124 / 311
第三章 人神代理戦争 勃発
二話 誰を英雄と讃えるのか 其の弍
しおりを挟む
「バサラはさ、何でここに来たの?」
木に寄りかかって眠るバサラにエルフの少女は質問した。だが、バサラは片目を開け、彼女を見て再び目を閉じてしまう。
「無視するな!!」
「無視じゃない。ただの沈黙だよ」
頭をぽこりと殴られるも気にすることなく、バサラは目を瞑った。そんな彼らの下に髪の表面を青く染め、内側を黒く染めている青年が近づくと声を上げた。
「アイリス、バサラ! 夕飯の準備が出来たよ!」
「ほら、バサラ立って! ローズルが呼んでる!」
バサラはその言葉でようやく目を覚まし、何も言わずにアイリスと呼ばれた少女の後ろをついて行く。
バサラにとっての日常。
常に続くと思えた拠り所。
そこはミレニアム王国辺境の地であり、エルフが住まう森。彼らは神の創造物に在らず、故に、人の様に運命を弄ばれず、ひっそりと静かに暮らすことが出来た。
「ローズル! バサラ、私じゃ起きないから助かるよー」
「あはは! 僕は何もやってないよ! バサラはアイリスの声で起きてるんだからさ!」
「別に元々寝てないよ。ローズルもわかるだろ?」
「そうだね、バサラは寝てないのは知ってるよ」
三人は言い合いながら家に入ると手を洗い、お皿を取り出して今日の夕食であるビーフシチューをよそった。
「ローズルが作るシチューって本当に美味しいよね」
アイリスはスプーンを運ぶ手が止まらず、パクパクと口の中に放り込み、お皿を空にした。そして、再びよそいパクパクと食べ始める。
「食い意地ばっかり張ってるよね、アイリスは」
「そんなこと言わない方がいいぞ? バサラ」
「ローズルの言う通り! 美味しいものは美味しく頂く! それが一番!」
夕食囲う三人の少年少女、彼らに親はいない。三人が三人孤児であり、孤立無縁の者同士。だから、惹かれあったのか、アイリスが一人で住んでいた家に、はじめにバサラが、続けてローズルが転がり込んでいた。
六年前、バサラがこの地に来た時、彼はボロボロで今にも琴切れてもおかしくないほどに弱っており、アイリスが見つけなければ死んでいた。
彼女がエルフが住まう森にバサラを連れて来ると周りのエルフ達は彼を嫌がり、追い出そうとしたもののアイリスは断固拒否し、一人で彼の看病をした。来る日も来る日も目を覚まさず、死んではいないものの生きているとは到底思えないほど長い期間、彼は眠りについていた。
だが、ある日、急にパチリと目を覚ますとアイリスは涙を流して喜んだ。だが、バサラは自身に何が起きたのか理解しておらず、何故、目の前の少女はないているのか? 自分のこれまでの何をしていたのか? 全てを忘れ、ポッカリと空いたかの様に記憶を無くしていた。
エルフ達は目が覚めたバサラをすぐに追い出そうとするもののアイリスの一声で何も言わなくなると彼らは逆に彼女達に近づこうともしなくなった。
三年してバサラと同様にボロボロの姿の青年が見つかった。見つけたのはアイリスであり、彼女が重そうにしているのを見てバサラが運んだ。それがローズルである。
そこからはバサラと同じで彼らは村八分にされながらも気にすることなく、三人でお互いに助け合い、その地で住む様になった。互いに過去に干渉しようとせず、素性は知らずとも手と手を取り合いながら生活する。不恰好な関係性だが、彼らは気にすることはない。何故なら、それが日常であるから。
壊されることのない、平凡な日常。
六年の月日が経てば、その答えがここにはあった。
***
「何でここに来た、か」
座りながら外を眺めていたバサラは一人呟くとそれに対してアイリスは温かいお茶を飲みながら反応を示した。
「私の質問覚えてたんだ。意外」
「覚えてたんじゃなくて、気になっただけだよ」
「あっそ! 生意気!」
アイリスはそう言うと温かいお茶を口に運び、ホッと一息つくとそんな彼女の姿を見て、逆にバサラは問いた。
「アイリスは俺のことどう思ってるの?」
「ど、どどどどどうおもうって?! どう言うこと?! ど、どうにも思ってないよ?!」
「? そんな変な質問した? 何でここに来たのかなんて聞いてきたからてっきり追い出したいのかと」
「そんなわけ無いでしょ! 勝手に出て行ったら地獄の底まで追ってやるわよ」
アイリスはバサラの言葉にそう返すとそのやり取りを見ていたローズルがニコニコしながら声を上げた。
「バサラって意外と鈍いよね」
「何ローズル? 急に」
「いやいや~、何でも~。そうだよね? アイリス」
そう言うとアイリスの方を見ると彼女は顔を赤くしてその場を誤魔化そうと口を開いた。
「ローズルもうるさいな!!!! 子ども寝る時間! 私は二十代だけど、ローズルとバサラは十代何だから早く寝なさい!」
