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第1章 気の狂った王子様
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あの日、残業中の事務室内で倒れてからの事、目覚めたら、目の前に綺麗なお姉さんが跪いていた。さっぱり意味が分からない。諦めた様な表情のお姉さんと、周囲を取り囲む野次馬たちの視線。途端に頭の中に記憶が浮かぶ。
『今から刑を言い渡す。』
ーー刑? このお姉さん、何かしたのか?
記憶の中にお姉さんは、一貫してこの表情。他に事情を窺い知る事はできない。
「ちょっと待って!」
記憶の中のコイツは大層威厳があるようだったが、自分はそうはなれない。でも、とにかくこの状況をどうにかしなければならない事だけは分かる。
突然の豹変ぶりに、周囲の空気は固まるが、そんな事を気にしているどころではない。刑を言い渡した後ならまだしも、言い渡すこと自体が自分の役割なのならば、自分もそれに責任は持つべきだ。
『流刑とする。』
「とりあえず、自宅待機って事でどうですかね?」
脳内の声を振り払い、取り敢えず提案してみる。沈黙の末、訝しげな視線を浴びながら、それ以上の事は言わなかった。その会合はそれでお開き。あの当時のことを、エドガーは語る。
「いやあ、お前、気が狂ったかと思ったぞ。」
自分の知らない罪状で他人様の人生を大きく狂わせなかった事に安堵しつつ、現状を整理する。
「本当にどうしたんだ?」
心配そうにするエドガー。
「なんか、急に人が変わったみたいだったぞ?」
「……へ?」
熱でもあるのかと額に触れられるが、もちろん何もない。健康そのものだ。というかお前の読み通りだよ……と言ってやりたい衝動を抑える。
「あのお……セイラをそこまで邪険にするなんて、珍しいじゃないか。」
今コイツ、『あの女』って言いかけたなと思いつつ、答えの分かりきった質問を返す。柄にもなく焦っているようだが、この体の持ち主はともかく、俺も同感だーー太郎は思う。
「お前、セイラ……さんのこと、どう思う?」
やっぱり他人感が拭えない。知らない人の事を呼び捨てにできず、思わず付け足してしまうが、
「……さん……?」
訝しげなエドガーの顔。改めて不味かったと思い直していると、
「まあ、信頼はできんな。」
「だよなあ……」
窓の外に広がるのは晴れやかな青空。こんなに綺麗な空を見るのは何年ぶりだろう……太郎はふと思う。
「なあ、今回、エカチェリーナちゃんは……」
「エカチェリーナちゃん……?」
再び訝しげな視線を向けるエドガー。
「おほん、エカチェリーナの罪状、もう一回整理したいんだけど……」
「分かった。すぐに資料を持ってくる。」
この前の一件で、きっと自分はこの件から逃れられないのだと悟る。それでも、
「エカチェリーナちゃん、可愛いなぁ……」
一目惚れした女の子の為に、何かしてやりたいと思うのは、悪いことではないはずだ……そう思った。
『今から刑を言い渡す。』
ーー刑? このお姉さん、何かしたのか?
記憶の中にお姉さんは、一貫してこの表情。他に事情を窺い知る事はできない。
「ちょっと待って!」
記憶の中のコイツは大層威厳があるようだったが、自分はそうはなれない。でも、とにかくこの状況をどうにかしなければならない事だけは分かる。
突然の豹変ぶりに、周囲の空気は固まるが、そんな事を気にしているどころではない。刑を言い渡した後ならまだしも、言い渡すこと自体が自分の役割なのならば、自分もそれに責任は持つべきだ。
『流刑とする。』
「とりあえず、自宅待機って事でどうですかね?」
脳内の声を振り払い、取り敢えず提案してみる。沈黙の末、訝しげな視線を浴びながら、それ以上の事は言わなかった。その会合はそれでお開き。あの当時のことを、エドガーは語る。
「いやあ、お前、気が狂ったかと思ったぞ。」
自分の知らない罪状で他人様の人生を大きく狂わせなかった事に安堵しつつ、現状を整理する。
「本当にどうしたんだ?」
心配そうにするエドガー。
「なんか、急に人が変わったみたいだったぞ?」
「……へ?」
熱でもあるのかと額に触れられるが、もちろん何もない。健康そのものだ。というかお前の読み通りだよ……と言ってやりたい衝動を抑える。
「あのお……セイラをそこまで邪険にするなんて、珍しいじゃないか。」
今コイツ、『あの女』って言いかけたなと思いつつ、答えの分かりきった質問を返す。柄にもなく焦っているようだが、この体の持ち主はともかく、俺も同感だーー太郎は思う。
「お前、セイラ……さんのこと、どう思う?」
やっぱり他人感が拭えない。知らない人の事を呼び捨てにできず、思わず付け足してしまうが、
「……さん……?」
訝しげなエドガーの顔。改めて不味かったと思い直していると、
「まあ、信頼はできんな。」
「だよなあ……」
窓の外に広がるのは晴れやかな青空。こんなに綺麗な空を見るのは何年ぶりだろう……太郎はふと思う。
「なあ、今回、エカチェリーナちゃんは……」
「エカチェリーナちゃん……?」
再び訝しげな視線を向けるエドガー。
「おほん、エカチェリーナの罪状、もう一回整理したいんだけど……」
「分かった。すぐに資料を持ってくる。」
この前の一件で、きっと自分はこの件から逃れられないのだと悟る。それでも、
「エカチェリーナちゃん、可愛いなぁ……」
一目惚れした女の子の為に、何かしてやりたいと思うのは、悪いことではないはずだ……そう思った。
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