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彼女の話(寝取られた女)
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「庶務の近藤さん、デキ婚で退職だって、しかも相手というのが、
営業2課の相馬さん。」
「やっぱり、あの噂ってホントだったんだ。」
「そう、デキ婚の上に、略奪婚のおまけ付き。」
「うわぁ、相馬さんの彼女って…。」
「企画の久住さん、結婚秒読みって言われてたのにねぇ。」
「我が社の独身社員憧れのカップルだったのに、久住さん
可哀相、私だったらもう会社にいられないかも…。」
自分のことが話題になっているため、一番奥の個室で瑞穂は、
出るに出られなくなっていた。周りの好奇の目に耐えられないので
役員階の化粧室にまでわざわざ出向いてきたというのに…。
個室から出ようとしたところで、役員会議が終わり、会議室の
片付けを終えた子達が数人なだれ込んできたのだ。仕方がないと
息を潜め、彼女たちが出て行くのを待っていたら、一息つきたい
彼女たちが自分の寝取られ話を始めたのだった。
『寝取られた女』『略奪の被害者』『二股』 『かわいそう』
会社中からそんな目で見られているのはわかっていたが、
『沈黙は金』だと自分に言い聞かせ、担当しているプロジェクトが
忙しいのを良いことに黙々と仕事に打ち込んでいた。
それでも、自分のことを話題にされているのに立ち会うのはキツい。
「そうかなぁ、久住さん、可哀相かなぁ。」
その時、今まで黙っていた1人がいった。やっぱり、そう思う人も
いるよなぁ、浮気される側にも問題があるってことだろうなぁと
瑞穂は肩を落とした。
「ええ、可哀相じゃない? 婚約者も同然の彼氏寝取られてさぁ。」
「そうだよ、しかも、あの女、『彼が、お腹の子が大切だから
会社を辞めて欲しいっていうから退職します。』とかいって、
むかつく。」
「私さぁ、久住さんのこと尊敬してるんだよね。」
可哀相かな?と疑問形で言った子がそういった。
えっ、瑞穂は、顔を上げた。
「「それは、わたしもだよ。」」
残りの二人も声を揃えていった。瑞穂は、ますます息を潜め、
耳を澄ませた。
「久住さん、自分に厳しく、人には優しい。特に、私たち
後輩の女子社員には優しいよね。」
「「うん、うん。」」
「男性や上司に媚びず、私たち女子には、細やかなフォローを
してくれて、ダメなところは厳しく指摘してくれて、
私何度も助けてもらった。」
「「そうだねぇ、わたしも」」
「新しくプロジェクトが立ち上がる時も、男性社員ばかりが
当てられるのに、さりげなく、女性社員も推薦してくれて。」
「確か、大成商事のプロジェクトも、開発の水田さんを
推してくれて、水田さんいい仕事したから、
継続プロジェクトに女子社員が増員されたんだよね。」
う…。なんか、凄く恥ずかしいんですけど。瑞穂は、
自分が赤くなっているのがわかった。
「そんな、久住さんが彼女だったのに、相馬さん、浮気したんだよ。」
ちょっと憤っているというような言い方だった。
「「あーー。」」
「そりゃあ、プライベートで久住さんがどういう人かはしらないけどさ。」
「まぁ、料理が下手とか、掃除洗濯苦手とか、あるかもね。」
はい、正直、料理はダメです。瑞穂はうなだれた。
「そんな不満があるなら、別れればいいだけじゃない。」
「「だよねー。」」
「別れもしない上に、近藤さんが妊娠しているってことは、
避妊をしていなかったってことだよね。」
「「最低!。」」
うーん、ゴム付けてても20%ぐらいの確立で失敗するらしいよと
人ごとのように瑞穂は思う。
「そういう男は、今回のことがばれなかったとしても、絶対に
同じ事を繰り返すと思う。久住さん、そんな男と結婚しなくて
良かったよ。だから、可哀相なんかじゃないよ。」
「「あぁ、そうかぁ。」」
「ホントそうだよ。これが、久住さんが結婚後に、発覚して、
離婚とかなったりしたら、私、人ごとながら悔しいよ。
だから、良かったっていったら言い過ぎだけど…。」
「いや、そうだよ、早くわかって良かったんだよね。」
「うん、可哀相なんかじゃないよね。」
「あっ、まずい、もうこんな時間、早く戻らないと課長に怒られる。」
「「うわっ!」」
化粧室を飛び出し、バタバタと走り去る音が聞こえてきた。
瑞穂は、そっと個室のドアを開けて外を窺い、誰もいないのを
確認して化粧室からでた。 非常階段を使って自分のフロアに
戻りながら自分が微笑んでいるのに気が付いた。
そうか、私、可哀相じゃないんだ。寝取られて良かったんだ。
同じような事をいって慰めてくれた人は、少なからずいた。
しかし、後輩の女の子達が、こんな自分を尊敬し、自分のおかれた
状況を悔しがってくれたのが嬉しかった。自分が、懸命に歩いてきた道を
認めてくれた人がいる。捨てられた女じゃない、
大丈夫、『最低な男』から離れることができただけ。
席に戻ると、机上に営業1課主任の本郷敏生から、次の企画に
関する資料と、以前依頼された資料作成についてのお礼のメモが
置かれていた。メモと一緒に可愛いチョコもあった。
営業1課の本郷は、硬派で野性的仕事もできると女性社員に
人気がある。硬派な本郷がこんな可愛いチョコを?と思わず笑って
しまった。ああなんか、今日は、イイコトが沢山と瑞穂は、