木に寄りかかって眠るバサラにエルフの少女は質問した。だが、バサラは片目を開け、彼女を見て再び目を閉じてしまう。
「無視するな!!」
「無視じゃない。ただの沈黙だよ」
頭をぽこりと殴られるも気にすることなく、バサラは目を瞑った。そんな彼らの下に髪の表面を青く染め、内側を黒く染めている青年が近づくと声を上げた。
「アイリス、バサラ! 夕飯の準備が出来たよ!」
「ほら、バサラ立って! ローズルが呼んでる!」
バサラはその言葉でようやく目を覚まし、何も言わずにアイリスと呼ばれた少女の後ろをついて行く。
バサラにとっての日常。
常に続くと思えた拠り所。
そこはミレニアム王国辺境の地であり、エルフが住まう森。彼らは神の創造物に在らず、故に、人の様に運命を弄ばれず、ひっそりと静かに暮らすことが出来た。
「ローズル! バサラ、私じゃ起きないから助かるよー」
「あはは! 僕は何もやってないよ! バサラはアイリスの声で起きてるんだからさ!」
「別に元々寝てないよ。ローズルもわかるだろ?」
「そうだね、バサラは寝てないのは知ってるよ」
三人は言い合いながら家に入ると手を洗い、お皿を取り出して今日の夕食であるビーフシチューをよそった。
「ローズルが作るシチューって本当に美味しいよね」
アイリスはスプーンを運ぶ手が止まらず、パクパクと口の中に放り込み、お皿を空にした。そして、再びよそいパクパクと食べ始める。
「食い意地ばっかり張ってるよね、アイリスは」
「そんなこと言わない方がいいぞ? バサラ」
「ローズルの言う通り! 美味しいものは美味しく頂く! それが一番!」
夕食囲う三人の少年少女、彼らに親はいない。三人が三人孤児であり、孤立無縁の者同士。だから、惹かれあったのか、アイリスが一人で住んでいた家に、はじめにバサラが、続けてローズルが転がり込んでいた。
六年前、バサラがこの地に来た時、彼はボロボロで今にも琴切れてもおかしくないほどに弱っており、アイリスが見つけなければ死んでいた。
彼女がエルフが住まう森にバサラを連れて来ると周りのエルフ達は彼を嫌がり、追い出そうとしたもののアイリスは断固拒否し、一人で彼の看病をした。来る日も来る日も目を覚まさず、死んではいないものの生きているとは到底思えないほど長い期間、彼は眠りについていた。
だが、ある日、急にパチリと目を覚ますとアイリスは涙を流して喜んだ。だが、バサラは自身に何が起きたのか理解しておらず、何故、目の前の少女はないているのか? 自分のこれまでの何をしていたのか? 全てを忘れ、ポッカリと空いたかの様に記憶を無くしていた。
エルフ達は目が覚めたバサラをすぐに追い出そうとするもののアイリスの一声で何も言わなくなると彼らは逆に彼女達に近づこうともしなくなった。
三年してバサラと同様にボロボロの姿の青年が見つかった。見つけたのはアイリスであり、彼女が重そうにしているのを見てバサラが運んだ。それがローズルである。
そこからはバサラと同じで彼らは村八分にされながらも気にすることなく、三人でお互いに助け合い、その地で住む様になった。互いに過去に干渉しようとせず、素性は知らずとも手と手を取り合いながら生活する。不恰好な関係性だが、彼らは気にすることはない。何故なら、それが日常であるから。
壊されることのない、平凡な日常。
六年の月日が経てば、その答えがここにはあった。
***
「何でここに来た、か」
座りながら外を眺めていたバサラは一人呟くとそれに対してアイリスは温かいお茶を飲みながら反応を示した。
「私の質問覚えてたんだ。意外」
「覚えてたんじゃなくて、気になっただけだよ」
「あっそ! 生意気!」
アイリスはそう言うと温かいお茶を口に運び、ホッと一息つくとそんな彼女の姿を見て、逆にバサラは問いた。
「アイリスは俺のことどう思ってるの?」
「ど、どどどどどうおもうって?! どう言うこと?! ど、どうにも思ってないよ?!」
「? そんな変な質問した? 何でここに来たのかなんて聞いてきたからてっきり追い出したいのかと」
「そんなわけ無いでしょ! 勝手に出て行ったら地獄の底まで追ってやるわよ」
アイリスはバサラの言葉にそう返すとそのやり取りを見ていたローズルがニコニコしながら声を上げた。
「バサラって意外と鈍いよね」
「何ローズル? 急に」
「いやいや~、何でも~。そうだよね? アイリス」
そう言うとアイリスの方を見ると彼女は顔を赤くしてその場を誤魔化そうと口を開いた。
「ローズルもうるさいな!!!! 子ども寝る時間! 私は二十代だけど、ローズルとバサラは十代何だから早く寝なさい!」
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる