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第一章 田舎暮らしの神殺し

四十四章 エピローグ 其の壱

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 目を開いた。
 何かに起こされる訳でも無く、そこは迷宮ダンジョンの暗がりでは無く、ジータの屋敷の借り部屋であることを把握する。

 辺りは明るく朝であり、何とか体を起こすとそこには自分のベットの横でジータと吟千代ぎんちよの二人が椅子に座りながら腕を突っ伏し寝ていた。

「えーと、どう言う状況だ、これ?」

 迷宮ダンジョンにてレイルと戦い、何とか生存を勝ち取ったところまでは覚えているものの、それ以降の記憶が全く消えていた。

 そして、今、現在、部屋をキョロキョロと見渡すと机の横には涅槃静寂ニルヴァーナ涅焔カーラがあり、自分が迷宮ダンジョンから出て来れたことをようやく理解した。

「とりあえず、吟千代ぎんちよも無事だし僕も生きてる。何とかなったってことで眠るか」

 朝起きたが何も見ていないとし、ベッドに横たわろうとした次の瞬間、彼がいる部屋の扉が蹴り飛ばされ、ニッコリと笑っているジークフリートがいた。

「よう! バサラ! お疲れさん!」

 その音でジータと吟千代ぎんちよが目を覚ます。

「御師様!!!!」「バサラ殿!!!!」

 二人は起きたばかりのバサラに飛びついた。

***

「なるほど、と言うことは僕はもう一週間近く寝てたのか。そして、吟千代ぎんちよが僕を迷宮ダンジョンの外まで連れてくれたんだね。ありがとう」

「カラカラカラ! 褒めても何もでんさ! それよりも、拙者の命も自由も与えてくれたバサラ殿には何をしても返せぬ! 拙者はバサラ殿の刀となり、足となり、手となろう! 何にでも使って欲しい!」

 吟千代ぎんちよが犬がぶんぶんと尻尾を振ります様に見えるほど嬉しそうにしており、それを見たジータは彼らに割って入って来た。

「御師様が心配で迷宮ダンジョンに向かったところ、吟千代ぎんちよさんが御師様を担いでいたところを確認して、こちらまで運んできた感じです」

「ジータもありがとう」

 ジータもまた感謝されたことに嬉しそうにし、にっこりとした笑顔を見せた。

 しかし、その裏には喋っていない事実がある。ジータと吟千代ぎんちよは出会った瞬間、殺し合っていた。

 ジータはバサラを取り戻すために、吟千代ぎんちよはバサラを守るために。互いにバサラを巡り、殺し合った故に、多少彼らの間には友情の様なモノとバサラを絶対に自分のモノにすると言う野心を火花がバチバチと散らしている。

 それをバサラは知らず、その後ろにいるジークフリートだけは感じ取っているが面白いからそのままにしとこうと思い、次は彼女が口を開いた。

「まぁ、迷宮ダンジョン探索お疲れさんよ。レポートは後日でいいから今日は中で何があった聞かせてくれ。吟千代ぎんちよには聞いたんだが、お前がすげえってことだけを永遠と繰り返すだけだから、頼むぜ」

「了解、まぁ、そんなに僕も記憶がぼんやりしてるんだけど」

 そう言いながらバサラは迷宮ダンジョンの中であった出来事を全て話した。巨大岩石に追われ、土人形ゴーレムと戦い、名亡右象左象ななしうぞうさぞうを倒し、ハスターを殺し、レイルに条件付きで見逃してもらった。

 それら全てを話すとジークフリートは楽しそうに聞いており、ジータは逆に心配そうに聞いていた。

「御師様、申し訳ございません。そのハスターなるものは自分達のミスで呼ばれてしまったかも知れません」

「うーん、そうかな? 距離もあっただろうし関係ないと思うけどね。それにあの時の記憶が実はあんまりなくてね」

「あの時のバサラ殿は凄まじかったぞ! 口調が荒々しく別人の様だったが底知れない! 鬼神が如き強さ!」

 吟千代ぎんちよが嬉しそうに喋る一方、ジークフリートは最後に襲って来た廃棄孔アクタールについて考えていた。

(さてさて、奴らが動くってのはいよいよ始まるか? 戦争が)
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