転生先が悪役令嬢モノの王子様だった件。

釜借 イサキ

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第1章 気の狂った王子様

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 一人執務室で記憶を整理していると、
「おい、持ってきたぞ。」
息を切らしたエドガーが、捜査資料を持ってくる。大体ノートくらいの厚さ。思わずその薄さに、
「うっす……」
驚く。
「お前がこれで良いって調査を打ち切ったんだぞ……」
呆れたようなエドガーの言葉に、違和感を覚える。
「……大丈夫か?」
「え……? うん。」
一瞬考え込むが、違和感は一旦端に避けておく。大切なのは量より質だ。が、
「え、これだけ?」
「……ああ。」
質問相手は神妙な面持ちで短く首肯する。内容は、事件の概要、セイラの容態、セイラの証言のみ。
「……はあ?」
腹の底から声が出る。含蓄するのは、もちろん怒り。余りにも調査が杜撰すぎるのだ。
「……これ以外は?」
「その次のページだよ。」
しかし、早合点は良くない。決定打はこのセイラの事件。けれど、その他、疑われる要素か盛り盛りだった可能性も無くはない。しかし
「……はあ?」
今度は更に、低い声。これには流石のエドガーも怯む。
『庭の手入れに文句を言われた。』
『文書の整理が雑だと言われた。』
『礼儀作法がなっていないと言われた。』
確かに、最近パワハラ、セクハラだの、問題になりやすい。しかし、余りにもお粗末すぎないか。
「……これ、本人の意見は?」
しかも、書かれているのは全て一方的な意見だけ。肝心なエカチェリーナの動機については何一つ触れられていない。
「……いや、お前が書く必要ないって……」
気まずそうに頭をポリポリ搔くエドガー。太郎は思わず頭を抱える。ここは阿呆の集まりなのか。声を大にして叫びたい。
「本人はなんて言ってたか覚えてるか?」
「……全て指導の範疇だと。」
テンプレート通りのやり取りだ。もう笑いしか出ない。そこにも、何故かセイラの私見が記載されていた。
『エカチェリーナ様はとてもお仕事にお厳しいので……顰めたお顔がとても怖かったです。』
「何言ってんだこいつ!」
「!?」
いきなり叫び出す太郎に、エドガーの肩が跳ねる。だって仕方がないだろう? 余りにも言い分が幼稚すぎる。気がつくと、薄めた某乳酸菌飲料のようにうっっっっすいノートは最後のページになっていた。
「……他の証拠は?」
「……ない。」
ダメ元で聞いてみるが、返ってくるのは余りに想定通りの答え。
「分かった。再調査する。」
「御意。」
反対されるかと思ったが、幸運にもそれは杞憂だった。こんな幼稚園児の考えたシナリオの様な理由で、人一人の人生を狂わせる様なこと、絶対に有ってはならない。
「あとさ、」
そして、もう一つ先にやっておく事がある。
「俺、フィリップじゃねえんだわ。」
「……知ってる。」
多分事情を察しているであろうエドガーに、今更包み隠すこともないだろう。打ち明けられたエドガーは、どこかほっとしたように見える。何より、こういう場合、根回しは仕事の絶対条件だ。
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