幼馴染みと目指す冒険の旅【新しい天賦が目覚めたので、無双します】

なりちかてる

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序の章:雪解け水は骨まで凍る(Degelakvo frostiĝas ĝis la ostoj)

第7話 探索、探索、探索……

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 波がだんだんと生じてきて、歩きにくくなってきた。
 水面のずっと向こう——闇に溶け込んでいるあたりから、水音が聞こえてきていた。

 音が反響しているので、よくわからないが、確実に何かがぼくたちに気づいて、追跡しているのだろう。
 水場に出現する招魂獣たちもいるが、引きずり込まれたら、今のぼくたちの実力では、覚悟しなければならない。

 そして——堤防の先の広い空間へと、ぼくたちはやって来た。
 巨大な縦穴のような場所で、堤防の両脇から水が滝のように、底へと流れ込んでいる。
 底までは、かなりの深さがあり、下までは見通せないぐらいとなっていた。

 堤防は、縦穴の縁でキャットウォークというか、橋となって、ぐるりと取り巻いている。
 橋には柵がついているものの、まず、落ちたら助からないだろう。
 ぼくは、縦穴を見下ろし、ごくり、と唾を飲み込んだ。

 ここから先へと進んで、果たして塔の外へと続いているのか、不安はある。
 結局は袋小路となって、脱出は不可能ということになるかもしれないのだ。
 ——だけど……。

「行こう!」
 その思いを振り切るように、ぼくは声を振り絞った。
 とにかく、水に飲み込まれてしまう、ということはもう、なくなったのだ。

 アカネやチカに不安な気持ちを悟られないように、しなければならない。
 ふたりを急かし、橋へと促した。

 橋の部分は、ほぼ、水平で歩きにくい、ということはない。
 下からは、水が叩きつけられる、ごーっという音と共に水気を含んだ風が吹き上げてきている。

 滝の近くにいると、水音で何も聞こえなかったぐらいだが、橋を伝って反対側までやって来ると、少しましになった。
 会話ができるくらいにはなる。

 滝からは、時々、黒い姿をしたものが縦穴の底へと流れていっているのが見えた。
 それが、招魂獣なのか、それとも、別の何なのかは、わからなかった。

 縦穴の直径は、石を思いっきり投げても届かないぐらいか。
 これだけ広いと、今度は空を飛ぶ招魂獣が襲いかかってくるかも、と思ったが、今のところ、鳥類も含めて、そうしたものの姿は目にしていない。

 それが、いい兆候なのかは、ぼくにもわからない。
 これから、登場するのか、それとも、なんらかの理由があって、登場しないのか——。

「あれー、ここから分岐しているよー。ねぇ、ジンくん、チカちゃん、どうしよっか」
 相変わらず、緊張感のない口調で、アカネが声をかけてくる。
 ぼくは、そちらへと視線を向けた。

 橋はまだ、続いているが、アカネが言ったように、途中で塔の内部へと続く通路が覗いていた。
 どちらへ、進むべきだろう——。

 縦穴の底へと向かっても、滝が流れ込んでいる状況を考えると、どうも、塔の外へと繋がっているようには思えない。
 また、さっきも思ったが、空を飛ぶタイプと招魂獣が登場したら、ぼくたちでは対処しきれないだろう。
 ぼくたち、ひとりでも欠けてはならない。

 となれば、塔のなかへと向かったほうがまだ、チャンスはある、ということだろう。
 同じようなことを、アカネとチカは考えていたようだ。
 頷きかけると、ぼくたちは縦穴から離れ、塔の内部へと向かう通路へと向かった。


 通路は、基本的に一方通行だったが、階段を昇ったり、梯子を下ったり、遺跡のような場所を通り抜けたり、または巨大な橋を渡ったりして、前へ前へと進んでいった。
 数回、招魂獣と遭遇したが、いずれもアカネの刀による攻撃とチカの呪文で対応できる程度のものしか徘徊していないようだった。
 その間、ぼくはふたりの邪魔をしないように、ただ、じっと周囲を警戒している程度のことしか、できなかった。

