【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

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第二章 人神代理戦争 予兆

四十二章 博士の愛した蒸気国 其の壱

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 ルーヴェン王国での騒動から、はや、一ヶ月。バサラは剣術指南役として評価され始め、四護聖以外の騎士達にも指導と言った形で訓練場に赴く様になっていた。

(初めは、ジータ達の騎士団の子しか来ないから心配だったけど、こうも色々な騎士団が回りながら来てくれると認められた様な気になるね)

 訓練の休憩時にバサラはジータから貰っていた水筒に口をつけていた。今日はジータの率いる騎士達の特訓を見ており、ユースは盾と剣を使いながらラビと組み手をしていた。

(それにしても、ユースは努力家で以前教えたことから応用まで自分で辿り着くのに対してラビは基本に忠実で実直だね。ユースが基本をしっかりしてないって訳ではないけどラビは自分の体に馴染むまで基本を叩き込むタイプ。二人とも双子だけど性格が出てるなー)

 ユースとラビは自身の共鳴器を使っており、組み手と言ってもほぼ実戦となっていた。ユースは盾を使い、ラビの槍での突きを防ぐともう片方で握っていた剣を投げ付ける。

 いきなり剣が飛んで来たからか、ラビは槍を使いギリギリで弾くもユースは既に次の動きに移っており、彼の体目掛けて蹴りを放った。

 二段構えの攻撃を受けるもラビはそれを知っていたかの様に腕で受けており、吹き飛ばされはされど大きなダメージにはなっておらず、すぐに立ち上がるとユースに対してベーと舌を出した。

「舐めんなよ! ラビ!」

「お前こそ、剣投げるなんて殺す気かよ!」

「はい、そこまでだよー。二人ともナイスファイト。それじゃあ、今日はここまでにするからみんな集まって!」

 ユースとラビは得物を仕舞うとバサラが言う通り、彼の近くに集合した。

「次は一週間後になるからそれまで今日教えた事を復習しておく事! みんな今日もお疲れ様! 良い週末を!」

 バサラがそう言うと彼らはゾロゾロとその場を後にする。ユースとラビはそのまま訓練場で組み手の続きをすると言ったので彼らに怪我をしない事を約束させ、バサラもジータの屋敷に戻って行った。

***

「ただいまー、今日お肉安くて買っちゃったー。ベーコンって言って塩漬けのお肉だって~、あれ? 吟千代ぎんちよ、今日は居ないのかい?」

 屋敷の扉を開けるとそこには誰も居らず、食堂のテーブルの上には一枚の手紙が置いてあった。

「何だろう、これ?」

 表紙には馘無侍吟千代くびなしぎんちよと書かれており、その内容を読むために手紙の封を切った。

「バサラ殿、ジータへ。メタリカ殿に誘われて少し数日屋敷を外す! 鍵は持ってるが故に拙者に気を使わず過ごしてくれ!」

 吟千代ぎんちよからの置き手紙を読んで、バサラはメタリカのところにいるなら大丈夫かと考え、一人で夕飯の支度を始めた。

 ベーコンと卵を焼くと、付け合わせのジャガイモを潰し、ペースト状にする。買ってきていたパンも切るとそれらをお皿に装った。

「これ夕飯ってよりも朝ごはんだな。まぁ、いっか」

 ジータの分はすぐに出来ると踏むと珈琲を淹れ、席に着く。一人で過ごす日などほぼ無くなり、この静寂が懐かしくもあると同時に寂しくもなった。

(本の三ヶ月くらい前までは僕、ずっと一人だったのにみんなと会ってからはその静けさに物足りなさを感じるね。意外と僕って一人が苦手なのかも)

 そんな事を考えながら、自分が焼いたベーコンに手を付けた瞬間であった。

 扉がバンと大きな音を立てて、扉が勢い良く開かれる。そして、ドタドタと音を立てながらジータが姿を現した。

「お、お帰りなさい? ベーコン買ったんだけど、た、食べるかい?」

 ジータはそんなバサラの問いに対して、興奮気味に答えた。

「食べます! それはそうと御師様! 事件です! シンクが、シンクがヴェープルで行方不明になり、四護聖と御師様だけに手紙を寄越しました! 助けに行きますよ!」

「?!」

 四護聖シンク・ホーエンハイム、彼の失踪がことの発端となる。
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