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第五章 人神異界最終決戦
二十六話 エピローグ 其の弍
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シンクとツツジは全ての負傷兵に合う、義手義足の作成、その他諸々請け負っていた。シンク自身も左眼を失明していたがそこに自身で作っておいた義眼を入れて作業に黙々と入れ込んだ。
「クククク、いいぞ、ツツジ。やれば出来るじゃないか! ロイドの知識を完全に自分のものに落とし込みながら進めてる。作業効率も誰と組むよりも速い」
「んなこと言っても、あんたは機械じゃないだろう? 丸三日寝てないし、そろそろ休めよ」
「ダメだ、今俺が寝れば、復興が二割ほど遅れる」
「街にはそんなに被害は無いんだ。それを考慮しても無理する必要は」
「そうですよ~、シンク、無理する必要ないんです」
その声を聞いた瞬間、シンクは自分の血の気が引いたのを感じ取り、振り向こうとする。それよりも早く、彼の首元に機械の左腕による手刀が入ると彼はバタリと倒れた。
「マジか、人間ってそんな簡単に気絶しないぞ」
「それが出来るのが四護聖ですから」
ミカ・イゾルデ、彼女は両腕で軽々とシンクを抱き抱えるとツツジにペコリとお辞儀をした。
「あー、なんだ、その。なぁ、ミカ・イゾルデ、そいつのことそんなに怒んないでやってくれないか? ぶっちゃけ、僕が休まず作業してて一人で作業するには寂しいだろうとか考えてついて来てくれていた。僕も悪いしさ」
「何言ってるのですか、ツツジさん。私は怒ってはいませんよ。頑張りすぎてるシンクが心配なだけですから」
ニコリと微笑むとツツジは彼女の優しい笑顔に少しばかりドキリとする。
「なぁ、ミカ・イゾルデ、僕は、少しばかりあんたと話したかったんだ」
「あら、そうなの! それならお話ししましょう。シンクの研究所なら何か飲み物くらい置いてるだろうし」
ミカはそう言うと一人でにカップを二つ用意し、すぐに紅茶を淹れるとツツジの目の前に置いたカップにそれを注いだ。
「いや、僕は、はぁ、まぁ、いいか。いただくよ」
ツツジはミカの淹れた紅茶に口に含み、その味を楽しんだ。つい先日の自分であればその様なことは不要だと思い込んでいたにも関わらず、今は味というのを楽しむことが心地よくなっており、これもロイド・ハイランダーが求めていた変化なのかと考えた。
「なぁ、ミカ・イゾルデ」
「はい、なんですか?」
「何でそいつのことがそんなに好きなんだ?」
ミカは持っていたカップの紅茶を一気に飲み干すと笑顔は変わらないものの頬が赤く染まっていた。
「えー、と、その」
「あ、すまん、まだ、よく距離感ってのを分かってなくて。僕は機械でもあって人間でもある。だから、知りたくなってな。こいつ時は場を温めてからってやつか、失敗した。何か、他の質問を、」
「いや、良いです、良いですよ。そうですねー、なぜ好きなのか。私と似てるからですかね。あ、性格がとか、目標がとかじゃなくて、本質、根底にあるものが。シンクは自分で自分を天才と呼びます。自意識過剰とかじゃなくて積み重ねて来たものを踏まえて天賦の才を自負してるんですよ。でもね、シンクはそうは言いながらずっとジータや、グランが自分よりも天才で、努力が出来る才能があることを知っていた。私はジータ、グラン、シンクよりも才能が無くて努力しても努力しても彼らを追い越す事は出来なくてなんとか歩幅を合わせて歩いてる。でも、シンクは違う。シンクは誰よりも賢く、強くあろうと努力してるんです。私が努力で追いつこうとしてるのを彼は努力で追い越そうとしてる。それが私にとっては眩しくて、この人を支えてあげたい、支えてもらいたい、そんな気持ちになったの」
ミカは喋り終えると再び紅茶を注ぎ、それを口にする。それを見て、ツツジはシンクに何故、ミカ・イゾルデを好きなのかを聞いたことを思い出した。
「何故、好きか? クククク、それはミカが努力をする天才だからだよ。天賦の肉体を持ちながら尚も努力を欠かさない。カッコいいじゃないか。俺はそんなあいつを応援したいんだよ」
彼らは互いに互いを支えたいという気持ちを持っており、それを踏まえてツツジはとある結論を出した。
「ミカ・イゾルデ、あんたもシンクとお似合いだよ」