 これは——なんだか、ものすごく、こたえる。
 ふたりにとって、今のぼくは足手まといでしかないからだ。

 武器すらなく、戦いが終わった後に、招魂殻を回収する程度のことしかできない。
 戦闘にすら参加できないのでは、天賦に目覚めることもないのだろう。
 一応、エーテル・リンケージを開いてみるが、戦技盤はどれも、真っ黒いままだった。

「ねぇ……ジンくん」
「う……うん?」

 アカネにじっと、間近から顔を覗き込まれる。
「今回はなんだか、妙な事件に巻き込まれちゃったみたいだけどー、別に焦らなくてもいいんじゃない? それに、知ってる? 円卓ホーリー・グレイルという組織はアリアンフロッド以外にも、門戸を開いているの。九曜の塔の探索は出来なくなっちゃうけど、困っている人を手助けしたり、奈落よりのものの討伐などもしているから、活動内容としては、同じなのー。もし、ジンくんが望むのなら——」

「円卓のことなら、知っているよ」
 円卓は、鉄道と駅周辺の安全の維持を担う組織で、実はアリアンフロッドとはとても仲が悪いことでも有名だ。
 なかには、アリアンフロッド機関を抜けて、円卓に参加している、元アリアンフロッド……なんてのもいるらしい。

 アリアンフロッドとして、塔のなかを探索し、ドリフテッド・シングスを回収してくる、という任務からは外れることになるが、特殊な能力などがなくても、熟練の技があれば、活動することが可能、というのは聞いたことがある。
 でも——。

 ぼくは、アカネの手を掴み、それをそっと外した。
 頬で両手を挟むのは、アカネが本気でぼくと話し合いたい時にする、いつもの仕草だった。
 だけど、ぼくはもう、子供じゃない。

「——それじゃ、塔の天辺を目指すことが出来なくなってしまう。アリアンフロッドになりたいのは、それだけじゃないけど、でも、ぼくはセリカ姉に続いて、まだ見たことのない景色を、塔の天辺まで至りたい、って思っているんだ」
 それから、ぼくはチカを振り返った。
「チカだって、そうでしょ? やっぱり、ぼくたち三人、揃って塔の上の階層を目指さなきゃ。セリカ姉に会って、どうして、ひとりで天界を目指したのか、聞いてやらないとさ、納得いかないよね」

 チカが、ゆっくりと頷いた。
「はい。一発、ぶん殴ってやりませんと、ですわ」
「一発、ぶん殴るか。ふふ……じゃあ、ぼくもその場に、いなきゃね」

 少し、アカネやチカとのやり取りを通して、気分も軽くなってきたようだ。
 また、三人で歩きはじめた。

「でも——どうして、ギンゲツたちは、こんなことをしてきたのでしょうか」
 ようやく、余裕が出来てきたのか、チカが話しかけてきた。
「たまたま、トラップを発動させてしまった……という感じではありませんでしたわね」

「でもー、そんなに恨み買うようなこと、あたしたち、したかなぁ。不思議だよねー。ジンくんには、特に厳しかったけど、それもどうしてなんだろうねー」
 ぼくは、肩をすくめた。

 これは明らかに、塔の仕組みを使った殺人、ということになる。
 ぼくたちが戻らなければ、行方不明——ということになってしまうのかもしれない。

 そもそも、塔の探索はとても危険な任務だ。
 ドリフテッド・シングスの恩恵もかなり大きいので、なかには、アリアンフロッドではない、いかがわしい人間も出入りしているくらいだ。

 それだからこそ、アリアンフロッドの卵となる人物はしっかりと、優れた小隊がカバーしなければならないのだけど、そもそも、ギンゲツたちにはそんな態度は見られなかった。
 ぼくを治療しようとしていたチカから、ドラッグショットを取り上げようとしていたことから、そうだ。

 真相はまだ、わからない。
 だからこそ、絶対にぼくたちは学園に無事、帰還して、ギンゲツたちに直接、問いかけなければならないのだ。
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