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油断してしまえば一気に引きずり込まれてしまいそうな、そんな澱みきった空の下……少し痛みは伴ったが、概ね計画通りに事は運んでいる。後もう少しで全てが終わるーーそんな達成感を顔には出さぬよう、注意しながら全てが終わるのを静かに待つ。
「えーっと……こっちだっけ?」
そんなコハルの思惑を知ってか知らずか、ハルカは、白々しく道を間違える。
「ううん? こっちじゃなかったかな……?」
コハルは、笑い出したい衝動を必死に抑えながら、ハルカのことを誘導する。張り付いた笑顔は、不自然なほどに穏やかだ。
「あ、そうだっけ……?」
朧気な記憶を引き出すかのように、ハルカは、コハルの言葉に頷く。
「そうそう。昔の事だもんねえ……忘れちゃうよ」
コハルは、少しの焦燥を顔に出したハルカを横目に、クスリと笑いかける。
「ごめんね……?」
何に対して謝ったのか、ハルカがそう言った直後、またも道が分かるている。
「今度は……こっち……だったかな……?」
窺うようにこちらを見遣るハルカに、コハルは笑顔で首を縦に振る。一瞬、眉を動かしながらも先に進んでゆくハルカの後を、コハルは一切表情を崩さずについて行く。
先ほどまでから一変して、口数もめっきり減ってゆく中、それに比例して人通りも段々と減ってゆく。最早、2人だけの世界となり果てた暗い路地に、2つの靴が地面を蹴る音が一際大きく、甲高く木霊する。薄暗い掃き溜めじみた路を踏み均す音が虚しく響き渡る。
そんな乾いた音がピタリと止む。
「ここは……左……だったよね……」
普通に行けば最後の曲がり角に突き当たったのだ。あった時の優しい笑顔は何処へやら、ハルカは狼狽えた様子でコハルの方を見遣る。コハルは全く変わらない笑顔を貼り付けたまま、首を縦に振る。
「うん。そうだよ……」
ハルカが微かに吐き出した安堵の溜息を見逃す事なく、コハルはぴたりとハルカに着いて行く。
「でも、コハルちゃんは凄いよね。」
ふと、ハルカが呟いた言葉に、コハルは首を捻る。相手の言わんとする事が、いまいちよく理解できない。
「だって、昔遊んでた様な場所の位置をちゃんと覚えているだなんて……」
ハルカの声は、段々と警戒から、最初の柔らかい声音へと変わって行く。ずっとハルカの方を見ていたコハルの眼前には、花が開く様に笑い掛けるハルカの顔があった。
「うん。ありがとう。」
ハルカの意図を読み取ったコハルは、微動だにしない貼り付けられた笑顔を保ちながら最期の案内を始める。
「最後は見落としやすいもんね。」
そう言って蹲み込んだコハルは、路地の一角にあるマンホールの蓋をずらす。
「ちょっと……どこにっ……」
先程までの余裕を一気に崩された様に、ハルカは今日、初めて露骨な狼狽を見せると、ハルコの手を掴んで動作を咎めようとするが
「え? 勿論、秘密基地……だよね?」
ずっと笑顔のままのコハルに怯み、ハルカは手を離す。
「さ、行こうよ。早く……」
コハルは、背を向けて逃げようとするハルカの手を取ると、深い闇の中に引き摺り込む。
2人の行く末を隠し去る様に、マンホールの蓋は音を立てて閉じられた。
「えーっと……こっちだっけ?」
そんなコハルの思惑を知ってか知らずか、ハルカは、白々しく道を間違える。
「ううん? こっちじゃなかったかな……?」
コハルは、笑い出したい衝動を必死に抑えながら、ハルカのことを誘導する。張り付いた笑顔は、不自然なほどに穏やかだ。
「あ、そうだっけ……?」
朧気な記憶を引き出すかのように、ハルカは、コハルの言葉に頷く。
「そうそう。昔の事だもんねえ……忘れちゃうよ」
コハルは、少しの焦燥を顔に出したハルカを横目に、クスリと笑いかける。
「ごめんね……?」
何に対して謝ったのか、ハルカがそう言った直後、またも道が分かるている。
「今度は……こっち……だったかな……?」
窺うようにこちらを見遣るハルカに、コハルは笑顔で首を縦に振る。一瞬、眉を動かしながらも先に進んでゆくハルカの後を、コハルは一切表情を崩さずについて行く。
先ほどまでから一変して、口数もめっきり減ってゆく中、それに比例して人通りも段々と減ってゆく。最早、2人だけの世界となり果てた暗い路地に、2つの靴が地面を蹴る音が一際大きく、甲高く木霊する。薄暗い掃き溜めじみた路を踏み均す音が虚しく響き渡る。
そんな乾いた音がピタリと止む。
「ここは……左……だったよね……」
普通に行けば最後の曲がり角に突き当たったのだ。あった時の優しい笑顔は何処へやら、ハルカは狼狽えた様子でコハルの方を見遣る。コハルは全く変わらない笑顔を貼り付けたまま、首を縦に振る。
「うん。そうだよ……」
ハルカが微かに吐き出した安堵の溜息を見逃す事なく、コハルはぴたりとハルカに着いて行く。
「でも、コハルちゃんは凄いよね。」
ふと、ハルカが呟いた言葉に、コハルは首を捻る。相手の言わんとする事が、いまいちよく理解できない。
「だって、昔遊んでた様な場所の位置をちゃんと覚えているだなんて……」
ハルカの声は、段々と警戒から、最初の柔らかい声音へと変わって行く。ずっとハルカの方を見ていたコハルの眼前には、花が開く様に笑い掛けるハルカの顔があった。
「うん。ありがとう。」
ハルカの意図を読み取ったコハルは、微動だにしない貼り付けられた笑顔を保ちながら最期の案内を始める。
「最後は見落としやすいもんね。」
そう言って蹲み込んだコハルは、路地の一角にあるマンホールの蓋をずらす。
「ちょっと……どこにっ……」
先程までの余裕を一気に崩された様に、ハルカは今日、初めて露骨な狼狽を見せると、ハルコの手を掴んで動作を咎めようとするが
「え? 勿論、秘密基地……だよね?」
ずっと笑顔のままのコハルに怯み、ハルカは手を離す。
「さ、行こうよ。早く……」
コハルは、背を向けて逃げようとするハルカの手を取ると、深い闇の中に引き摺り込む。
2人の行く末を隠し去る様に、マンホールの蓋は音を立てて閉じられた。
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