【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

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第五章 人神異界最終決戦

十四話 人神異界最終決戦 其の拾肆

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 片腕ながらも無量辺処アーカシャを握る帰還者リターナーは簡単にナナシの一撃を弾くと彼女の顔に目掛けて蹴りを放った。ナナシはそれを避けるもそんな彼女目掛けて無量辺処アーカシャの突きが襲い掛かる。

 無量辺処アーカシャの突きは虚空を宿しており、それは当たればナナシであっても再生に時間のかかるものであると彼女自身が理解していた。故に、その一撃を受ける訳にはいかず、ナナシは不可視の壁を挟もうとした。

平和主義者ピースメイカー

 だが、それをジータは使うと理解しており、既に不可視を破壊する一撃は放たれている。

「穿て! 崩壊嵐剣パズトーリ!」

 平和主義者ピースメイカー、それはナナシが作り出した固定化した空気を押し出し、不可視の壁をぶつけると言う技。開闢魔術の応用により生まれ、ナナシの半径5メートルから空気を固定し、それを広げながら相手を遠ざける。

 一方、ジータが放つ崩壊嵐剣パズトーリ、それは魂による不可視の刃渡から相手の体の近くで爆ぜさせ、嵐による瞬間的な破壊をもたらす技。現在のジータはグラン、シンク、ミカ、3人の能力の重ねがけにより、バサラ同様のスペックを誇る、ある種の完成状態にあった。

 その魂の刃はナナシですら欺く程に到達しており、平和主義者ピースメイカーの固定した空気を嵐が乱すことで固定化を突き破る。

 嵐の一突きにより突破された壁により、ナナシの左肩が虚空を孕む刃に貫かれると彼女はジータと自身の位置を入れ替えた。瞬時に帰還者リターナーとの距離を詰め、彼を初めに殺そうと声を上げた。

「舐めるなよ、人間風情が!」

 黒と白、両機構の準備が整い、その起動と共に彼らを終わらせようとナナシは両手を前にしたその時、その右腕を横から漆黒の刃が疾走する。

「カツラギ・バサラ?!!!」

 数多の傷を負い、片腕を失おうがその男は、駆けつけた。黒い渦から魂を沈め、一瞬たりとも相手に諭すことなく、殺気も怒りも滲ませぬ静から放つ不意の一撃。

 ナナシの右腕は切り裂かれ、その箇所を修復しようとするもののそれは涅焔カーラの持つ焼却の黒き炎が焼き、魂すらも傷つけていた。

「あははは!!!! 良いねぇ! 創造主! いやぁ! ナナシィ! 痛かろう! 悔しかろう! 人が持つ感情、可能性に自分が追い付かれるなど、腹正しくて仕方がない筈だぁ!」

「ロキ! お前もまだ、のうのうと生きていたのかい!」

 救世真愛セイヴァー・アガペーを振り翳し、ロキを切り裂こうとすると彼の右腕には見たこともない鎌が握られており、その刃をぶつけた。

「神器解放、終演の切り札キリング・ジョーカー

 神器、それは神技グランスキルに対応し、生み出された神のみに許され与えられし、専用の武器。ロキがかつて持っていた神器は既に砕かれており、彼が今握る物は今世に与えられし物。

「神器だと?!」

 ナナシですらそれには驚かせられた。
 何故なら、神器を生み出すことが出来るのはヴォルカヌス、ただ一柱であり、彼がロキに神器を作るにはヴォルガの名を捨てなければならいからであった。そうすれば、ナナシは彼を早く見つけ、すぐにでもこの世界を終わらせることが出来る筈であった。

 巨大な鎌の一振りを救世真愛セイヴァー・アガペーで弾くとロキは嬉しそうに彼女の目の前で指をパチリと鳴す。

 ナナシの目の前の視界が揺れるとグアングアンと世界が回り始めた。ロキの神技グランスキル狂宴の切り札ジョーカーの能力である幻覚がナナシの視界を惑わす。

 ナナシはすぐに立て直そうと脳の破壊と再生を同時に行うことでその視界を明確にするも彼女の体の前には大鎌であったはずのロキの神器である終演の切り札キリング・ジョーカー、その刃が槍のような形となった。

神槍グングニール!」

 神技グランスキル狂宴の切り札ジョーカーの能力、それは神をも惑わす幻覚であり、自身の肉体に幻覚をかけ、魂の輪郭を変化させることで肉体の形を変え、変幻自在の攻撃を可能とした。

 だが、今のロキは人間であった。
 ナナシがロキを人間の器に入れた理由、それは神技グランスキルは神と設計された肉体にのみ与えられる物であるとしていたから。

 しかし、ロキ、彼だけは違った。
 自身の肉体と魂にすら幻覚をかけ、互いの境界を曖昧にして戦っていた彼だけは肉体にではなく、魂に神技グランスキルが引っ張られた。

 今のロキでは魂の輪郭を変化させ、肉体の形を変化させるのは不可能であり、それらを補うために作り出された得物、それこそが終演の切り札キリング・ジョーカー

 ロキの幻覚により、その刃を他の神が握っていた神器へと変える、鍛治士ヴォルガの生み出せし、人としての最後の一品である。
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