【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

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第三章 人神代理戦争 勃発

二十三話 誰を英雄と讃えるのか 其の弍拾参

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 戦いが始まって凡そ三十分が経過し、バサラとオーディン、互いのボルテージは最高潮に達していた。

 幾十にも重なる槍による乱撃により、バサラは防いでも尚、有り余るダメージを受けていた。両腕、右太腿、右肩に抉られた跡がくっきりと浮かんでおり、致命傷ではないがこれ以上受ければ今後に響くとし、一瞬たりとも気を抜けない状況に追い込まれた。

 一方、オーディンもまた自身が初めて知る弱点が露呈し始める。いつもであれば既に決着など付いているはずであった戦いが中々に付かないことで息を切らし、このまま全力で槍を振い続ければ最初に体力が切れるのは自分で有ると知った。そして、バサラの一撃一撃のキレとオーディンの神技グランスキルへの理解度が高まっていることで彼が自分の体に傷を入れるのは時間の問題であることも理解していた。

 どちらかが気をほんの少しでも抜いた瞬間に瓦解する中、最初に仕掛けたのはオーディンである。神であるオーディンはバサラが本当に自分達を殺す力とまだ底の見えない潜在能力ポテンシャルを前にして、神としての威厳も尊厳もかなぐり捨てた全力の一撃を当てるために動いた。

(ここで殺し切る。バサラよ、お前の名前、一生涯忘れることないぞ)

 大神オーディン、彼は逆らう神であれば全て自らの能力の前に蹴散らし、名前すらも知らずに殺す絶対的強者であった。そんな彼が自分の喉に刃が届き得るかも知れない、自分のみならず残ったもの達が殺され尽くされるかも知れない、そう思えるほどである。

 不服、不平、不満はあれどオーディンはバサラを認めていた。だからこそ、殺す以外の言葉は在らず、和解などは大神オーディンにとって論外であった。そんなオーディンが放とうとする一撃、それはシンプル故に止めることの出来ない神器グングニール神技グランスキルを載せた必殺のモノ。

 それを前にバサラは光速の斬撃を無闇に放つのを止め、距離を詰めてきたオーディンを真っ向から仕留める為に彼も構えた。

 これまで八十七の神を殺して来たバサラが最も死を感じた瞬間、それはプルートの全てをかなぐり捨てた必死のものであった。だが、今のオーディンはそれをも凌駕し、自身の判断を見誤れば確実にここで死ぬと言うのを明確に感じ取る。そして、それと同時にバサラはまだまだ自分の解釈を拡張し切りていないことにワクワクした。

(まだ、伸びる。俺の剣は、俺の技術はもっと、もっと認識を、限界を拡張しろ! そんで持ってオーディン! あんたの防御、ぶち破らせてもらうぜ)

 涅槃静寂ニルヴァーナを両手で握り、刃先を空に翳すとオーディンの槍が自分の首に迫った瞬間、それを斜めに振り下ろす。

 剣と槍の刃はぶつかる事なく、互いの急所を目掛けて放たれた。

 オーディンの槍、それはバサラの首を掠めた。虚空を極限まで圧縮し放った一突きはバサラの首の薄皮一枚を切り裂くとそこから虚空を解放しようとする。

 オーディンは勝利を確信した。後は腕に力を入れるだけ、その行動をするだけで、自分が死のうとも勝てる。だが、それは出来なかった。例えそれが神であれど繋がらない腕を無理矢理動かすなどと言うことは、不可能であった。

 オーディンの体は斜めに切り裂かれ、地面にその上半身が落ちると同時にヘイムダルの空間すらも切り裂いた。不干渉の縛りの代わりに不壊の空間を生み出すヘイムダルの神技グランスキル、彼はそれに誇りを持っていたにも関わらず、神ですら壊すことの出来ない壁を人間が壊したことに驚嘆する。

「はぁ?!」

 ヘイムダルの大声が響き渡るもバサラは気にすることなく、一息吐いた。高揚、興奮、自分が死を前にして掴んだ究極の剣により、バサラは極限の集中状態となっており、地面に転がるオーディンに全てに満足した様な笑顔を見せる。

 油断、嘲笑、そんなものは一切無く、ただひたすらに見せる子どもの様な曇りなき笑顔。今の自分に不可能などは無いと感じるバサラの完全な覚醒状態が見せた感謝の表情であった。

 地面に上半身だけが落ちたオーディンはそれを見た後に、空を見上げた。ヘイムダルの空間が崩れ、徐々に自分の姿がさらされることに悔しさはあれど満ち足りた戦いであったと思い、普段見ることのない空の星々の輝きに目を奪われる。

(はは、死ぬ前に星を見るとは。どうでも良い日常が愛おしくなる感覚、感じたこともない黒が迫る予感。死、か、これが。こ、れは悪くない)

 大神オーディン、彼が見せた笑顔、そして、その死を惜しむ間もなく、ヘイムダルの空間が完全に破壊される前に彼は現れた。

 バサラの前に現れたそれは既に剣は抜かれており、彼に休む暇も無く襲いかかる。雷の纏う剣と涅槃静寂ニルヴァーナの刃が打つかり、火花を散らすとユピテルは怒りを完全に露わにした状態で叫んだ。

「殺してやるバサラ!」

「大声出さなくても聞こえてるよ! ユピテル!」
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