【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

文字の大きさ
269 / 311
第四章 人神代理戦争 霹靂

七十話 人神代理戦争 其の伍拾参 神殺魔王②

しおりを挟む
 バサラは両手の得物を握ると次に打つ手を決めていた。それは全身の力を込めた涅槃静寂ニルヴァーナの投擲である。

 それな対して公爵デュークもまた、手ににしていた 第六天魔王波旬ヴァシャ・ヴァルティンの一本を投げつけた。互いの剣が音を立てて、ぶつかり合うと彼らはそれを拾おうと距離を詰め、残ったもう一振りを振るった。

 涅焔カーラの刃から黒い炎が放たれ、公爵デュークの目の前を遮るとバサラはそこから氣を読み、彼の肩を貫こうと突きを放つ。公爵デュークはその動きを目で追っており、自身の肩を狙った一撃をギリギリのところで避けるとバサラの腕を切り落とそうと 第六天魔王波旬ヴァシャ・ヴァルティンの刃を伸びた腕へと向けた。

 次の瞬間、バサラは突きを放ちながら避けられた時のための一手を既に打ってあった。

 投擲していた涅槃静寂ニルヴァーナを無理矢理蹴り上げ、それを腕を狙った公爵デュークにぶつける。予想外の攻撃であるものの公爵デュークは腕を切り落とすことを途中で切り替え、その一撃を刀型の 第六天魔王波旬ヴァシャ・ヴァルティンにより、防ぎ切った。

 互いの間合い、手段、技術、癖。
 全てを知り尽くし上での最善の選択を互いに打ち続ける。一個のミスが命取りとなり、気など一切抜き用のない鬩ぎ合い。

 バサラと公爵デュークの戦いは如何に相手の最善を潰し合うかのものであり、一息を吐く瞬間すらなかった。

 バサラの右足による蹴りが公爵デュークの腹部に直撃するとそれを受け、彼は初めて膝をついた。ただ、膝をついたのではなく、バサラの攻撃による疲労と神経の削ぎ合いから来る全身への痛みが蹴りの一撃となり、この世界に生まれて初めて公爵デュークに膝をつかせたのであった。

(力の使い方、それが妙に上手くなっているな。ぼんの剣は甘い、俺の教えた頃よりも遥かに鋭利さを欠けさせ、大胆さを失っていた。だが、今、俺に膝をつかせた。あの頃の坊主ぼんならと思っていたが、予想外だ)

 膝をついていようがお構い無しにとバサラは涅槃静寂ニルヴァーナを拾い上げると両手に得物を握り締め、公爵デュークを戦闘不能に追い込もうとする。

 公爵デュークに迫るバサラは涅槃静寂ニルヴァーナ涅焔カーラを持って彼の両腕を落とそうとした。だが、公爵デュークは片方の腕に握っていた 第六天魔王波旬ヴァシャ・ヴァルティンにより防ぐ動きを見せる。

(最低でも腕一本は貰うぞ、師匠!)

 涅焔カーラを使い、 第六天魔王波旬ヴァシャ・ヴァルティン を弾くと涅槃静寂ニルヴァーナを片腕目掛けて振るった。

ぼん、それだからお前は甘いんだよ」

 公爵デュークは一言呟くと、彼は自分に迫る危機に対して笑顔で応える様、声を上げた。

「我が運命は壊滅。至る終焉、来たる破壊者。共鳴器・ 第六天魔王波旬ヴァシャ・ヴァルティン よ、我が運命のともしびを贄に現せ、新たなる姿を」

 握っていた 第六天魔王波旬ヴァシャ・ヴァルティン が光輝き、魔王の闘争への本能に呼応する。かつての闘争、かつての怒り、それら全てを 第六天魔王波旬ヴァシャ・ヴァルティン は知っていた。

 何故なら、それは魔王が唯一握った共鳴器。生まれながら強者に渡されたのは変幻自在の得物。

第二共鳴解放セクンド・レゾナント

  第六天魔王波旬ヴァシャ・ヴァルティン の潜在能力の完全解放、それが今、かつての弟子に向けられた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

処理中です...