7 / 43
第1章 気の狂った王子様
5
しおりを挟む
一人執務室で記憶を整理していると、
「おい、持ってきたぞ。」
息を切らしたエドガーが、捜査資料を持ってくる。大体ノートくらいの厚さ。思わずその薄さに、
「うっす……」
驚く。
「お前がこれで良いって調査を打ち切ったんだぞ……」
呆れたようなエドガーの言葉に、違和感を覚える。
「……大丈夫か?」
「え……? うん。」
一瞬考え込むが、違和感は一旦端に避けておく。大切なのは量より質だ。が、
「え、これだけ?」
「……ああ。」
質問相手は神妙な面持ちで短く首肯する。内容は、事件の概要、セイラの容態、セイラの証言のみ。
「……はあ?」
腹の底から声が出る。含蓄するのは、もちろん怒り。余りにも調査が杜撰すぎるのだ。
「……これ以外は?」
「その次のページだよ。」
しかし、早合点は良くない。決定打はこのセイラの事件。けれど、その他、疑われる要素か盛り盛りだった可能性も無くはない。しかし
「……はあ?」
今度は更に、低い声。これには流石のエドガーも怯む。
『庭の手入れに文句を言われた。』
『文書の整理が雑だと言われた。』
『礼儀作法がなっていないと言われた。』
確かに、最近パワハラ、セクハラだの、問題になりやすい。しかし、余りにもお粗末すぎないか。
「……これ、本人の意見は?」
しかも、書かれているのは全て一方的な意見だけ。肝心なエカチェリーナの動機については何一つ触れられていない。
「……いや、お前が書く必要ないって……」
気まずそうに頭をポリポリ搔くエドガー。太郎は思わず頭を抱える。ここは阿呆の集まりなのか。声を大にして叫びたい。
「本人はなんて言ってたか覚えてるか?」
「……全て指導の範疇だと。」
テンプレート通りのやり取りだ。もう笑いしか出ない。そこにも、何故かセイラの私見が記載されていた。
『エカチェリーナ様はとてもお仕事にお厳しいので……顰めたお顔がとても怖かったです。』
「何言ってんだこいつ!」
「!?」
いきなり叫び出す太郎に、エドガーの肩が跳ねる。だって仕方がないだろう? 余りにも言い分が幼稚すぎる。気がつくと、薄めた某乳酸菌飲料のようにうっっっっすいノートは最後のページになっていた。
「……他の証拠は?」
「……ない。」
ダメ元で聞いてみるが、返ってくるのは余りに想定通りの答え。
「分かった。再調査する。」
「御意。」
反対されるかと思ったが、幸運にもそれは杞憂だった。こんな幼稚園児の考えたシナリオの様な理由で、人一人の人生を狂わせる様なこと、絶対に有ってはならない。
「あとさ、」
そして、もう一つ先にやっておく事がある。
「俺、フィリップじゃねえんだわ。」
「……知ってる。」
多分事情を察しているであろうエドガーに、今更包み隠すこともないだろう。打ち明けられたエドガーは、どこかほっとしたように見える。何より、こういう場合、根回しは仕事の絶対条件だ。
「おい、持ってきたぞ。」
息を切らしたエドガーが、捜査資料を持ってくる。大体ノートくらいの厚さ。思わずその薄さに、
「うっす……」
驚く。
「お前がこれで良いって調査を打ち切ったんだぞ……」
呆れたようなエドガーの言葉に、違和感を覚える。
「……大丈夫か?」
「え……? うん。」
一瞬考え込むが、違和感は一旦端に避けておく。大切なのは量より質だ。が、
「え、これだけ?」
「……ああ。」
質問相手は神妙な面持ちで短く首肯する。内容は、事件の概要、セイラの容態、セイラの証言のみ。
「……はあ?」
腹の底から声が出る。含蓄するのは、もちろん怒り。余りにも調査が杜撰すぎるのだ。
「……これ以外は?」
「その次のページだよ。」
しかし、早合点は良くない。決定打はこのセイラの事件。けれど、その他、疑われる要素か盛り盛りだった可能性も無くはない。しかし
「……はあ?」
今度は更に、低い声。これには流石のエドガーも怯む。
『庭の手入れに文句を言われた。』
『文書の整理が雑だと言われた。』
『礼儀作法がなっていないと言われた。』
確かに、最近パワハラ、セクハラだの、問題になりやすい。しかし、余りにもお粗末すぎないか。
「……これ、本人の意見は?」
しかも、書かれているのは全て一方的な意見だけ。肝心なエカチェリーナの動機については何一つ触れられていない。
「……いや、お前が書く必要ないって……」
気まずそうに頭をポリポリ搔くエドガー。太郎は思わず頭を抱える。ここは阿呆の集まりなのか。声を大にして叫びたい。
「本人はなんて言ってたか覚えてるか?」
「……全て指導の範疇だと。」
テンプレート通りのやり取りだ。もう笑いしか出ない。そこにも、何故かセイラの私見が記載されていた。
『エカチェリーナ様はとてもお仕事にお厳しいので……顰めたお顔がとても怖かったです。』
「何言ってんだこいつ!」
「!?」
いきなり叫び出す太郎に、エドガーの肩が跳ねる。だって仕方がないだろう? 余りにも言い分が幼稚すぎる。気がつくと、薄めた某乳酸菌飲料のようにうっっっっすいノートは最後のページになっていた。
「……他の証拠は?」
「……ない。」
ダメ元で聞いてみるが、返ってくるのは余りに想定通りの答え。
「分かった。再調査する。」
「御意。」
反対されるかと思ったが、幸運にもそれは杞憂だった。こんな幼稚園児の考えたシナリオの様な理由で、人一人の人生を狂わせる様なこと、絶対に有ってはならない。
「あとさ、」
そして、もう一つ先にやっておく事がある。
「俺、フィリップじゃねえんだわ。」
「……知ってる。」
多分事情を察しているであろうエドガーに、今更包み隠すこともないだろう。打ち明けられたエドガーは、どこかほっとしたように見える。何より、こういう場合、根回しは仕事の絶対条件だ。
0
あなたにおすすめの小説
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
女性が少ない世界でVTuberやります!
dekoma26+ブル
恋愛
ある日朝起きてキッチンに行くとそこには知らない男性たちが! …え、お父さん⁉
なぜか突然女性の少ない世界に来てしまった少女がVTuberをしたり、学校に通ったりするお話。
※恋愛大賞ラストスパートなので24日火曜~27日金曜日まで連日投稿予定!
参加してるみんな!あと少しだよ頑張ろう!(>▽<)/作者ブル
前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる