【完結！】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

第四章 人神代理戦争 霹靂

四十六話 人神代理戦争 其の弐拾玖 戦鬼召使②

　ヴェルト・デッド、彼は依頼を受ければなんでもこなす、召使であった。

　一般的な執事業に加えて、様々な分野で身を粉にして働く、働き者。
　それがヴェルトの評価であり、幾つもの仕事を抱えながらも一つ残らずやり切る、彼はいつでも引っ張りだこであった。

　そして、その裏で人を殺していた。
　殺しの依頼ですら一切、やり切るその仕事に対しての執着は異常と呼ばれており、彼は裏の世界ですらも恐れられた。

「殺しを依頼するなら召使サーヴァントにしろ。アイツは必ず仕事をやり切る。アイツよりも腕の立つ殺し屋は居る。だけど、アイツ以上にやり切ると言う事に関して向いている奴は居ない。絶対に殺したい相手がいるのであれば、召使サーヴァントに頼め。執念に関しては本物だ」

　ある男がそう言った。
　彼は何かとヴェルトに仕事の依頼をする者であった。
　そして、その言葉を残した男もまた、ヴェルトの手により、殺された。

　誰かが殺しの依頼をして。

＊＊＊

　フギン・ムニンの軌道を完全に読み切り、六波羅蜜パラミータを用いて全て弾き返した。四つの水により生まれた武器が、召使サーヴァントの周囲に浮き続け、それらをフギン・ムニンにぶつけた。

　手には大きいが片腕で持てる程の斧と短剣を握りしめており、それを使い、エイブラハムの天空行進曲スカイ・シンフォニーの攻撃を抑え込んでいた。

(チッ！　この前の戦闘でフギン・ムニンの攻撃は全部読まれてるなこれ。前戦った時から時間も経ってるはずなのにコイツそれを全て記憶してるのか？　フギン・ムニンの攻撃パターン全てを記録されてるってなると俺も天空行進曲スカイ・シンフォニーの解放を使わないと勝ち筋が見えないな！)

　エイブラハムはフギン・ムニンの二つに纏わせていた風を最大出力に変化すると水により生まれていた支援機全てを切り裂いた。それと同時にエイブラハムは召使サーヴァントに回し蹴りを入れる。

　ヴェルトはそれを自身が持つ得物で防ぐも軽々と彼の体は吹き飛ばされてしまった。距離を取れたエイブラハムは続けて、手に握っている天空行進曲スカイ・シンフォニーの力を解放しようとする。

「距離を取ったな。僕のレンジを舐めてるだろ」

　呟くと破壊された水を両手で包むと同時にヴェルトは圧縮した。

「六波羅蜜パラミータ・勅線ライン」

　両手に包まれた水から放たれるのは一線。
　圧縮は想像を絶する程であり、水はあらゆる物を貫くことが出来る線が真っ直ぐにエイブラハム、彼の肩に向かった。

　フギン・ムニンの風の軌道を無視し、それどころか一瞬にして吹き飛ばすとエイブラハムはギリギリのところで天空行進曲スカイ・シンフォニーを挟み込む。だが、それすらも意味を成さないほどの威力で彼の体を壁に叩きつけた。

「ぐっ、は」

　エイブラハムは壁に打ち付けられ、すぐに立ちあがろうとするも、それを知っていたかの様に彼の目の前には線が放たれていた。

「うっ、おっと！？」

　体を仰け反らせ、自身の顔を貫こうとする水の線を避けた。

「距離を取ろうとしたのがお前の敗因だよ。エイブラハム」

　避けた直後に、既に水の線は放つ準備ができており、ヴェルトは彼が体を上げたと同時に貫こうとする。

　その予想をエイブラハムは軽々と超えた。
　仰け反った状態、それでありながら彼は声を上げた。

「我、運命は狩人！　獲物を屠る矢であり、それを番う弓！　共鳴器・天空交響曲スカイ・シンフォニーよ！　我が運命の導に従い解き放て、その真なる姿を！」

　二個目の共鳴器の解放、不安定な状態でありながら、エイブラハムはやってのけると体を起き上がらせた時には召使サーヴァントがひく線が彼に襲いかかった。

「空間捕食プレデターブレイク」

　水の線にぶつけるは空間を喰らう一撃。空間捕食プレデターブレイクはヴェルトの水の線を喰らった。

「さて、盛り上がって来たな！　召使サーヴァント！」

　エイブラハムは嬉しそうに放つと彼は召使サーヴァントとの距離を一気に詰めて来た。