、そんな認識が一部ではあったという。

 それを急転直下、記者会見の席で僕が河越八幡女子高校への入学希望を正式に表明したものだからさあ大変。施設の改修やら手続きやらと僕が実際に入学する日まで学校側はとにかく準備に腐心していたという。

 僕としては最初から河越八幡女子高校に入りたい旨を伝えていたんだけれど、貞聖高校の外堀を埋めていくようなムード醸成により河越八幡女子高校側にも内心諦めムードみたいなものもあったそうで…。それで行事などについては色々と後回しになっていたとの事だ。

「では、学年集会を始めます。本日の議題は…」

 学年主任の先生がマイクを握り集会の開始を告げた。学園祭についての説明がされていく。一年A組は体育館の一番右側、二列に整列し今はフロアに座って話を聞いている。基本的には身長の順で並ぶのだが男子の僕は列の一番後ろという事になった。そしてA組の左隣は当然B組、そのまま一学年はI組までクラスごとに並んでいる。

 担任の先生達はそれぞれ自分が担任するクラスの前にいる。A組ウチ出威女でいお先生。あ、B組は九条先生なんだ…。C組は原海先生でD組は岡山先生…。…あれ?原海先生と岡山先生は仲が悪いというか、反りが合わないというかあまり仲が良くない印象…互いに視線を合わせようとはしていないな。

 E組の担任の先生は…分からん、今日の授業を受けた中にはいないな。

「では、次に食べ物関係の模擬店の開催希望クラスを募ります。スペースの関係上、開催可能クラスは2クラスです。模擬店をやりたいというクラスは代表者1名を前へ!」

 あっ、ウチのクラスから数寄すきさんが立ち上がった、なるほど…ウチのクラスは模擬店をやりたいみたいだ。その模擬店だが縁日の屋台のように食べ物を調理して販売出来るとの事、確かに小学一年生の女の子に将来の夢についてアンケートをするとお菓子屋さんとかケーキ屋さんという回答は多いって言うもんなあ。高校生になった今でも同じ夢を持ち続けているとは限らないけど、昔を思い出してやってみたくなったのかも知れない。

「ぐふふふ…。A組の模擬店希望が通れば佐久間君も一緒に料理する事に…。男子との…は、初めての共同作業…」

 誰のだか分からないけどそんな声が聞こえる、そして他からも…。

「ウ、ウチのクラスで模擬店ができれば佐久間君が立ち寄ってくれるかも…」

 何やら色々な欲望が垣間見かいまみえるけどとりあえず気にしない事にする。

 模擬店を希望する各クラスの代表が前に出た。ちなみに模擬店を開催出来るのはふたつのクラスのみ、競争率が高い。そして行われる抽選方法は代表者達によるジャンケンによるものだ。そしてまず起こった出来事は…。

「「「「どぞどぞどぞ…!」」」」

 ウチのクラスの代表、数寄さんに対し各クラスの代表者が右手を前に出し模擬店の開催権利を譲っている。ダ◯ョウ倶楽部かよ、と思ったがクラスの希望も通った訳だし僕としては特に文句がある訳ではない。

 そして残るひとつの枠を巡って代表者達が全員揃っての熱いジャンケンバトルが行われた。二人ずつになって…とかではないらしい。

 そして何回ものあいこの後、いきなり一人が勝ち残る結果に終わった。勝利したのは一年C組の代表者だった、勝利クラスが湧いている。

「うわー!勝った、勝った!」
「料理、何やる?何やる?」

 喜ぶC組の女子生徒達、そして勝ち残ったふたつのクラスの代表者にD組の担任、岡山先生が近づいて声をかけた。

「決まったようだな。それじゃあ勝った一年A組とC組の代表者は後で私の所に来てくれ、飲食物を出す模擬店の説明をするからな」

「「はいっ!!」」

 すかさず代表者の二人が元気良く返事をする。

「と、言ってもそんなに気張らなくても良い。単純に飯を炊いて食う…、そのくらいの軽い気持ちで来てくれれば…」

「ふふふ…、その者に美味い飯が炊けるのかね?」

「なにいっ!?」

 なんだか不穏な横槍が入ったかと思えばなにやらC組とD組の担任、原海先生と岡山先生の視線が火花を散らしていた。どうやら先程の不穏な発言の主は原海先生であるようだ。



「ああ~。あの二人、なんでだかライバル視しあってるからね~」

 僕の近くにいたクラスの女子がそんな事を言っている。もしかすると自分達の担当しているクラスが模擬店をやる事になり対抗意識が芽生えたのかも知れない。

「ふふふ、お前の所のクラスはすでに落選したようだが…。調理師免許があるとはいえ半端な腕前しかないお前にまともな飲食模擬店の指導が出来るのか?」

「なんだと!?」

 からかうように言う原海先生、対して山岡先生は強い口調に変わった。

「ああ…、また始まったよ…」
「アレさえ無ければ良いセンセー達なんだけどね」

 辺りの生徒達が呟いていた。そうこうしている間にも二人の先生のやりとりはヒートアップしている。

「…ならば互いに何の料理を出すか決めようではないか」

「互いにだとっ!?だが、私のクラス…D組は落選しているから…」

「ならばA組の方につけば良かろう。幸い、私の担任するC組は勝ち残っている。そうだな…このふたつのクラスで競うのはどうだ?単純に売り上げの|多寡(たか)で優劣を決めれば良かろう、それとも自信が無いか?無ければさっさと担当を下りろ、私が引き継いでやる」

「良いだろうッ!望むところだ!」

 僕達の事をよそに原海先生と岡山先生の火花を散らすやりとりは続いている。そうするうちに色々と細かい勝負の条件が決まっていく。最終的には同じ素材を使った物で作った飲食物で模擬店の売り上げを競い合うという事になった。

 確かに片方がタコ焼きを出しているのに、もう片方がカキ氷を出していたのでは単純にその献立こんだてで優劣が決まってしまう。同じタコ焼きならタコ焼きでその優劣を決めようと言う事なのだろう。

「ならば士郎子しろこ、早速だが料理の素材を決めようではないか。互いに我々の意図を絡ませず、公平に選べる素材をな…」 

 原海先生が口にした士郎子というのは確か岡山先生の名前だったはずだ。その名前を呼ばれた本人はなかばいきりたつようにして原海先生に応じた。

「ああ!受けて立ってやる!」

「ふむ…。そうなると何を使うかだが…」

 そう呟くちう原海先生はしばらく何かを考えていたようだが、ふと僕の方を見た。

「新入生の佐久間っ!お前は昼に何を食べたっ!?それに使われていた材料を言ってみろ!」

 えっ!?ぼ、僕…?ひ、昼に食べたのはおにぎりと唐揚げと卵焼きだから…。僕は立ち上がり返答をしようとする。

「え、えっと…お米と…」

「ふふふ、そうかコメかっ!ならば古式にのっと八木対決はちぼくたいけつとするか。士郎子しろこッ、それで良いなッ!!」

 そんな訳で僕達はなぜか二人の先生の仲違いに巻き込まれてしまった。

 僕としては米の後に鶏肉と卵も言おうとしたんだけど原海先生はそれを言う前に話を進めてしまっていた。そして岡山先生に向き直る。

「どうだっ!コメを使った勝負、受けるかっ!?」

「受けてやろうじゃないかっ!」

 岡山先生が勝手に勝負を受けてしまった。個人的には焼きそばとかやりたかったな…。

 それにしても…八木対決はちぼくたいけつだっけ?それは一体なんなんだろうか。


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 次回、四章エピローグ。

 佐久間修の有用性に気付き始めた者達
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