【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

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第三章 人神代理戦争 勃発

三十八話 五大王国会議 其の肆

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 バサラはヴィクターと思われる青髪を長く伸ばし、鎧も何も付けていない筋骨隆々の男の目の前に立った。

「はじめましてだな、ヴィクター・V・ハルペー殿」

 バサラがそう言い、手を前に出すとヴィクターはそれに応える様に彼も手を前にし、握手した。

「ミレニアム四護聖全員があなたの弟子と聞き、お会いしたく無茶をした非礼を詫びたいカツラギ・バサラ殿。自分のことはヴィクターと気軽に呼んで欲しい。そして、不肖ヴィクター・V・ハルペー、あなたに決闘をもうしこむ」

「そうか、なら、よろしくなヴィクター。おれのこともバサラと呼んでくれ。それと腕を直してくれた礼がしたかったからな。これで済ませてくれるならありがたい限りだよ」

「気になさるな。自分は別に頼まれたからやっただけ。昔、シャロン様の命をお救いになったと何度もあの人は口にしていた。そんな恩人の手助けとなれば本望だ。自分があなたと戦いたいのは完全な私事。全力で来て欲しい」

 ヴィクターは握手を解くとバサラは笑顔を見せ、お互いに距離を取りはじめた。

 ヴィクターがバサラを見た感想、それは一匹の老狼ろうおおかみといったもの。しかし、それはただの老いぼれなどでは無く、常に牙を磨ぎ続け、凡ゆる事象を切り裂き喰らう孤高の狩人の様に見えた。

 ヴィクターはこの戦いに賭けるものそれは自身の死。彼が戦いに向ける熱と狂気、それを誰も知らない、知らせないまま今まで生きていた。そんな狂気を、王から聞いていた神殺しが満たしてくれるのではと感じ、彼は頼み込んだ。

(病み上がりの姿か? アレがだぞ? バサラ殿、見せてくれるんだろう? あなたなら、自分にを)

 互いに位置に着くと腰に差していた剣を抜いた。バサラは最初から二刀流であり、対するヴィクターは両刃の剣を構えると両者が準備万端であることを確認したシャロンが声を上げる。

「これより、ヴィクター・V・ハルペー対カツラギ・バサラの決闘を始める。立会人はシャロン・フォルテが執る。両者、礼、構え、始め!」

 言葉が終わるとほぼ同時、バサラが動くよりも速くヴィクターは彼との距離を詰め、自身の剣をぶつけた。涅槃静寂ニルヴァーナ涅焔カーラで防ぐもその威力を殺せずバサラはいきなり吹き飛ばされる。

(かつてのおれと同じくらいの早さに力強さ、身体能力でゴリ押し来るタイプか? と言うよりもあの動き、肉体の限界を無理矢理破壊してある。おれと同じ、いや、違うな)

 吹き飛ばせられたバサラはヴィクターが居る方向に目を向けると彼が踏み込むのに使った右足と剣を振るった右腕があらぬ方向に曲がっており、剣を左腕で持ち直していた。

「ヴィクター、すげえなお前」

 バサラは立ち上がりながら喋りかけるとヴィクターは嬉しそうに応えた。

「あなたに褒められて光栄だ。だが、このままでは戦えないからな、共鳴器の方を解放させて貰う。我が運命は静謐。留める魂、担ぐは棺。共鳴器・不死王行進曲アンデッド・パレードよ、我が運命の導に従い解き放て。その真なる姿を」

 運命の解放、それを行ったと同時にヴィクターの握る剣の姿を変える。よく研がれた剣であったがそれは巨大な鎌となり、長い柄を握ると思い切り振り回した。

 その姿を観客席から見ていた吟千代ぎんちよはヴィクターの纏っていた氣が一瞬にして無くなるのを見て、シャロンに声をかけようとする。しかし、シャロン右横にはいつの間にかメタリカが座っており、ヴィクターの握る共鳴器を見ながら嬉しそうにしていた。
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