【完結！】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

第四章 人神代理戦争 霹靂

四十七話 人神代理戦争 其の参拾 戦鬼召使③

「六波羅蜜パラミータ・勅線ライン」

　距離を詰めて来たエイブラハムに向けて、召使サーヴァントが放つのは凡ゆる物を貫く線。腕から一直線に伸びて放たれたそれをエイブラハムは天空行進曲スカイ・シンフォニーで弾いた。

「空間捕食IIプレデターブレイク・セカンド」

　水の線は屈折すると壁へと向かう。簡単に壁に穴をあけ、その威力の高さを物語るもそれを恐れず、エイブラハムは迷わず進んだ。

「空間捕食IIIプレデターブレイク・サード」

　三度目の空間を喰らう一撃が放たれるとそれに対して召使サーヴァントは避けることなく、自身の持つ二つの得物で受け止める。打つかったと同時に召使サーヴァントが握っていた斧と短剣は捻じ曲がった。

(受けると同時に僕の手に持っていた武器の形が変わった。いや、変わったんじゃないな、視覚情報が書き換えられたのか。武器自体の形は変わってないのに変わってるように見える。何だよ、意外と小賢しい手を使ってくるじゃないか)

　両手の斧を液状に戻し、宙に浮かすと召使サーヴァントは再び両手を前にして、線を放つポーズをする。

(この距離で食らえば、マジィ！)

　幾度の攻撃により、エイブラハムの脳内には召使サーヴァントが放つ勅線ラインの危険性と威力が刷り込まれていた。その構えを取られた瞬間、彼であっても無意識の内に防御を取らなければならいと体が判断し、天空行進曲スカイ・シンフォニーを振り上げた腕を急に下げた。

　エイブラハムはもう一撃、放とうとしていた動きを無理矢理捻じ曲げると召使サーヴァントが放とうとする一線を防ぐための防御の構えを取った。

　互いに近距離、エイブラハムが防御に徹した瞬間、召使サーヴァントは水で生み出した剣を使い、彼の体を傷つけた。

「ブラフかよ？！」

　エイブラハムが思わず声を上げるも彼の体に向けて、召使サーヴァントは追撃する。斧に向けて蹴りを入れ、続けさまに水を纏った拳による突きを放った。

　読み合いの一歩先に行き、エイブラハムと言う壁を崩すために召使サーヴァントは容赦無く、纏っていた水と宙に浮いていた水で剣を見出す。

　それを両腕で握りしめると彼の体目掛けて一撃を食らわした。

　エイブラハムの体に大きなバツの形で切り傷を生むとそこから召使サーヴァントは止まらず、彼の体を容赦無く切り続ける。

(硬い。純粋に硬くて切っても切り傷は生まれるが、勅線あれ以外で致命的にはならないな)

　召使サーヴァントは冷静に分析しながらエイブラハムを刻むもそこで彼はある事実に気づいた。

　エイブラハムが常に防御の型を取っていたことに。それはカウンターを狙っているからこその行動なのか、不明であるが今のうちに与えられるダメージは全て叩き込もうと召使サーヴァントは動く。

　幾十重にも重ねる蓮撃の中、召使サーヴァントは止まることなく剣を振るい続ける。

　しかし、彼はその攻撃を受け続けるエイブラハムにある違和感を抱いた。

　そして、その正体に気づいたと同時に召使サーヴァントはエイブラハムから距離を取ろうと一歩下がる。

「遅えよ」

　それは召使サーヴァントの背後から放たれた言葉であり、彼は振り向かずに六波羅蜜パラミータ全てを自身の体に纏った。

　目の前に居たはずのエイブラハムはバキバキと音を立てて割れるとそれが自身の空間の認知を歪まされていたことに気付く。

「空間捕食Ⅳプレデターブレイク・フォース」

　召使サーヴァントの体に空間を喰らう一撃が放たれ、それが直撃した。