メモとチョコを引き出しにしまうと、次の企画の内容を精査するべく
おかれた書類に目を通した。
営業2課の相馬さん。」
「やっぱり、あの噂ってホントだったんだ。」
「そう、デキ婚の上に、略奪婚のおまけ付き。」
「うわぁ、相馬さんの彼女って…。」
「企画の久住さん、結婚秒読みって言われてたのにねぇ。」
「我が社の独身社員憧れのカップルだったのに、久住さん
可哀相、私だったらもう会社にいられないかも…。」
自分のことが話題になっているため、一番奥の個室で瑞穂は、
出るに出られなくなっていた。周りの好奇の目に耐えられないので
役員階の化粧室にまでわざわざ出向いてきたというのに…。
個室から出ようとしたところで、役員会議が終わり、会議室の
片付けを終えた子達が数人なだれ込んできたのだ。仕方がないと
息を潜め、彼女たちが出て行くのを待っていたら、一息つきたい
彼女たちが自分の寝取られ話を始めたのだった。
『寝取られた女』『略奪の被害者』『二股』 『かわいそう』
会社中からそんな目で見られているのはわかっていたが、
『沈黙は金』だと自分に言い聞かせ、担当しているプロジェクトが
忙しいのを良いことに黙々と仕事に打ち込んでいた。
それでも、自分のことを話題にされているのに立ち会うのはキツい。
「そうかなぁ、久住さん、可哀相かなぁ。」
その時、今まで黙っていた1人がいった。やっぱり、そう思う人も
いるよなぁ、浮気される側にも問題があるってことだろうなぁと
瑞穂は肩を落とした。
「ええ、可哀相じゃない? 婚約者も同然の彼氏寝取られてさぁ。」
「そうだよ、しかも、あの女、『彼が、お腹の子が大切だから
会社を辞めて欲しいっていうから退職します。』とかいって、
むかつく。」
「私さぁ、久住さんのこと尊敬してるんだよね。」
可哀相かな?と疑問形で言った子がそういった。
えっ、瑞穂は、顔を上げた。
「「それは、わたしもだよ。」」
残りの二人も声を揃えていった。瑞穂は、ますます息を潜め、
耳を澄ませた。
「久住さん、自分に厳しく、人には優しい。特に、私たち
後輩の女子社員には優しいよね。」
「「うん、うん。」」
「男性や上司に媚びず、私たち女子には、細やかなフォローを
してくれて、ダメなところは厳しく指摘してくれて、
私何度も助けてもらった。」
「「そうだねぇ、わたしも」」
「新しくプロジェクトが立ち上がる時も、男性社員ばかりが
当てられるのに、さりげなく、女性社員も推薦してくれて。」
「確か、大成商事のプロジェクトも、開発の水田さんを
推してくれて、水田さんいい仕事したから、
継続プロジェクトに女子社員が増員されたんだよね。」
う…。なんか、凄く恥ずかしいんですけど。瑞穂は、
自分が赤くなっているのがわかった。
「そんな、久住さんが彼女だったのに、相馬さん、浮気したんだよ。」
ちょっと憤っているというような言い方だった。
「「あーー。」」
「そりゃあ、プライベートで久住さんがどういう人かはしらないけどさ。」
「まぁ、料理が下手とか、掃除洗濯苦手とか、あるかもね。」
はい、正直、料理はダメです。瑞穂はうなだれた。
「そんな不満があるなら、別れればいいだけじゃない。」
「「だよねー。」」
「別れもしない上に、近藤さんが妊娠しているってことは、
避妊をしていなかったってことだよね。」
「「最低!。」」
うーん、ゴム付けてても20%ぐらいの確立で失敗するらしいよと
人ごとのように瑞穂は思う。
「そういう男は、今回のことがばれなかったとしても、絶対に
同じ事を繰り返すと思う。久住さん、そんな男と結婚しなくて
良かったよ。だから、可哀相なんかじゃないよ。」
「「あぁ、そうかぁ。」」
「ホントそうだよ。これが、久住さんが結婚後に、発覚して、
離婚とかなったりしたら、私、人ごとながら悔しいよ。
だから、良かったっていったら言い過ぎだけど…。」
「いや、そうだよ、早くわかって良かったんだよね。」
「うん、可哀相なんかじゃないよね。」
「あっ、まずい、もうこんな時間、早く戻らないと課長に怒られる。」
「「うわっ!」」
化粧室を飛び出し、バタバタと走り去る音が聞こえてきた。
瑞穂は、そっと個室のドアを開けて外を窺い、誰もいないのを
確認して化粧室からでた。 非常階段を使って自分のフロアに
戻りながら自分が微笑んでいるのに気が付いた。
そうか、私、可哀相じゃないんだ。寝取られて良かったんだ。
同じような事をいって慰めてくれた人は、少なからずいた。
しかし、後輩の女の子達が、こんな自分を尊敬し、自分のおかれた
状況を悔しがってくれたのが嬉しかった。自分が、懸命に歩いてきた道を
認めてくれた人がいる。捨てられた女じゃない、
大丈夫、『最低な男』から離れることができただけ。
席に戻ると、机上に営業1課主任の本郷敏生から、次の企画に
関する資料と、以前依頼された資料作成についてのお礼のメモが
置かれていた。メモと一緒に可愛いチョコもあった。
営業1課の本郷は、硬派で野性的仕事もできると女性社員に
人気がある。硬派な本郷がこんな可愛いチョコを?と思わず笑って
しまった。ああなんか、今日は、イイコトが沢山と瑞穂は、
メモとチョコを引き出しにしまうと、次の企画の内容を精査するべく
おかれた書類に目を通した。
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