ツツジは初めてミカに笑顔を見せるとその笑顔はとても微笑ましく、彼女もまた嬉しそうに笑い返した。
シンクとツツジは全ての負傷兵に合う、義手義足の作成、その他諸々請け負っていた。シンク自身も左眼を失明していたがそこに自身で作っておいた義眼を入れて作業に黙々と入れ込んだ。
「クククク、いいぞ、ツツジ。やれば出来るじゃないか! ロイドの知識を完全に自分のものに落とし込みながら進めてる。作業効率も誰と組むよりも速い」
「んなこと言っても、あんたは機械じゃないだろう? 丸三日寝てないし、そろそろ休めよ」
「ダメだ、今俺が寝れば、復興が二割ほど遅れる」
「街にはそんなに被害は無いんだ。それを考慮しても無理する必要は」
「そうですよ~、シンク、無理する必要ないんです」
その声を聞いた瞬間、シンクは自分の血の気が引いたのを感じ取り、振り向こうとする。それよりも早く、彼の首元に機械の左腕による手刀が入ると彼はバタリと倒れた。
「マジか、人間ってそんな簡単に気絶しないぞ」
「それが出来るのが四護聖ですから」
ミカ・イゾルデ、彼女は両腕で軽々とシンクを抱き抱えるとツツジにペコリとお辞儀をした。
「あー、なんだ、その。なぁ、ミカ・イゾルデ、そいつのことそんなに怒んないでやってくれないか? ぶっちゃけ、僕が休まず作業してて一人で作業するには寂しいだろうとか考えてついて来てくれていた。僕も悪いしさ」
「何言ってるのですか、ツツジさん。私は怒ってはいませんよ。頑張りすぎてるシンクが心配なだけですから」
ニコリと微笑むとツツジは彼女の優しい笑顔に少しばかりドキリとする。
「なぁ、ミカ・イゾルデ、僕は、少しばかりあんたと話したかったんだ」
「あら、そうなの! それならお話ししましょう。シンクの研究所なら何か飲み物くらい置いてるだろうし」
ミカはそう言うと一人でにカップを二つ用意し、すぐに紅茶を淹れるとツツジの目の前に置いたカップにそれを注いだ。
「いや、僕は、はぁ、まぁ、いいか。いただくよ」
ツツジはミカの淹れた紅茶に口に含み、その味を楽しんだ。つい先日の自分であればその様なことは不要だと思い込んでいたにも関わらず、今は味というのを楽しむことが心地よくなっており、これもロイド・ハイランダーが求めていた変化なのかと考えた。
「なぁ、ミカ・イゾルデ」
「はい、なんですか?」
「何でそいつのことがそんなに好きなんだ?」
ミカは持っていたカップの紅茶を一気に飲み干すと笑顔は変わらないものの頬が赤く染まっていた。
「えー、と、その」
「あ、すまん、まだ、よく距離感ってのを分かってなくて。僕は機械でもあって人間でもある。だから、知りたくなってな。こいつ時は場を温めてからってやつか、失敗した。何か、他の質問を、」
「いや、良いです、良いですよ。そうですねー、なぜ好きなのか。私と似てるからですかね。あ、性格がとか、目標がとかじゃなくて、本質、根底にあるものが。シンクは自分で自分を天才と呼びます。自意識過剰とかじゃなくて積み重ねて来たものを踏まえて天賦の才を自負してるんですよ。でもね、シンクはそうは言いながらずっとジータや、グランが自分よりも天才で、努力が出来る才能があることを知っていた。私はジータ、グラン、シンクよりも才能が無くて努力しても努力しても彼らを追い越す事は出来なくてなんとか歩幅を合わせて歩いてる。でも、シンクは違う。シンクは誰よりも賢く、強くあろうと努力してるんです。私が努力で追いつこうとしてるのを彼は努力で追い越そうとしてる。それが私にとっては眩しくて、この人を支えてあげたい、支えてもらいたい、そんな気持ちになったの」
ミカは喋り終えると再び紅茶を注ぎ、それを口にする。それを見て、ツツジはシンクに何故、ミカ・イゾルデを好きなのかを聞いたことを思い出した。
「何故、好きか? クククク、それはミカが努力をする天才だからだよ。天賦の肉体を持ちながら尚も努力を欠かさない。カッコいいじゃないか。俺はそんなあいつを応援したいんだよ」
彼らは互いに互いを支えたいという気持ちを持っており、それを踏まえてツツジはとある結論を出した。
「ミカ・イゾルデ、あんたもシンクとお似合いだよ」
ツツジは初めてミカに笑顔を見せるとその笑顔はとても微笑ましく、彼女もまた嬉しそうに笑い返した。
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