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第一章 田舎暮らしの神殺し

二十九章 剣聖の憂鬱 其の陸

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「ん、なら、決まりだな! 今日帰って来たのはそれを冒険者ギルドに持っていこうとしたんだが先にお前にやるよ!」

 ジークフリートは読んでいた本を仕舞うと鞄に入れていた紙のようなものを取り出した。

 バサラはそれが何かと思い軋む体をなんとか起こすとそこに記されていた文字を口ずさんだ。

「ラビュリン、トス?」

「そう! 俺が見つけた迷宮ダンジョン、ラビュリントスだ! この地図は俺の手書き。こう見えて俺はこう言った場所の発見及び調査をすることが趣味でなぁ! だから、年に一、二回、この国に帰って来るか来ないかなんだが、今回はすげえのが見つかってよぉ! 入ってから連れが全員死んだ! だはは! 歴戦の猛者を集めたつもりなんだがな!」

 笑顔でありながらサラッと死者が出ていることを伝えるジークフリートとは対照的にバサラは苦笑いをしていた。しかし、そんな彼らを置いておいて、その地図をマジマジとジータは眺めていると何かに気付いた。

「この迷宮ダンジョン、途中までしか描かれていないのは何故ですか?」

「危険だから最初は俺が最後まで踏破しちまおうと思ったんだが途中でトラップに引っかかっちまってよぉー。朝、ここの森に落ちたのはそれのせいだ! 吹き飛んでる最中にこれ冒険者ギルドに持ってった方が面白いこと起きそうだなって思ってな! それに王国騎士団にも持って行ってお互いを競い合わせようとしてる」

 ジークフリートの言葉に呆れて、ジータはため息を吐きながら再び口を開いた。

「あなたが最後まで行けなかった迷宮ダンジョンに誰が行くんですか。冒険者ギルドは万年人手不足、一番の稼ぎ頭の白金の鷲獅子わしじしを投入する訳ないですし」

「そうかー? 踏破報酬で俺がなんでも一つ願いを叶えてやるって言ったら食いつくと思うぜ」

「今、なんでもと言いましたか?」

「おうさ、なんでもって言った」

 なんでもと言う言葉にジータはニコリと笑みを浮かべると嬉しそうにバサラに喋りかけた。

「御師様、やるしかありませんよ」

「いや、でも、」

「さっきも言いましたがこの人は腐っても剣聖。最強と言われる存在ものから出される任務を御師様がこなしてみてください! そうすれば一気に周りも認めるはずです! そうと決まれば、早速準備です! 参りますよ! 御師様!」

 ジータが息巻く一方、突然、部屋のドアが開かれるとそこには彼女の部下であるラビがいた。走って来たのか息を切らしながらもジータに向けて情報を伝えようと声を上げた。

「ジータ様! リトル教の拠点が分かりました! 全ての四護聖に収集がかかっています! 至急、移動の準備を!」

 ジータは露骨に嫌な顔をした。
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